夢物語の痕跡と、おとぎ話の物語

第二十七週：拍手と歓声（金曜日）

『――また、この件と関連して、《鷹》の副操縦士及び関係者の二名がタイムパトロールに拘束されているとの情報も入って来ておりますが、これは、正々堂々と戦い抜いた《一千歳の鷹》チームへの冒涜であると同時に、我々レースを行う者たちへの無言の圧力ともなり得ることを付言し、一刻も早い彼らの解放をお願いするところでもあります。』

「いいぞ！」「そうだ！」と叫ぶ声が、表彰会場の所々から聞こえた。

　すると、ホーマンは、彼らの言葉を両手で優しく抑えてから、『それから最後に――』と、続けた。

『《鷹》のパイロットへ一言。「完敗はしたけれど、とても良い……楽しいレースでした。また、どこかでやりましょう」』

　会場を埋め尽くす観衆から割れんばかりの拍手と歓声が起こった。

　舞台袖からはトキコとシャアン＝ティが彼女に駆け寄って来て、力一杯ハグをしようとして……ティがトキコに蹴り飛ばされてた。

「どうだった？」と、ホーマンが訊き、「最高でした」と、トキコは口づけとともに応えた。「これなら、ＴＰも二人を解放するしかないでしょう」

　　　　　＊

　さて。このホーマンのスピーチは当然、取調室の前でラチェットレンチ様の道具を構えていたＭｒ．Ｂｌｕ‐Ｏにも聞こえていた。

　そのおかげもあってか、彼女は今にも、その取調室――ＴＰの移動型タイムマシンの扉を破壊するところであったが、間一髪、走り込んで来たリチャード・Ｐ・シルバーによって、手にしていた道具を降ろすことが出来た。

「落ち着いて下さい」と、シルバーが言った。「いま、ＴＰの友人からここの隊長に――」

　と、彼が言い終わるが早いか、カチャリ。と、取調室の扉が開き、青い制服のアベラ・メディオックが出て来て、「ご安心を、Ｍｒ」と言った。「……話は大体聴けました」

（続く）