四章 第三話 シーン3〜4
3
リリエ達が報告を聞いた頃。ムース・コロニーの東の端で、戦闘は既に開始されていた。
もっとも守護機兵の第一波は既に全てが葬られているが。
「ふーん。これがエルフ製の機兵ね。意外と大した事なかったけど」
機兵の中に乗り込んだマリーは倒れた守護機兵を見て言った。
少女の姿をしたマリーだが、本質は強力な聖剣だ。しかし操縦者はマリーであって、聖剣の主は存在しない。
よってマリーは自らの意思で、この戦闘を起こした事になる。
そのマリーの機兵はフェルトマール。線の細いフォルムが特徴の、金属で造られた聖機兵だ。
「自然はそのままにしたいんだけど、それだとエルフを潰せないのよね」
そのマリーは周囲を見回した。
エルフの住処は巨大樹の森だ。破壊すればエルフは住めなくなり、自動的にこの地は手に入る。
しかしマリーにも主義がある。出来るならこの森は残したい。
「取り合えず聖樹だけ斬ろうかな。それでも影響は出るだろうけど。エルフをちまちま殺していくのは、効率的にちょっと有り得ないし」
そこでマリーは多少妥協した。
だがそのマリーが動き出す前に、マリーの機兵に魔法が迫る。
「風障壁!」
それをフェルトマールは、障壁を張って防御した。敵の魔法も風の魔法であり、衝突してほどけて枝を揺らす。
「ふーん。私に風の魔法なんて。度胸有るじゃない。ま、殺すけどね」
マリーは魔法を撃った敵を見て、その機兵に向けて笑って言った。
4
巨大樹の森を二つの機兵が、木々を縫いながら高速で進む。メルフィリスとドラウガルの二機だ。幸いエルフの作った道なら、上に飛ばずとも移動は出来る。
と、その途中二機はほぼ同時に地面を削りながら停止した。目的地へと辿り着いたのだ。
破壊され横たわる機兵達と、無惨に斬り裂かれ倒れた聖樹。そしてそれをやったと思われる、線の細い金属製の機兵。それは二機を待ち受けるようにして、サーベルを手に森の中に居た。
「たった一機でこれほどの被害を……?」
「ふ。ガルグも先見の明がある」
リリエはそれを見て驚愕したが、アズマの方はいたって冷静だ。
こう言う状況に陥ることはガルグから事前に聞かされている。
「ふーん。人間も来てたのね。エルフの新型かと思ったら」
一方、マリーは余裕で言った。
するとその声と魔力を感じ、ようやくアリスが気が付いた。リリエの横に浮いて居るアリスは腕を組みながらそれを確かめる。
「もしかしてマリーお姉様?」
「あら。アリスじゃない。久しぶり」
アリスとマリーはお互いに、相手が聖剣だと認識した。
「じゃあそっちは?」
「ロンだよ。馬鹿マリー」
「うわ。相変わらず口悪いわね」
そしてマリーはロンにも気が付いた。
聖剣と魔剣──バーサス聖剣。数の上ではリリエ達が上だ。
「これは旗色が悪いかな」
「じゃあ退いてくれませんか? お姉様」
「残念だけど、それは無理。私にもお仕事があるわけだし」
マリーがアリスに聞かれて言った。
どうやら戦闘は不可避のようだ。既に交渉の余地は無く、リリエはエルフを守る意思がある。
「ならエルフのためにも、倒します」
「ふーん。貴方がアリスのマスターね」
「悪く、思わないでくださいね」
リリエは言うと魔法を使用した。
「結晶硬拳!」
土を操作して、巨大な浮かぶ腕を創り出す。リリエが得意とする魔法である。
「からの──合体旋回拳!」
そしてその腕は拳を組んで、回転しながら飛翔する。マリーの操る機兵へと。
しかし腕は途中で横に曲がり、マリーの機兵の横をすり抜けた。
「軌道がそれた!?」
「違うそらしたの。私の機兵フェルトマールがね」
マリーが涼やかにリリエに言った。
だがアズマの駆るドラウガルも居る。マリーが余裕を見せた隙を突き、ドラウガルが瞬時に、突撃する。軌道を逸らした魔法の力も、一度見て居れば対処は出来る。
ドラウガルの巨剣が炎を吹き、フェルトマールの胴を薙ぎ払う。
「うわっと。こっちはいきなりね」
「ふん。油断した貴様が悪い。しかし判断は褒めてやる」
アズマは態勢を整え、言った。
フェルトマールは当たる寸前で、大きく後退して回避した。防御をしてもそれを上回る。そう判断しての行動だろう。
「やっぱり二対一じゃ勝てないか。そっちの男は手練れみたいだし……」
マリーも流石に肝を冷やしたか、言った後一つ溜息をついた。
「仕方ない。ここは撤退するわ」
そしてフェルトマールは背を向けて──空を飛んで帝国に逃げ去った
追跡しようと思えば出来るが、リリエはそんな馬鹿なことはしない。もちろん、護衛のアズマもだ。
「これでエルフに恩は売れました。敵のデータも入手出来ましたし……」
「ふん。強かに育ったな。やはりガルグの側に居たせいか?」
「黙秘です」
「それも良いだろう」
リリエが言うとアズマが微笑んだ。
沈黙もまた答と言う事か。リリエ的には照れくさくもあるが、悪い気分は特にしなかった。
第三話終。
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