第二週:F社と封神大戦(金曜日)
「それとフ〇イス……F社とどう関係が?」アイスオブシディアンが改めて質問した。システムの納入が終わっているのなら、神々が封神されようとF社に不利益はないのでは?
「アップデートとメンテナンスじゃよ」老人は答える。「神々とF社の業務委託契約には、納入後三百年のアップデート及びメンテナンスの一斉をF社以外に発注しない旨の条項が書き込まれておったのじゃ」
ああ、それって独禁法とかには引っ掛からないんですか?
「表向きはあくまで民民の契約と云うことになっておるし、神々からしたら三百年が三千年でも大差ないが、この辺の固定収入がなくなってしまうのはF社にとっては大打撃じゃからのう――」多分、似たようなケースで苦労したことでもあるのだろう遠くを見詰めながら老人が言った。「そこでF社は、地上に大きな争いを起こし、天帝の計画が遅れるよう画策したワケじゃ――いやはや、ほんに恐ろしいは神々よりも人間かも知れんのう」
「それでは、」とアイスオブシディアンは訊いた。「殷周の革命や旧約聖書に残された戦争などは――」
「そう」老人は答える。「すべて本当にあったこと。F社が仕組んだことだったのじゃ」――大丈夫かな?この話。
「じゃからのう。キム=アイスオブシディアン」と、本当の孫娘にでも向けるような、慈しみに溢れた瞳で老人が言う。「お前も復讐などと云うような考えは捨て、先ずは自身の幸せを考えなさい」
まさか自分の計画を知られているとは思ってもいなかったアイスオブシディアンは、「先生――」と、老人に向かって何か言い掛けたが、これ以上はどうしても言い訳にしかならぬと思い、その口を閉じた。
「それがなによりの父への供養となろう」そう老人は言った。
(続く)




