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ALONEMAN  作者: 籠池源行
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人物紹介と但し書き、及び、あらすじの完全版

 これは幻冬舎ルネッサンス新社よりKindle版にて発売した著書「ALONEMAN」の全文です。

 先日、故人となられました、とある友人(名前は伏せさせていただきますが、ご容赦ください)との約束に従ってこれを公開したいと思います。

 仮に、これによって諸問題が発生した場合、全ては私の独断によるところであり、かの故人には何ら責任のあるところではありません。

 ゆえに、それをご理解くださいますようお願いいたします。


・登場人物


 タキオン    ……神の一人子。光速を超える物質と同じ名を持つ。


 ルドルフ    ……タキオンを救い出した男。その時代最高の賢人。


 マハ      ……七丘の街の未亡人。


 アンナとギーギー……盲目の姉妹。七丘の街の幼い娼婦。


 山岳寺院の老人 ……暗殺集団の長。強力なるテレパス。


 リコ      ……遠浅の海辺で出会う少年。


 宿屋の主人   ……大義を掲げ、秘密裏に祖国復帰を画策する活動家。


 キングダムカム ……告死者。告死と贖罪を司るもの。





本文中に、今日の観点からみて差別的と思われる表現がありますが、

本作品の設定や世界観を考慮して、著者の原文に準じました。読者

の皆様にご理解を賜りたく、お願いいたします。(編集部)


 この下記より、あらすじの「完全版」を先に置いておきます。

 これはあくまで手っ取り早く結末を知りたい方や、全体像を知りたい方に向けたものでもあります。

 ただし多くの部分を端折ったものでもあり、できればこれを読まないまま本編の方へお進み戴くことを強くお勧めします。


・あらすじ


「ママ、今日僕は人を殺したよ」

 薄暗い部屋。

 罪の意識のみとなった神の一人子、タキオン。

 まもなく魂の堕ちゆくのを自覚する。

 そこに現れた怪しげな男に促され自らの半生を語りだす。

「これはかつて神の子だった男の物語だ」


 始まりは狂王の引き起こした大量嬰児殺の時代。

 役人らが家々を廻り、次々に子供たちを攫っていく。

 タキオンの生まれた村もまた例外ではなかった。山狩りから追われる最中母と離れ離れとなり、森の中で行き倒れてしまう。

 それを拾ったのは女衒だった。

 衰弱し、唖となるも着飾ると彼を容易に魅了する。娼窟へと売り飛ばされてしまう。


 怠惰と安閑の街で男娼となったタキオンは倒錯と退廃の日々を送っていた。

 声を失い、心と体が徐々に擦り切れてゆく中で同じ娼婦の姉妹、盲目のアンナとギーギーと心を通わせる。

 その一方、街にも別の影が忍び寄ろうとしていた。奴隷らの間に皮膚に黒点を伴う死病が蔓延し始めたのだ。

 やがてそれは支配階級への不満と結びつき暴動へと発展していく。

 上客の一人だったマハは、その混乱に乗じて廓の子供らを密かに逃がそうと画策する。

 しかし彼女はその直前に捕まり、暴動の首謀者として処刑されてしまうのだった。

 それによって街の混乱は収められたかに見えた。だが、その怨念が繋がるように病は急速に街へと広がっていく。

 疫禍によって無差別に数万人単位の人間が死亡する。

 娼窟に残ったのはタキオンとその他の子供ら、そして一人の女であった。

 彼女は自らを死病の化身、マザー・オブ・ハーロットと名乗り、幼き彼を堕落へと誘う。

 それを救ったのはルドルフという男だった。彼は女と子供らを亡者と見抜き、彼らをその手で葬った。タキオンは激昂するも、その場で眠らされてしまう。


 目覚めたタキオンはルドルフに憎悪をむき出しにした。しかし襲い掛かるもまるで歯が立たない。彼を殺すために、エメロニアンという巡礼者の一団に紛れて彼と旅を共にすることとなる。

 その後、山岳に住まう暗殺集団との対峙や、遠浅の海からやってくるものらとの邂逅などを経て、徐々にルドルフに対する心象を変化させていく。

 そしてある明け方に星震の徴を見る。ルドルフは静かに呟く。

「キングダムカム、奴が来る」


 とある宿の晩のこと、ルドルフらの部屋に秘密裏に祖国復帰運動をしていうというエメロニアンの者らがやってくる。

 彼らの中心になってほしいという話を持ち掛けられる。

 ルドルフはそれを断るも、次の日彼らの元に自警団がやってきて密告があったと告げられる。

 彼らの一人である宿の主人の身代わりに、ルドルフが名乗り出ることで彼は捕まってしまう。それを止めようとしたタキオンもまた捕まった。

 薄暗い独房の中で目覚めたタキオンは盗み聞いた彼への拷問と処刑のことに激昂した。

 しかし強固な枷により全ての抵抗は無意味となった。諦めを悟ろうとする。

 そのとき目の前に黒い影、キングダムカムが現れる。牢獄を開け放ち「義務を果たせ」という言葉を彼に残す。

 そして徒刑場へと向かった先に狂気に酔いしれる人々と、血まみれで十字架を担ぐルドルフの姿を目の当たりにする。

 タキオンは怒りに我を忘れかけるも、ルドルフはそれを諫めた。

 そのあと何とか逃亡を果たし、希望を頼りに向かった先は最初の宿屋だった。

 だが、その主人は身代わりの恩も忘れ、扉をしめ切って非情にも彼らを追い返そうとする。それによってとうとうタキオンの怒りは頂点に達する。人に絶望し、世界の全てを呪おうとする。

 だが、そのときルドルフが血の塊を吐き出して倒れる。それを見てようやくタキオンは正気を取り戻す。二人は最後の旅へと向かった。

 旅の最後に、ある沈黙の原野に囚われる。ルドルフはこれまでタキオンの中の憎しみを解かなかったことを謝り、あれは間違いだったと口にする。すまないと何度も述べた。

 そんな彼の姿に素直になれなかったタキオンもまた後悔の念を強くする。

 やがて、死の時が訪れる。ああ、待ってくれ、もう少しだけ待ってくれ。

「何もかもが暗がりに収まっていく、これが死か…」

 全てはタキオンが知るべき他者への赦しが故でもあった。


 薄暗い部屋にて怪しげな男は「それがお前の罪か」と問う。タキオンは答えずも、心の中でそれを肯定する。


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