表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/321

第二十七週:拍手と歓声(水曜日)

 カッカッカッカッ。と、延期された表彰式のせいだろうか、不穏な空気をはらみ始めた《深探索》のプロムナード内を、早足で歩くリチャード・P・シルバーの足音が響く。


「バカ、問題はそこじゃない」と、通信相手の旧友に向け、シルバーは小さく怒鳴った。「問題は、相手があの《Mr》だってことだ」


『しかし、《促成栽培ライト》を頼んだ調達部の人間にも聞いたが――』と、タイムパトロール広報部に所属する旧友が返す。『見た目は、まったく普通の気の良いお姉さんって感じだったそうだぞ――』


「ああ、まあ、確かに、見た感じはな……」と、シルバー。それでも、時折り見せる彼女の薄暗い目には狂気が入っている。「いいから、今すぐ、そのメディオックとか云う隊長に女の子と《サカタッティ》を開放するよう連絡してくれ。何かが起こってからじゃ――」


 うおぉぉおぉぉおお――!!。


 と、ここで、プロムナードの先、表彰式が行われる予定のドッキング・ポートの側から観客たちの大きな歓声が聞こえて来た。


「すまない。会場で動きがあったみたいだ」と、歩度を上げながらシルバーが言った。「一旦切るから、お前は隊長の方を頼む」


     *


『ホーマン! ホーマン!』


 ドッキング・ポートに集まった観衆たちは、素晴らしいレースを見せてくれたアルメド=ホーマンに向け、我先にと敬意の歓声を浴びせ掛けていた。


 そんな観衆たちに――だけでなく、亜空間通信の向う側にいる7000億近いラリーファンたちにも、これから彼女は、敗戦の弁とファンへの感謝を述べなければいけない。普通の人間であれば、それだけでプレッシャーに潰されてしまいそうなところではあるが、それでも彼女はアルメド=ホーマンである。ゆっくりと、しかし、しっかりとした足取りで、壇上へと上って行った。



(続く)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ