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装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第四章『聖なる者』

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四章 第九話 シーン3〜4



 時間は前日へと遡る。

 ゼオは帝剣の元に現れて、その遺物から指示を受けていた。

 すると背後から声がかけられる。


「ゼオお兄様? ──珍しいわね」


 それは妹のマリーであった。


「マリーか。帝剣に呼び出された」


 ゼオはそれに端的に返事した。

 元々無口なゼオである。それだけ言うと出口に歩き出す。

 しかしマリーは少しおしゃべりだ。


「どんな用事? って言うか指示? 珍しくラファも居ないしね。出来れば聞けたら嬉しいんだけど」


 マリーはゼオに向けて問いかけた。

 だがゼオは歩く速度を落とさず、無視してマリーの横をすり抜ける。


「無視か。ゼオお兄様らしいわね」


 それを見てマリーが溜息をつく。

 この時に受けた指示こそが、ガルグに対する防衛だった。



 舞台は再び海岸へ。

 ガルグ達三人の襲来を、帝剣は見事に読み切っていた。エルギアとドラウガルとミュレ。三機の機兵は氷山の、瓦礫に埋もれて影も無い。

 しかし三人は生きていた。

 そしてこの作戦の要である、アズマのドラウガルが現れる。氷を吹き飛ばして前方へ、剣を構えて真っ直ぐ進む。


「ふ。ようやく出番というわけだ」


 アズマはドラウガルの中で言った。


「陽動よりも先に飛び出すなよ」


 一方、ガルグのエルギアと、マユのミュレは氷山の上空だ。

 今回ガルグはマユを守りつつ、ゼオの攻撃を引き受ける。はずだったがアズマが突撃した。

 もっともどちらでも同じ事だが。


「絶氷域」


 ゼオの機兵から──輝く粒子が放たれる。それは広範囲へと広がって、全ての物体を氷結させる。


「炎障壁」


 ガルグのエルギアは、障壁でそれをガードした。後ろに着いたミュレも守るためだ。

 一方ドラウガルは止まらずに──炎を吹き出しながら突き進む。

 そして瞬く間に間合いに入り、ゼオの機兵へと斬りかかる。

 それを、ゼオの機兵が受け止めた。

 フェオニルス──ゼオの乗り込む機兵は、防衛に特化した機兵である。武器が無い代わりに両手の甲が、盾の形状になっている。色も氷をイメージした物で、ドラウガルとは対照的である。


「この魔力。ロダロンの兄上か」

「その通り。相性が良いからね」


 ロンがゼオの言葉に返事した。

 炎の魔剣と氷の聖剣。属性の相性も大切だ。

 だからこそ障壁など張らずとも、ドラウガルが凍てつく事は無い。


「ガルグからの許可は出ているのでな。悪いがその機兵は破壊する」


 その操縦者のアズマは言った。

 だがゼオも負ける気は無いだろう。


「フェオニルスが抜かれる事は無い」

「どうかな? 試さねばわかるまい」


 攻撃と防御。剣と盾。その均衡が徐々に崩れていく。


「ぐ……」


 フェオニルスの盾が弾かれた。無論二ノ太刀を防ぐため、直ぐに体勢を立て直す。

 しかしそれを繰り返すその内に、遂には完全なる隙が出来る。

 その隙に、アズマは叩き込んだ。


「ぬん!」


 フェオニルスの肩口に、振り下ろす強烈な斬撃だ。

 しかしゼオも大した反応で、何とか機体を横へと逸らす。それでも完全には間に合わず、フェオニルスの左腕が斬れて落ちた。

 そこでアズマは一旦距離を取る。


「すんでのところで躱したか。だがこれ以上は防げまい」


 そしてアズマはゼオに宣告した。

 元々アズマの優勢で、その上片腕を失ったのだ。最早ゼオに勝機は無いだろう。


「俺は守るときは、死んでも守る」


 だがゼオに撤退は無いらしい。

 他の宝剣には無いスタンスだ。


「その意気や良し。ならば応えよう」


 それを見てアズマは殺気を放つ。ハーフであろうと剣であろうと、アズマは武人には敬意を払う。

 そして──ドラウガルは全力で、フェオニルスを二つに切り分けた。

 だが聖剣を破壊する気は無い。ドラウガルが残骸を叩き割り、その中から聖剣を掴み取る。


「暑苦しいやり取りはそこまでだ。おいアズマ。さっさと帰還するぞ」


 その上からガルグの声が飛ぶ。


「ああ」


 アズマはそれに返事を返し、海へとドラウガルを歩かせる。


「ゼオよ。楽しい戦いであった」


 その途中アズマはゼオへと言った。


第九話完。

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