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装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第一章『回帰』

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第二話 シーン5



 エルフの森に立つ機兵と機兵。ガルグとヘイザーは互いの意図を読み合い、未だに動かずにいた。

 だがそろそろ仕掛けても良いだろう。無論直ぐ戦うわけではないが。


「おーい。そこの鉄機兵ー。聞こえてたらさっさと返事しろ」

「これは、周囲魔力領域を利用した……魔力震動会話か? まさかこんな魔法まで使うとは」

「今それ重要か? ま、おかげで意思疎通出来るのはわかったが」


 ガルグは機兵の中にいて、ヘイザーとの対話に成功した。

 戦闘中魔力は広がって、球形の領域を形作る。それを空気と同じ様に使い、その振動で会話したのである。本来は言葉を旨く出せない種族や人間向けの魔法だが、幸い機兵にも応用できた。

 相手のヘイザーもそれに気付いてガルグへと質問を投げかける。


「貴様、何者だ?」

「ハーフエルフ。つまり……」

「エルフの希少種か。本当なら初めて遭遇した」

「またそれか。慣れてても傷つくぞ? 俺も半分は人間なんだが」


 ガルグはしれっと笑って言った。

 結局ハーフエルフはどちらにも敵と思われる存在なのだ。そんなことは重々知っている。

 しかしただのエルフよりまだマシだ。


「とは言え、今のは水に流してだ。俺からお前に提案なんだが……ここはおとなしく退いてくれないか?」


 そこでガルグは交渉に移った。


「後ろから撃たないと言う保証は?」

「残念ながらない。無茶を言うなよ」


 もっともガルグも最初から、成功するとは思っていないが。


「では断る。ハーフエルフの者よ」

「後悔するなよ?」

「したことなど無い」

「さすが兵士は嘘が上手だな」


 ガルグは再び笑みを浮かべると──機兵エルギアの右手を回した。


「ならこのエルギアにぶっ壊されろ」

「エルギア?」

「神様の名前だよ。今俺がこの玩具に、つけたんだ」


 無駄な話をしている間にも、互いに魔力のギアを上げていく。

 ガルグもヘイザーも覚悟を決めた。後はどちらが先に動くかだ。

 まだ雨は空から降っては来ない。

 そして──ヘイザーが先に動いた。


「フレイムボルト!」


 ヘイザーの鉄機兵の剣の先。小さな炎が複数現れ、ガルグのエルギアへと飛びかかる。


「甘いな」


 しかしそれはエルギアの、手前で全て弾けて消え去った。

 ガルグがエルギアの右手を伸ばし、魔法の壁を作り出したのだ。エルギアの右手はエルフの機兵──よってエルフの魔法を使用する。


「水の障壁か。それならば……ニードルボール、回転生成!」


 ヘイザーは直ぐそれに対処して、今度は鉄の魔法を使用した。一つトゲトゲの鉄塊が、鉄機兵の前に作り出される。

 だがガルグは少しも焦らない。


「今度は少し趣向を凝らそうか」


 エルギアが左手を前に出すと、同じ鉄塊が作られる。左腕は鉄機兵のものだ。よって人間の魔法が使える。

 それにガルグはハーフエルフである。


「なに!?」

「ほら撃ってこい」

「ちい! 砕け!」


 ヘイザーがその鉄塊を放つが、結果は既に分かりきっていた。


「砕け」


 双方から放たれた──鉄塊はぶつかって地に落ちる。当然二機とも全く無傷だ。

 しかし戦況は互角とは言えず、ヘイザーは歯を強く噛みしめた。

 一方、ガルグはまだまだ余裕だ。


「ほらな。後悔してきただろう?」


 ガルグは言って機兵エルギアを、ゆっくりと敵に向けて歩かせる。


「ご主人様。よろしいでしょうか?」


 すると精霊から急に聞かれた。今まで居るのも忘れていたが、ずっと横に浮かんでいたのである。


「なんだ?」

「もっと速く走れます」

「知っててゆっくり近づいてんだよ。その方が威圧感があるだろう?」


 ガルグは溜息交じりに言った。どうやら精霊は天然らしい。

 が、今は精霊よりも敵だ。


「甲殻剣精製。よっと」


 ガルグの魔法でエルギアの、右手から木の蔓が長く伸びた。それは細長い塊を作り、直ぐに再び右手へと戻る。すると後には剣が残された。

 片刃で透けた刃の剣。エルギアはそれを右手で掴み、ヒュンと一振り切っ先を下げる。ゆっくりと、敵へと歩きながら。

 それを見た人間のヘイザーも、近接戦を選び対抗する。


「おおお!」


 彼は叫びを上げながら鉄機兵を前へと走らせる。そして重たい金属の剣を、エルギアに向けて振り下ろす。

 だが、エルギアはそれを受け止めて──そして鍔迫り合いに移行した。

 両機兵の大きさはほぼ同じ。しかしパワーは一目瞭然だ。


「へろへろだな」


 ガルグは指摘した。


「黙れエルフ!」


 ヘイザーは叫んだが、鉄機兵は一二歩後退する。


「意識が朦朧としてきたはずだ。魔力を消費しすぎるとそうなる」


 ガルグは最初から気が付いていた。敵は既に長期の戦闘で、疲弊し本来の実力は無い。

 遂には鉄機兵は膝をつき、エルギアの剣が肩に食い込んだ。


「く。天よ我を導き給え」


 ヘイザーが天に祈りを捧げる。

 すると魔力の防御が解除され、代わりに鉄機兵が熱を帯びる。彼は帰還を諦めたのだろう。

 炎の魔力で鉄機兵ごと、エルギアを道連れにするつもりだ。


「自爆か。だがそれを待っていた」


 それこそガルグの思惑通りだ。


「根よ。奴の体を食い破れ」


 エルギアの右手から蔦が伸び──鉄機兵の関節部へと向かう。無数のそれは弱点を貫き、機体の内部に入り込む。そして機械の内蔵を破壊し、自爆を止め操縦席に至る。

 ヘイザーも狙いに気が付いたのか、腰につけたナイフに手を伸ばす。しかし自害する寸前で、彼の手に根の先が絡みついた。


「不覚!」

「ほーら。おねんねの時間だ」


 そして根はヘイザーの首を締め、彼の意識を数秒で奪った。

 後は胸部の装甲を剥ぎ取り、機兵の中から取り出せば良い。捕虜。つまり兵士のヘイザーを。


「玩具の兵隊さん。残念だな。一応警告してやったのに」


 ガルグは心底がっかりしながら、ヘイザーをエルギアの目ごしに見た。


「ご主人様。殺さないのですか?」


 するとまた精霊が聞いてきた。


「まあな。それが所謂戦争だ」


 ガルグはそれに投げやりに答えた。操縦席に深く腰掛けて。

 その直後雨が降り出した。まるで汚れを洗い流すように。


 第二話終了です。

 切りも良いし評価感想などを、どしどしと募集しております。

 よろしくお願い致します。

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