第三十週:筒とパジャマ(木曜日)
えーっと……話がどこか逸れてしまった感があるが……。さて、問題の 《筒》である。
この場に集まったアイスオブシディアン以下九名及びタイムパトロール隊員の中に、この 《筒》について知っている者はただ一人、セイ・カハだけであった。
いや、正確に言うと、この 《筒》が作動していた場面にならば、Mr.Blu‐Oも立ち会っていたのだが、彼女はその時、この 《筒》を見られる位置にはいなかったのである。
「それ、本当?」とのMrの質問に、「ああ、」と、セイが答えた。「あの時の 《筒》だ」
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さて。東銀河帝国皇帝コンパルディノス二世による光型知性体を対象とした遊猟――所謂 《サカタッティ狩り》については、この連載の第四週でお伝えしたとおりであるし、また、その際に皇帝が使用したとされる 《携帯型局所式人工ブラックホール》についても、その 《改良版》であれば、この連載の第六週、第七週でご覧頂いたとおりである。
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「もちろん。これは入口だろうから、仲間は入っていねえだろうけど……」と、セイが言い、「そうだね」と、いつものラチェットレンチ型の道具で 《筒》を調べながらMrが言った。「……その入口もなくなっとるみたい」
すると、「あの、義手のヤツですか?」と訊いたのは、アイスオブシディアンである。
「あー、アレが出来てコレを棄てた……コレが消えてアレを創った?……」と、Mr。
「ただ中身が欲しかっただけか……」と、セイ。「……それも気になるけどな、バアさん」
「うん?」
「さっきから打ち込んでる星たちの位置だけどよ、肝心の所を抜かしちゃいねえか?」
「…………うん?」
「とぼけんなよ」と、少しだけ語気を強めてセイが言った。「あんたの故郷さ」
(続く)