第二十一週:算盤と藁半紙(水曜日)
パチパチパチパチパチパチッ。
と、コックピット内にソロバンの玉の激しく鳴る音が響く。と、同時に、
シャシャシャシャシャシャシャシャシャシャッ。
と、ワラバンシの上を2Bの鉛筆が激しく動く音も聞こえた。
そうして、
パチッ。シャッ。と、それらの止まる音がしたのと同時に、「計算出ました!」とアイスオブシディアンが言った。
「五次元振動チテトポップスの値が不安定ですので、後部スラスターを0.5ポイントほど右に修正して下さい。あと、自前のハイパードライブ航行はNGと云うことなので、トパチャックのキャブランチは閉め切って、その分をイオンエンジンに廻しましょう――ねえ、やっぱり出場しないとダメなんですか?」
そんな彼女の最後の問いに対して、「あったり前でしょ?!」と、Mr.Blu‐Oが答えた。「あいつら『女にラリーは無理だ』って言ったのよ?くやしくないの?!」
「本当にそんなこと言われたんですか?」――うーむ。正しい指摘だ(*先週木曜日の当連載を参照)。「――あ、セイさん。ディメトロン粒子のマフラーはオートにしないで、手動開放した方が負荷は下がりますよ?」
「ああ云うヘル〇エン〇ェルスみたいなヤツらは平気で男尊女卑してくるんだから」と、Mr。「目にもの見せてやらないと」
「でも――」と言い掛けて、何かに気付いたのだろうか、パチパチパチッ。と再びソロバンを鳴らすアイス。「ウーさん。防御フィールドのセンターグメントを7%下げて下さい。恒星を廻る時のスイング・バイの効率が上がります。――私なんか乗っててもどうせ役に立たないじゃ……あ、やっぱり、8%下げて下さい。……役に立たないじゃないですか」
「これはジェンダー的な問題なの!!」と、Mrは叫んだが、このやり取りを聞いていたウーもセイも『いや、彼女には居て貰おう』と考えていた。『我々の死ぬ確率が下がる』
(続く)