第二十週:チェリーとラリー(金曜日)
『全銀河7000億人のワームホールラリーファンの皆さま、大変長らくお待たせ致しております。《第三回:深探索ワームホールラリー》も、たった今、大会理事兼主催者のハガネノ・カサエボ氏による開会挨拶&ルール説明が終わり、後はスタートを待つばかりとなっております。……えー、ちなみに実況はこの私、ラリー実況四十年。AGBCCスポーツ部所属。お耳の恋人、ラ=ブーイが務めさせて頂きます。――と云ったところで、解説のイ=セツマさん。今回の見所ですが……」
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「ええっと……それでは、機体名は、《一千歳の鷹》で、パイロット名は、《Mr.Blu‐O》……」と、マルイ体の受付係が、そのニカク師匠のようなシカクイ顔をMrの方に向けながら訊いた。「――あなた男性?」
「えっとね。話せば長いんやけど、これまで八回人生を重ねて来――あ、今がその八回目なんやけどね――」と、いつものハイテンション……と云うか、いつもの数倍のハイテンションでMr。「で、その内六回が男で、初代も男やったもんやから、その時から使っている名前が通称みたいになっちゃってて、女性名も考えて……いいじゃん!このジェンダーレスの時代にどんな敬称付けたって!!」
「おいおい、バアさん、ちょっと落ち着けって。ここはオレがやっておくから……」と、セイ・カハが、荒ぶるMrをアイスに預けながら受付を代わる。「すみませんね。あの人、売り言葉に買い言葉でレースに出ることになっちゃって、テンションが変な感じに――」
「あなたは、」と、セイの体をジロジロと見ながら受付係が訊く。「《ジバレー》の方?」
「あ、いえ、青いでしょ?《サカタッティ》ですよ。……副パイロットの《セイ・カハ》……ジャンケンで負けちゃって」
「あっ、何れにせよ、質量ゼロの方は機体を安易に軽くするので、登録出来ませんよ?」
(続く)




