第二十四週:6億円とおとぎ話(火曜日)
プシュゥゥ。と、減圧室の扉が開き、宇宙服姿のショワ=ウーが戻って来た。手には三人の暗殺者(?)を吊るしている。
「どうだった?」と、セイ・カハが訊き、
「腕は立つようだが、プロとは言い難いな」と、ウーが答えた。「亜空間とは云え、超高速航行中の船に飛び乗るとは意外だったがな」
そう言われてセイは、後半の言葉の意味がよく分からなかったのだろう、「……亜空間だと飛び乗りやすくなるのか?」
*
「そっか、セイさんは光だから、よう分からんかもね」そう言ったのは、Mr.Blu‐Oである。亜空間航行中は障害物も少なく、運転にも余裕が出て来るようだ。
「時間や空間、それに伴う速度の概念って三次元・四次元のモノでしょ?」と、目の前を通り過ぎて行く亜空間を眺めながらMrが続ける。「でも、こっちでは、その時間や空間自体が歪んだり伸び縮みしたりしてんのよ」
「……うん?」と、セイ。――すまない。サッパリ分からない。
「で、セイさん達みたいに重力場の影響をモロに受ける光の人たちは、そこに自然に溶け込んじゃうんやろうけど、あたしらは、ほら、幻想とか科学とか――まあ、科学も幻想か――とかを持っているから、そこから別の影響を受けたり、逆に影響を与えたりするんだよね……ここまでは良い?」と、Mr。これでも彼女なりに分かり易い説明を試みたつもりなのだが……相手の顔は疑問符で埋め尽くされたままだ。「えーとねえー、だからぁー」
「意志の力・意識の力が、三次元・四次元に比べて出やすいんですよ」と、ここで、計算を一段落したアイスオブシディアンが口を挿んだ。「だから、高速航行中の船にも、やる気次第で?飛び乗り易くなる……と言われているんですけど……普通は外に出ないので分りませんよね」
(続く)