四章 第二話 シーン1〜3
1
レグス領地の広い草原に、機兵が距離を取って向かい合う。
一方は青い結晶の着いた美しい機兵メルフィリス。リリエが使う強力な機兵で、ゼイガス戦で活躍した物だ。それをベースに飛行ユニットなど各部改良を施した。背に棒が生えただけにも見えるが、性能は向上を見せている。
もう一方は──新型の機兵。アズマの乗ったドラウガルである。ドラーゼンを元に魔剣を使い、生まれ変わった赤い色の機兵。特徴は前の物を引き継いで、武器は肩に担いだ剣である。ただし巨大さはそのままに、片刃の物に変えられてはいるが。そして当然こちらの機兵にも、飛行ユニットが着いている。
さて。連合側のこの二機が今から模擬戦をするのだが──もちろんそれには理由が有った。
2
模擬戦の開催日二日前。アズマと森を離れた次の朝。ガルグはレグス王国へと戻り、王城の部屋に二人を呼んだ。
一人は一緒に帰ったアズマ。もう一人はガルグの妻、リリエだ。一応そう言う事になっている。手を出したら犯罪レベルだが。
とにかくガルグは二人を前に、呼びつけたワケを話し出す。
「無駄な戦争はしないこと。そいつが理想的な戦争だ。そんな訳でお前ら二人には、軽く模擬戦を披露して貰う」
ガルグは二人に向かって言った。
まあ元々アズマは知っているし、その意図も理解をしているらしい。
「我々の軍事力を見せつけて、帝国を折れさせると言う事か?」
「まあそうだが他にも利点はある。目下の敵は帝国なワケだが、中立を保っている国もある。味方に付けるのは無理だとしても、せめて協定を結びたい。ついでに言えば連合内に居る、不穏分子も押さえ込めるしな。一石二鳥と言うよりは、網で根こそぎな作戦だ」
ガルグはアズマに聞かれて言った。
つらつらと語ったが要点は、軍事力のお披露目と言う事だ。しかし問題が無い、ワケではない。
「ですが良いのですか? ガルグ様。軍事機密が敵に漏れるのでは?」
「だからさっき軽くと言っただろ。具体的には飛行ユニットだ。アレで上に飛ぶのは禁止する。ブースターだと思わせたいからな。出来れば前ダッシュに使ってくれ」
リリエに指摘されガルグは言った。
これで敵が連合を侮れば、それはそれでしめしめと言うワケだ。
「とにかく噂を流したい。背びれに尾ひれが付きそうな奴を」
情報戦は国家戦略の、大きな範囲を占めている。即☆戦争などと言う状況は出来れば避けたい物なのだ。
「つーわけで宝具持ち二人だが、文句があるならメンバーは変える」
ガルグは一応言ってみた。
二人の性格を勘案すると、断る可能性は低いのだ。そもそも断ると思っていればガルグが白羽の矢を立てはしない。
「私は構いません。ガルグ様。お役に立てるのなら努力します」
「ふ。肩慣らしに丁度良さそうだ。宝具同士と言うのも面白い」
案の定、リリエとアズマは言った。アズマなど露骨に喜んでいる。
「じゃ、模擬戦開催は明後日だ。体調は万全にしておけよ」
ガルグはその様子を確認し、溜息交じりに二人に言った。
3
以上の理由により模擬戦が、行われる運びとなったのだ。
しかも聖剣持ちと魔剣持ち。リリエとアズマの好カードである。仮設の観客席に集まった、観客も盛り上がると言う物だ。因みに民衆以外にも、色々なメンバーを呼んである。連合加盟国の外交官。エルフに人魚に獣人に。まさに連合の観衆だ。
無論彼等を傷付けないための、防御の仕組みもちゃんとある。と、言っても機兵が複数で、結界を張っているだけなのだが。リリエとアズマが本気になれば、このくらいなら突破するはずだ。故に二人から離れてはいるし、直撃させないように言ってある。
そんなこんなで二人の模擬戦は、ガルグの合図により幕を開ける。
「ではこれよりリリエとアズマによる、交流模擬戦闘を開始する。両者共フェアに戦うように。それでは……始め!」
観客席からガルグは言った。
しかし、リリエの乗るメルフィリスもアズマのドラウガルも動かない。リリエは様子を見ているようだが、アズマは余裕を見せているらしい。
その上アズマは挑発を打った。
「ふ。先手は譲ろう。でなければ、見せ場も無く決着が着くだろう?」
「えと、ではお言葉に甘えますね」
しかしリリエはあの性格である。優しくて、そして強かだ。
事実リリエは挑発には乗らず、取り合えず態勢を整えた。
「結晶硬拳」
リリエの魔法で、地面から鉄の腕が現れる。両手を使えば機兵すら、ガッチリ掴める巨大な腕だ。それはメルフィリスの左右に浮かび、リリエの操作を待っている。
これはリリエがコールを倒すのに使用した、驚異の魔法である。
「面白い。そうでなくてはな」
アズマもそれは知っているはずだが、ドラウガルは剣を構えただけだ。これではリリエが有利に見えるが、アズマは武人。経験では上だ。
「行きます!」
リリエが気を吐くと、ドラウガルに向かって巨腕が飛ぶ。その拳がまともにぶつかれば、ドラウガルとて傷を負うだろう。
しかしこれはアズマも見た技だ。
「ぬん!」
アズマの巧みな操縦で、ドラウガルがその剣を振るう。剣の裏から炎が吹き出して、加速した刃が巨腕を別つ。まずは右腕。そして左腕。
「爆・波・斬」
そしてアズマが言うと、斬られた腕が派手に爆発した。
「これは……」
「リリエちゃん。お兄様は火と風の金属の魔剣です」
「それにしても流石はアズマ様」
横に浮かんだアリスの解説を、聞いてリリエは感想を述べた。
しかしアズマの方はもう既に、攻撃の動作へと入っている。ソレはガルグに指示を受けた通り、前方にダッシュする攻撃だ。
飛行ユニットを推力に使い、一直線にメルフィリスに迫る。
「金剛防御!」
リリエはそれを、メルフィリスの持つ杖で受け止めた。
正しくガチンコの力比べだ。推力が加算されているだけに、これはアズマ有利に思えたが──
「アズマ様。力では負けません」
「これで動かんとはな。甘く見たか」
受け止めたメルフィリスは下がらない。それどころか純粋なパワーでは、上回っているようにすら見える。
実際アズマは諦めて、ドラウガルを一度ステップさせた。一進一退の攻防であり、観客は喜んでいるだろう。
しかしガルグは二人を制止した。
「そこまで!」
ガルグの言葉が響き、同時に二人が動きを止める。
「お前ら。ちょっと熱くなりすぎだ」
「申し訳ありません。ガルグ様」
「ふ。中々楽しい試合だった」
ガルグが言うと二人が返事した。自覚があったようでなによりだ。観客も拍手しているし、模擬戦は見事に成功だろう。
後はこの情報でどう転ぶか。
ガルグは椅子に座り腕を組んだ。
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