第二十二週:マニューバとV8(土曜日)
「だからそれは、あたしのタイムライン上でも未だ来てない未来だから……えーっと……その時が来たら想い出すのよ」
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と、云うことで、いつまで経っても終わりそうにない《熱力学の第一法則と第二法則》にまつわるお話であるが……これは要は、『せっかく未来に行って色々見て来ても、元の時間に戻ったら忘れてしまっている』と云う、例の現象を説明しようとしているワケなのだが……あれ?今、誰か来ました?
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「だから例えば、過去のあたしが、今のあたしの所に来て、あたしと先生がこうやって話している内容を聞いたとするでしょ?でも、その内容って云うのは、元のタイムラインに戻った時……ねえ?なんか呼んでへん?」
うん?……なに?私にお客さん?スタッフの方で対応……私じゃないとダメ?……誰?……オーガナ姫の秘書?……ああ、あのヒラメ型の?……しょうがないなあ、じゃあ、ちょっと、Mr、待ってて貰えます?
「ああ、エエよ。気にせんといて…………なんやろうね?先生やないとアカンて。……え?なに?『自分たちは異星人の方とのやり取りには慣れていないので』?……『その辺のやり取りは基本先生に任せている』?……はあ、それ言うたら、あたしかて異星人……え?『人型は良いけど、ここはタイとかヒラメとかそっち系の方々が多くて、どうも慣れない』?なるほどなあ……しかしアンタらも大変やね、こんなとこまで来さされ……え?『結局、宇宙の色んな所に行かされるので、永世中立エリアのここを拠点にするのが、一番気が楽』?はあ、エライなあ。先生ももうちょい皆さんを尊敬し……あ、戻って来た」
すみません、Mr。どうもオーガナ姫が直接渡したいものがあるとかで、ちょっと行って来ても良いですか?
(続く)