第二十週:チェリーとラリー(水曜日)
「会議?」と、呆れた顔でMr.Blu‐Oが訊き返した。「こんなとこまで来て?」
そんな彼女の呆れ顔の意味が分かっているのか分かっていないのか、「まあ、ネットには繋がりますからね――」と、顔色一つ変えずにリチャード・P・シルバーが言う。「なので、一瞬で良いので出て頂けますか?」
「やだよ、あたし、グローバル企業ってキライだもん」と、そこの従業員に向かってMrが言うと、「まあ、確かに、僕もキライはキライなんですけどね――」と、そこの従業員も笑って答えた。「でも、あの船も会社の持ち物ですし……」
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『では、あなたがあの《銀河の破壊者》ですか?』と、某F社常務取締役のA氏が言うと、
『おいおい、失礼だなあ。《戦場の破壊神》だろ?』と、同社シニアパートナーのB氏が言った。『――《時空爆破魔》だったかな?』
すると、『お二人ともまったく間違っていますよ』と、同社のエグゼクティブ・ディレクター兼COO兼DE・TOX社会長兼CEO兼コンサバディブ・ポストイットのC氏が、飽満を絵に描いたような笑顔で、『彼女こそが《不倶戴天の敵なる破壊神の生母、地獄の最下層からの御使い、黄龍と呼ばれた偉大なる獣、ハデスの名付け親にして偽りの乳母、闇の申し子、サタンが子房》さまですよ」と、言った。『まさか本当にお目に掛かれるとは……』――ナンマンダブ・ナンマンダブ……。
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「ね、」と、心底ウンザリと言った声と表情でMrが言った。「だからキライなのよ」
「でもよ、」と、苦笑混りにセイ・カハが言った。「あながち間違いでもねえじゃねえか」
「そんなに悪いことして来た記憶ないよ?」
「あんたの記憶じゃそうだろうけどよ――《大いなる力には大いなる噂話が付き纏う》って、諺にもあるじゃねえか」
(続く)