第二十九週:植物とブラック企業(火曜日)
真っ暗な宇宙空間に青と緑の惑星が一つ。
するとそこに、オレンジ色をした七隻のゾウリンダイ星某土建事業者の劫火型宇宙船が現れ、惑星をぐるりと取り囲んだかと想うと、一斉に紅蓮の炎を放射し、その青と緑の惑星表面を焼き尽く……さなかった。
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「ほら!ここ!」と、画面に映る地球の表面部分を指差しながらMr.Blu‐Oが言った。「地球の上を炎が上手く逸れて行ってる……多分、植物たちが酸素をコントロールして即席の防御シールドを作ったんや」
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確かに、経費削減の影響もあって解像度は決して高くはなかったものの、地球全体を覆う緑の保護膜が、その表層部分だけを焦がし、自分たちと、その下にある幾億もの植物たちを護ったのだと云うことがその映像からもはっきりと分かった。
また、これも経費削減の影響なのだが、ゾウリンダイ星某土建事業者の劫火型宇宙船に積まれた火炎放射用燃料は本番一回分のみであり、工事は、このまま次のクラッシャー工程へと進むようであった。
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「あの……」と、誰も言いそうにないことなので仕方なく――と云った感じで、リチャード・P・シルバーが口を挿んだ、「これ、破掃法 (破壊惑星清掃法)違反ですよね?……普通だと、懲役刑ですけど……」
そう言う彼の声に、ジロリ。と五つの目を同時に向けながらグー・リンダイ営業所長 (絶賛左遷中)は、「まあ、公共事業じゃけんのお」と、ゾウリンダイ星特有の方言を用いながら答えた。「文句なら帝国に言うてくれや」
この彼の言い方に流石のシルバーもカチン。と来そうになったが、これをMrが止めると、
「ええからシルバーさん」と言った。「次の映像とか、コンプラどころじゃなさそうよ」
(続く)