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第十七週:愛と競技会(木曜日)

「許婚……?」と、アイスオブシディアンが訊いた。「こちらのおキレイな方が?」


「お、上手言うやないか」と、ショワ=ウーの腕に絡まり付きながら、セトルドウン星第一皇女・スピ=ヤビノは言った。「お嬢ちゃんもきっと、将来キレイんなるで」


 すると、そんなヤビノの手を払い除けながらウーが、「誤解されるな、アイス殿」と、言った。「許婚と言っても、元・許婚だ」


「まあまあ、そんなイケず言わんと――」と、払い除けに来たウーの右手の人差し指を掴もうとするヤビノ。「アンタが追い出されへんかったら、今頃は夫婦や」と、その指を掴んだ瞬間、一気に折りに掛かった。


「それはそやけどのお――」と、掴まれた指ごと右手をグッと握り締めるウー。「お前も今は、王子の求婚者の一人じゃろう」ヤビノの体勢を崩しつつ空いた左腕で彼女の頭を挿み込み――その首を圧し折ろうとする。


 が、ヤビノも慣れたもので、「ゼピの叔父貴とお袋に来さされただけで――」と、ウーの腕をスルリと抜けつつ右の掌底で彼の肋骨を狙った。そのまま肺をも破るつもりであろう。「あんなバケモノどもとは競えんわ」


「バケモノ?」と、ウー。ここで気が逸れてしまった。「ムゥ」と小さな叫びが上がる。ヤビノの掌底が胸部をかすめたのである。


「なんや、まだ女に幻想持っとんのかいや」と、透骨の形に変えた両の拳でウーの上腕骨隙間を打ちつつヤビノ。「あたしやタルヤ様みたいなんは……」肩口。アゴ。喉頭隆起。「――特別やって」乳様突起。こめかみ……と、的確に急所を打ち終わると、身動きが取れなくなったウーを優しく抱き止め、「他は、強くて怖いか、弱くてカワイイかのどっちか」と言った。「ま、程度の差はあるけどな」


     *


 と、それはさておき困ったことに。丁度その頃、問題のバケモノ(求婚者)三十五名は、先ほどの歌で眠りに堕ちていた。


(続く)

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