四章 第十話 シーン3〜4
3
翌日。ムース・コロニーに、連合の戦力が集っていた。帝国を──滅ぼすためである。だが攻撃機はたったの三機。エルギアとドラウガルと、メルフィリス。
「本当に三機だけで行くのだな?」
「ああ。現在帝国の戦力は、ラファとマリーの二人だけだしな。それに帝剣自身が帝国の、滅亡を強く望んでる。だから俺の思うとおりにやれば、帝国の攻略は終了だ」
ガルグはつらつらと解説をした。
しかしその解説には穴がある。アズマはそう考えたようである。
「だがそれで何の得がある? 帝国を潰したいだけならば、自滅を選べば良いだけのはずだ」
「アズマ。帝国が滅びた場合、その領地は──誰の物になる?」
そのアズマの疑問に答えるため、ガルグはアズマに向かって聞いた。
それでアズマなら気付くはずである。
「元の領主は死んでいるからな。我々が帝国に勝利すれば連合の物になるだろう。ヘイザーが泣いてまた感謝する」
「だからヘイザーを殺さなかった。巨大な勢力となる連合を、治めるのには奴が必要だ」
ガルグが言うとアズマが驚いた。彼のそんな表情も珍しい。
「帝国付近の勢力を消して連合へと併合するためか!?」
「そうだ。それも遺恨を残さずに。俺が帝剣の意図を理解して、奴を壊せばそれは上手く行く。奴が解り安い悪者になる」
一方ガルグは淡々と言った。
「帝剣とはそう言う存在だ。勝ち負けや生き死にで物を見ない。目的を果たせればそれで良い。純粋で──そして残酷だろ?」
故に帝剣は自らを殺す。
「まあまだ一つ裏がありそうだが、それは推測の域をでないしな」
ガルグは言って、エルギアを飛ばす。
「そら行くぞ。お前ら。決戦だ」
「ふ。それが後のためと言うのなら」
「私も了解です。ガルグ様」
そのエルギアにアズマのドラウガル、そしてリリエのメルフィリスが続く。
三機はこの戦争の決戦地──聖帝国へと飛び去った。
4
ギルダトール聖帝国の領地。その町や村に暮らす人々は、ガルグ達をただ見上げ見送った。
敵の機兵が来ていると言うのに、応戦する者達は見られない。居るのは一般市民だけ。帝国とはそう言う国なのだ。
エルギア。ドラウガル。メルフィリス。三機は彼等を無視し飛んでいく。快晴の青空を気持ちよく、風を切って帝都を目指し進む。
「本当に無抵抗で通すとは」
「だから言ったろ。少しは信じろよ」
腕を組むアズマに、ガルグは言った。
ガルグ的には予想通りである。そしてその予想ではこの辺で、マリーが迎撃に出てくるはずだ。ここは街と街の間にあたり、殺し合いをしても被害は出ない。
すると案の定、それは現れた。遠くから飛んでくる細い機兵。マリーの機兵、フェルトマールである。
その機兵はエルギアの前方に、距離を取って向かい合い停止した。
「ようマリー。元気か?」
「見ての通り。お父様にしてやられたわ」
ガルグが聞くとマリーは返事した。彼女の声は怒気を孕んでいる。
状況を考えれば当然か。
「でもね。私達にも意地がある」
「だろうな。だから二人連れてきた」
ガルグはマリーに対して言った。
「足止めってワケ?」
「いや。姫と騎士だ。二人にはお前を墜として貰う」
ガルグは情報として知っていた。
以前にマリーはアズマとリリエ、二人に対し追い詰められていた。今回も同じ展開になれば、マリーの機兵は撃墜される。もう逃げ帰る場所は無いのだから。
「つーワケで後は任せたアズマ。リリエも──あまりやり過ぎるなよ」
ガルグは言ってエルギアの進路を、一度直角に横へと曲げた。
そしてマリーを露骨に避けていく。しかしマリーも理解しているので、その後を追いかけることはない。
「それじゃあ戦争を始めましょうか」
マリーはアズマ達に向けて言った。
帝剣の手の平の上に居ても──せめて自分の意思で踊るために。
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