第二十八週:ハチと下請け(土曜日)
「だからあ、そん時の記憶を基にして、あの小説も書かれたんやって――」
いやいやいや、いやいやいやいやいやいや、流石にそれは騙されませんよ?だって、ニ十世紀も後半になってそんな大事件があったんなら、記憶なり記録なり残ってるハズじゃないですか――流石にそれはウソでしょう?
「だから、突然破壊されたから、地球側の記録は残ってないんやって」
……うん?……え?じゃあ、オリンピック側?……ですか?……そっちの記録は?
「そないなもん、レベル5にも満たない野蛮惑星一つ壊すのにキチンとした記録なんか残すかいな。壊す前と壊す後の写真一枚ずつとって終わりや」
……アレ?……で、でも、公共事業でしょ?
「あの頃の土建絡みの公共事業言うたら、今よりもっと癒着癒着でズブズブなんよ?そんな、キチンとしたもん残すかいや」
……えーーーっと?……なら、記憶!人の記憶は?!壊した方、壊された方の記憶!!
「せやから、壊した方は道端の石ころどかしたぐらいにしか想うてへんし、壊された方はみんな一度おらんようなったんやから記憶なんか残ってへんわ」
………………あれ?
「だから、『浦島太郎』にしろ、『銀河なんとかかんとかガイド』にしろ、ツッコミどころ満載やって言われとるけど、一度消えた記憶からあんだけのもん書いたんやから――」
ちょ、ちょっと待って下さい!
「はい?」
じゃあ……本当にあったことなんですか?
「まあ、ディティールは全然ちゃうけど、大まかなあらすじは合っとるんちゃう?――地球が復活するくだりとか歴史通りだし」
……浦島太郎に『地球が復活するくだり』とかないですよね?
「ああ、せやさかい。地球の方にはね」
(続く)