第二十二週:マニューバとV8(火曜日)
『スッゴイです!ゼッケン102番!《一千歳の鷹》!!完全に群れから抜け出ました!このまま逃げ切るつもりのようです!!』
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パチパチパチパチパチパチパチッ。と、ソロバン玉が激しく鳴り、シャシャシャシャシャシャシャッ。と、2B鉛筆はワラバンシの上を激しく動く。
「速度を落として下さい!」と、アイスオブシディアンが泣き叫び、「このままアステロイドベルトに突っ込むと死ぬぞ!」と、あのショワ=ウーさえも恐怖に慄いた。
「計算結果は?!」と、Mr.Blu‐Oが訊き、「7%を切ってます!」と、アイスが返した。「これってほぼゼロです!!」
「そりゃハイパードライブ用の予備を取っといた場合やろ?」と、Mr。「――全エネルギーをイオンエンジンにまわした場合は?」
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『ああっと!よれた!《一千歳の鷹》が飛び出したことで後続集団のバランスが大きく崩れました!……クラッシュです!8…9台を巻き込むクラッシュが発生しました!!』
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「おい!後ろで事故ってんぞ!」と、セイ・カハが叫んだ。が、「再計算の結果は?!」と、逆にMrが叫び返した。
パチパチパチッ。シャシャシャシャッ。「出ました!」と、アイス。「……21%まで上がりました」――Mrのドヤ顔がムカついた。
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『さあ、このまま《一千歳の鷹》の一人旅となるのか?…………いや、群れからまた一台抜け出して来ました!ゼッケン7番!機体は!《S・カイゼリン》だ!!』
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「知っとるよ!ホーマンの船やろ?!」と、Mrが叫んだ。が、「違う!別のデカいのが真後ろに!」と、逆にウーが叫び返した。
(続く)