四章 第一話 シーン3〜4
3
舞台は戻って森の中。ガルグはまたアズマと対峙した。
先ほどガルグが口にしたとおり。まさに本題はここからだ。
「今のエルギアの力なら、単機でも国一つは滅ぼせる」
ガルグはアズマに向かって言った。大言壮語に思えるが、その言葉には一切嘘は無い。
「しかし問題も有るはずだ」
それを聞いてもアズマは指摘した。そしてそれこそが本題だ。
「お前が相手だとホントに楽だ。たまに人間かどうか疑うが。ま、お前の指摘は当たってる」
ガルグはアズマの指摘を受けて、その問題点を明確にした。
「一つ、攻撃には便利だが都市防衛にはそれほど向いてない。二つ、俺達が持ってる物は敵も所有していると見るべきだ」
共和国連合は広大だ。ガルグが攻撃をしている間、レグスやツリーランドが潰される。それにエルギアたった一機では、一つの都市しか守れない。
飛ぶことの出来る機兵があれば、奇襲も容易く行えるだろう。
「聖帝国の戦力はどうだ? どうせ傀儡で調べているだろう?」
「それが虫共が潰されててな。ま、はっきりしている事もあるが」
ガルグはアズマに聞かれて言った。
「あっちには聖剣が四本ある。しかも全部封印解除済みだ」
ガルグはサラリとアズマに言った。が、非常に重大な問題だ。
連合に有るのは魔剣が二本。それと聖剣が一本だ。しかもその内魔剣一本は、現在封印中である。
それでアズマもピンときたのだろう。本当に勘の良い男である。
「なるほど。そこで私と言うワケか」
「正解。悪いが俺らには、選択肢がそんなに無いんでな。ま、そうでなくてもこの魔剣にはお前以外考えられないが」
「理由は?」
「直接聞いてみろ。今からこの馬鹿の封印を解く」
ガルグは言って魔剣を取り出した。
これはかつてゼイガスに所属したコールが使用していた物である。魔剣ロダロン──片刃の刀剣で、ルナと違い形は単純だ。赤い刀身が特徴であるが、今は鞘でそれすら解らない。
ガルグはその剣を鞘から抜くと、魔法をかけて地面に突き刺した。ロダロンの封印を解いたのだ。すると剣から粒子が流れ出て、例によって人の形を作る。
それはなんと、男の子であった。年齢はおそらく十歳前後。襟付きのシャツに黒ズボンをはき、いかにもお坊ちゃまな雰囲気だ。もっともソレは見た目だけであり、目つきは悪く口も悪いのだが。
「ふぁーあ。なんだオヤジじゃねーか。それと……げ、ルナ姉。あんたまで」
「ロン。口は災いの元ですの」
「スイマセンデシタ。オネエサマ」
ルナにたしなめられて、ロンは言った。それはロダロンの愛称だ。魔剣、聖剣にも立ち位置が有り、ルナは上位に立っているのである。
それはともかくとして問題は、ロンがアズマを主と認めるか。相手は魔剣と呼ばれる剣だ。しかもロダロンは生まれて直ぐに、ガルグを襲撃した前科がある。
「で、このじじいが俺の持ち主か? ほー。こいつは面白い」
しかしロンはアズマを見て笑った。
「お前、ロロドール家の奴じゃねーか」
「だとしたら何か問題か?」
「いいや。そもそもこの外見はお前の祖先を模したモンだしな」
ロンはクルリと回りながら言った。
魔剣の心はガルグの記憶。中でも強い記憶で作られる。それは魔剣ロダロンも同じ事。
「俺はオヤジがロロドールのゴミを、ボコった時の記憶で出来てんだ。いやーあの時はスカッとしたね。ま、実際やったのはオヤジだが」
「なるほど。それで私と言うワケか」
「オヤジも中々粋なことすんな。ま、俺のお眼鏡に適えばだが」
「ふん。ならば試してみるとしよう」
アズマは地面に刺さった剣を、自ら握って引き抜いた。ガルグの指示も無く自分の意思で。実にアズマらしいと言えるだろう。
そんな人間離れしたアズマだ。ロダロンに負けるはずもない。
「だあああ! こいつホントに人間か!?」
ロンはグルグルと回った後に、アズマをビシッと指さして言った。
「肩すかしだな。これで魔剣とは」
「てめえが人間離れしてんだよ! どう言う精神力をしてやがる」
案の定、アズマが勝ったようだ。
しかしここまではまだ前座。この後に本当の試練がある。
「仲良くなってくれてなによりだ。これで儀式の準備は整った」
ガルグは二人に向かって言った。
「アズマ。お前にはホントに悪いが、今日俺の眷属になってもらう」
死の危険がある儀式だが、魔剣があればその心配は無い。それはリリエで実験済みである。
ガルグはショットグラスに血を注ぎ、それをアズマに向けて差し出した。
4
森の中に佇むログハウス。
小屋と言い換えても良いその中で、ガルグは椅子に座って待っていた。横柄に足を組み手に持った、茶色い表紙の本を読みながら。
すると静かであったその部屋に、唐突に、男の声がした。
「ふ。どうやら死に損ねたらしい」
ベッドの上に寝かされたアズマだ。
彼が血を呑んで倒れると、ガルグは彼を小屋に運び入れた。もちろん小屋の横にはエルギアが、いつでも使えるように置いてある。
「そりゃ良かったな。で、体調は?」
「そうだな。若返った気分だよ」
ガルグが聞くとアズマは返事して、体を起こしてベッドから降りた。直ぐに動くのは危険だが、彼の場合は問題無いだろう。
事実グルングルン肩を回し、体のこりを軽くほぐしている。
「見た目はジジイのまんまだけどな」
ガルグはパタンと本を閉じ、アズマに向かって皮肉を言った。
とは言え準備は整った。ならば次は行動を取る番だ。
「それで、私は何をすれば良い?」
「模擬戦だ。ただし宝具同士のな」
ガルグは、最早恒例の、ニヤリとした笑みを浮かべて言った。
第一話終。
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