第二十九週:植物とブラック企業(水曜日)
「それではアナタは、現場は全て派遣社員に任せ、上がって来た写真と動画だけを見て、それで済ませていたと云うことですか?」
と、こう訊いたのは、ゾウリンダイ星某土建事業者本社内部監察室のヘー・リンダイ室長代理 (定年延長中)であった。
「はあ……あの……その……『派遣社員に任せ』たのは事実でありますが……私はあくまで監督でありまして……その、あの……直接現場を見なくても、何と言うか、写真と動画を見れば、その、あの……」
と、五つの目を全て違う方向に右往左往させながら答えているのは、ゾウリンダイ星某土建事業者惑星破壊部惑星破壊課のホー・リンダイ東銀河担当課長 (離婚調停中)である。
彼は、地球が破壊された――とされる当時の現場監督であったが、これまでのお話からもお分かりの通り、『基本丸投げ』が、依然変わらぬ彼の仕事スタイルであった。
「情けない……」と、五つ目用眼鏡 (下二つは老眼用)を外しながら、室長代理が言った。「現場をキチンと見もせず、現場監督が務まると想いますか?私の若い頃は、派遣社員などと云う制度すらなく、本社の皆が一丸となり、銀河中にある惑星を破壊し、清掃し、リサイクルを強化し、今日のゾウリンダイ・ブランドと云うものを作り上げて来たのです。それを今の若い者と来たら、ろくに現場に行きもせず、日がな一日コンピューターの前に座って、それで仕事だと言っているのですから、いやいや、『トリトロンメタジウムを軽んずる者は、シャニマ王に背く』とはよく言ったもので、そもそも、我々ゾウリンダイ星人の矜持・プライドと云うものは遡れば……」
えーっと……何の話だったっけ?
「あの……室長代理」と、口を挿んだのはMr.Blu‐Oであった。「ゾウリンダイ星人のプライドも大変結構ですが、そろそろ、地球が消えてしまった時のお話を……」
(続く)