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装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第四章『聖なる者』

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四章 第十一話 シーン1〜2



 時間は──少しだけ遡る。

 ラファとマリーは帝剣の前で、険しい顔で話し合っていた。


「だめね。何度やっても変わらない。自分達の考えで動けって。敵がそこまで迫ってきてるのに」

「帝剣が敗北を認めたか? 或いは何かを試しているか」


 マリーに言われてラファは考えた。

 しかし可能性はまだ有るはずだ。


「単に故障しただけじゃない? 私達、頼りすぎてたかもね」


 マリーがラファへと指摘した。ラファには受け入れがたい現実を。

 ラファは帝剣を得る以前から、常に正しい道を進んできた。その結果築き上げた帝国だ。間違っていたなどとは思えない。

 しかし現実は現実だ。


「とにかく私は防衛にでるわ。たぶん勝てないと思うけど。お兄様はどうする? 逃げてみる?」

「いや。僕はこの上で奴を待つ。父上ならわかっているはずだ。僕達の今の状況も、帝剣に何が起きているのかも」


 ラファは帝剣を見上げて言った。


「その上で勝つ。僕らは、絶対に」

「そ。じゃあ行くわ。またねお兄様」


 マリーが溜息混じりに言って、玉座の間から去るため歩き出す。

 それでもラファは帝剣の刃を、穴が開くほど強く見つめていた。



 青空に浮かぶ三機の機兵。ドラウガル。メルフィリス。フェルトマール。アズマ達はその内二機の中で、マリーの話を黙って聞いた。

 マリーは直ぐには戦わず、アズマ達に事態を説明した。

 おそらく時間稼ぎが目的だ。稼げたのは五分に満たないが。


「そんなワケで私はここに居るの。だから大人しく逃げてくれるなら、私は貴方達を追わないわ」


 話が終わってマリーが言った。

 が、マリーにもわかっているはずだ。


「残念だがその提案は呑めん。奴は数少ない私の友だ」

「私はその、一応妻ですし……」


 アズマとリリエはマリーに言った。


「まーそうよね。普通に考えて」


 圧倒的に有利な状況で、逃げ出す戦士など何処にも居ない。逆ならあり得なくもないのだが。


「お前こそラファを裏切れよ。奴がオヤジに勝てると思うのか?」

「そうですよお姉様。止めましょうよ」


 ロンとアリスがマリーに言った。所謂、説得というヤツだ。


「悪いけどこっちにも意地があるの。今更後には退けないわ」


 しかしマリーの方も頑なだ。それにとっくに覚悟は決めている。


「ふ。ならば楽しませて貰おうか」

「私は楽しくないですが、ガルグ様のためにも倒します」

「だったら交渉決裂……ね!」


 二人が言うとフェルトマールから、風の刃が放たれ飛んでくる。

 そんな物は牽制に過ぎないが、殺し合いの火ぶたを切る魔法だ。

 こうして二対一の戦いが、晴天の空の元に始まった。


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