第十七週:愛と競技会(水曜日)
コンコン。と、食糧保管室の扉をノックする音が聞こえた。
ビクゥッ。と、室内にいた男性使用人たちは、一斉に身体を震わせると、一斉に扉と反対側の方へと逃げ、一斉に一塊になった。
「Mrか?」と、ショワ=ウーが訊いた。
「いいえ……」と、首に掛けたペンダントを確かめながらアイスオブシディアンが応えた。「Mrからの連絡はまだ来ていません」
「なら誰が……?」と、不審に想いつつもウーが扉に手を掛けようとしたところで、
「ちょ、ちょっと待って下さい」と、アイスがその手を止めた。「求婚者の誰かかも知れないんですよ?」――ウーさんが操られでもしたら誰も止められなくなります。「なので、Mrも言っていたように、ここは私が……」
コンコンコン。と、そんな二人を急かすように再びノックの音が響いた。
「はい?どちら様ですか?」と、アイス。扉を開けるのはまだ止めておこう。
「アンタ、ひとりか?」と、ノックの主が訊いた。女の人の声……扉を開けるのは危険だ。
「……どちら様でしょうか?」と、アイス。
「この屋敷にイン=ビト王のご子息が来とるって聞いたんやけど」
『?!』と、顔を見合わせるアイスとウー。
「……ですから、すみません。どちら様でしょうか?」と、再びアイスは訊いたが、
「おい、こら、ショワ=ウー」と、そんなことにはお構いなしに扉向こうの女性は続ける。「おんのは分かってんねや、サッサと出て来い――カワイイ許婚が会いに来てやったぞ」
*
「それでは、私は既にレフグリス様から袖にされておりますので(?)、以上の三十五名の中からお選び頂く――」と、ジュージャ姫が言い掛けたその時――ていとう。ていとう。と云う鼓の音と、それに続く、のうのう。と云う乙女の歌が広間の外から聞こえて来た。
(続く)




