第二十六週:故郷と偶然(火曜日)
『いえ!違いました!!抜け出たのは!抜け出たのは!ホーマンではありません!!』
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「そんな!」と、この出来事に最も驚いていたのは《S・カイゼリン》のホーマンであった。「こっちは光速の0.92倍よ?!」――光よりも速く飛んでいるとでも言うの?!
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「亜空間内では時間と空間の概念が変わる」と、Mr.Blu‐Oが言った。「だけどみんな、どうしても通常空間と同じように時間も空間も捉えてしまう……」
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「有り得ません……」目の前の計器類を確認しつつ、トキコが言った。「光速の1.1……いや、1.3倍は出てます」
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「歪んだ亜空間だと、その最短距離も変わる」と、ニヤリ。と微笑みながらMrが言った。「だから、そのコースを取れば、光の速度も超えられる――エエ勉強になったやろ?」
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『離す!離す!離す!!《鷹》が!ティもホーマンも!更に離して行く!!完全に!完全な!!一人旅状態だあーーー!!!』
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さて。しかし、この時、ラリー関係者の全員が、《一千歳の鷹》の加速に驚き、その優勝を確信していたその時、《鷹》のメンバーの一人であるセイ・カハは、突然、
「兄弟たちよ……わたしたちは、どうしたらよいのでしょうか?」
と、言った。そして、
「バアさん!止めろ!!」と、その青い光をひと際強めながらMrに詰め寄った。
「え?!」と、驚いたのはMrである。「無理よ!ここで止めたら機体が壊れる!」
「壊れても止めろ!!」と、セイ・カハは更に彼女に詰め寄った。「窓の向こうに!!」
(続く)