第二十三週:天然とスイングバイ(月曜日)
遠くにカイベディック星の白い光が見え、その光を覆い隠そうとするかのように小惑星の一群がカメラの前を横切ろうとしていた。
それから、そんな暗闇たちがカメラを襲うかと想われた瞬間、深紅の機体の《S・カイゼリン》が、光速の約0.48倍と云う速度でこちらへと向かって来るのが見えた。
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『抜け出たのは!抜け出たのは!!我らがホーマン!アルメド=ホーマンだぁーー!!』
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「やったじゃない」と、前方を見据えたままホーマンが言った。「《鷹》を出し抜けたわ」
しかし、彼女にこのコースを指示した当のノース・トキコは、納得のいかない声と表情で、「どうですかね?」と、答えた。「アチラさんの目的は違ったんじゃないですか?」
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『さあ、そして、コンマ数秒の遅れで小惑星帯を抜け出して来たのは……やはり!《一千歳の鷹》。それから、彼女たちを追うように《iキヤムラ》が…………あれ?』
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「何故だ!」と、《iキヤムラ》の機内でア・ブダルが叫んだ。「こんなアステロイドベルト如きに捕まる我が船ではない!!」
すると、その後ろで航路計算をし直していたム・ハメドが、「確かに、普通に通ってたらな……」と言った。「《鷹》にやられたよ」
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「へっへーんだ!」と、いまどき少年漫画の主人公でも使わないような感嘆詞(?)を使いながらMr.Blu‐Oが叫んだ。「またまたやらせていただきましたあーー!!」
「どう云うことだ?!」と、不思議な顔でショワ=ウーが訊いた。
「ワザと速度を落としたのさ」と、ハイテンションなMrに代わりセイ。「で、あの巨体を身動き出来ない所まで誘き寄せたんだよ」
(続く)