第二十三週:天然とスイングバイ(火曜日)
「計算は?!」と、Mr.Blu‐Oが叫び、
「出来てます!!」と、アイスオブシディアンが答える。「このまま左に3~5度ずらしつつ、あとは目視と直感です!」
「直感と来たかい!」と、Mr。「それでこそ飛行機乗りってもんだよ!!」
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『アステロイドベルトを抜けて、トップは《S・カイゼリン》。その後を追うのは、コンマ数秒の遅れの《一千歳の鷹》と、更に数秒遅れのエス・ゲネスの《鋼漢》。各機順調にハルデスを目指しており、取り敢えず、今は様子見と云うところでしょうか?』
『いいえ、オアさん。各機それぞれ、スイング・バイの準備に入っているハズですよ――』
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「《スイング・バイ》とは何だ……」と、宇宙旅行と云えば亜空間航法ばかりのショワ=ウーは訊いたが、「ヤホーで調べろ!」と、Mrに一喝された上、「スタトレぐらい頭に入れとけ!!」と言われた。――旧劇場版の第四作ですね……と云うワケで解説です。
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『《スイング・バイ》とは……《かすめ飛行》《天体重力推進》とも呼ばれる航法で、天体の運動――自転や公転ですね――と、その重力を利用して、宇宙機の運動ベクトルを変更する技術のこと……で合ってますよね?』
『はい。オアさん。大変教科書的な解説ありがとうございます。つまり、今回の場合で云えば、この星系最大の惑星・ハルデス(直径15万km)の重力を利用して、船の速度を増加させようってことですね……はい』
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「ただ今回の場合は、加速後に再び小惑星帯に入るワケですから――」と、アイスが言い、「帰りは『密じゃない』コースが取れるよう行きで苦労したのさ――」と、Mrが続けた。「そのまま《妣国神殿》にも入りたいしね」
(続く)