表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第四章『聖なる者』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/194

四章 第一話 シーン1〜2



 静かに。対象に気付かれず。一撃で。決して逃げられぬよう。

 鬱蒼と茂った森林の中。ボトリと、鳥が落下した。猛禽類の大きめの鳥だ。静かな風の魔法に貫かれ、羽毛には血液が染みている。

 それを仕留めたのはガルグであった。鳥を狙ったのは久しぶりだが、まだ腕は錆び付いていないらしい。

 ガルグがその鳥へと近づくと、後ろからエミリーが息を漏らす。


「ほえー。これが、あの鷹ですかー」

「正確にはその仲間だな。別に珍しい種類でもないが」


 ガルグはエミリーに対して言った。

 エミリーはちゃんと足があるものの、れっきとした人魚の少女である。山や森に住む猛禽類は、彼女にとって珍しいだろう。

 ティアとルナも一緒に居るのだが、特に感想も無いらしい。


「ま、こいつは夕飯にするとして……そろそろエルギアの場所に戻るぞ。アズマもいい加減に来るだろう」


 ガルグは魔法で袋を編むと、その中に鳥を詰め込んだ。

 そして自分で話をした通り、歩いて来た方角に引き返す。


 ===============


 木々が茂る森の中と言っても、機兵が立っていればそれは目立つ。巨大樹の森ならばいざ知らず、機兵の背は普通の木より高い。よってエルギアは背を低く、森の中で片膝を着いていた。迷彩柄の布もかけられて、遠目にはそれと判らないだろう。

 偽魔獣戦争の終結から七日経過した森の中。ガルグ達はエルギアの足下で、エミリー達と人を待っていた。

 そこに魔動バイクの走る音が、近づいてやがて姿を見せる。森の凸凹道を乗り越えて、颯爽と現れたアズマである。


「遅かったな」

「何かと多忙でな。特に最近は仕事が増えた」


 アズマはバイクを止めて降りながら、ガルグに対して皮肉を言った。

 まあ内政をアズマに押しつけて人魚の国に居たのは事実だが。ガルグとて観光や道楽で、海の底に潜ったワケではない。

 だがそれは本題からずれている。無関係と言うワケでもないが。


「それで、何故こんな所に呼んだ?」

「人に聞かせたくない話でね」


 ガルグは聞かれてアズマに言った。


「だがまずはその前に基本からだ」


 どのような話にも順序がある。特に今回の場合にはそうだ。


「海底で何があったかは?」

「報告書は読んだが、信じられん。まるでお伽噺の世界だな」

「だが事実だ。嫌な話だが」


 ガルグの報告書に嘘は無い。人魚の国と偽の蛇魔獣。そしてエルダーの遺跡と巨人。全てガルグが体験したことだ。

 ガルグはその体験に基づいて、今回ここにアズマを呼び出した。


「で、その事実から感じたわけだ。機兵での戦争は過渡期にある」


 ガルグが実感したことを、アズマなら直ぐ理解するだろう。


「今まではなんだかんだと言っても、機兵の数が物を言っていた。だがこれからは機兵の性能と、操縦者の力量が鍵になる。いくら雑魚の機兵を並べても、あっという間に全滅するだけだ」

「エルギアが遺跡を潰したように」

「話が早くてホント助かるわ」


 案の定、理解したらしい。ガルグはアズマを素直に褒めた。

 だが本題にはまだ遠い。


「そこでこのエミリーを主任に据え、機兵研究院を設立した」

「こんにちはアズマさん! エミリーです!」


 ガルグが親指で彼女を指すと、エミリーは笑顔でアズマに言った。


「人魚だな。恐ろしい柔軟さだ」

「は。俺自身がハーフだぞ。使える奴なら魔剣でも使う」

「そうらしいな。そちらも見た顔だ」


 しかしアズマは挨拶を返さず、代わりに別の少女に目を向けた。

 そこに居たのは魔剣のルナである。人魚の国から帰った後も、ガルグはルナを持って歩いていた。ガルグが持っているのも危険だが、他人に渡るよりはずっと良い。

 とは言えそれも本筋とは逸れる。


「あらアズマちゃん。お久しぶりですの」

「覚えられていたとは。驚きだ」


 二人は早速牽制したが、ガルグ的には時間の無駄である。


「はいはい。話を進めるぞー」


 そこでガルグは一つ手を叩き、多少語気を強め二人に言った。

 とは言えグダグダ続けても、アズマとしても飽きてくるだろう。百聞は一見に如かずである。ここらで彼にも見せた方が良い。


「エミリー。アズマを連れて下がってろ。そろそろアレのお披露目会をやる」

「了解しました! さ、アズマさん」


 ガルグがエミリーへと指示すると、彼女はアズマを連れて移動した。

 アレをアズマに見せつけるためには、安全のため距離が必要だ。二十メートル強で十分だが。


「奴はいったい何を始める気だ?」

「ふふふー。それはお楽しみですよー」


 エミリーはアズマに聞かれて笑う。

 一方ガルグはその間、ティアとルナとエルギアに飛び乗った。そしてエルギアを起動させ、機体に掛かった布を吹き飛ばす。


「ほう。件の水中改修機か」

「そうですけど本番はまだですよ」


 エミリーは両拳を握りしめ、腕を組んでいるアズマに言った。

 このエルギアはレグス王国で、更に改修を受けている。


「ティア。例の新型ユニットは?」

「各種ステータス異常なし。直ぐにでも使用できるかと」

「ならやるぞ。若造を驚かす」


 ガルグは言ってエルギアを屈ませ、その直後──縦に跳躍させた。

 垂直方向に。山より高く。だが驚くのはここからだ。エルギアは空中で制止して、遥か下のアズマを見下ろした。

 つまりエルギアは飛んだのだ。


「ご主人様。感触はどうですか?」

「悪く無い。竜になった気分だな」


 ガルグはティアに聞かれて返事した。

 そしてエルギアを動かして、その飛行能力を見せつける。前後だけではなく立体的に。急ターンやバク宙。急降下。ただ飛行できると言うだけでなく、自由自在に空を舞い踊る。

 それを一頻り見せた後、ガルグはエルギアを着陸させた。後は操縦席を飛び降りて、アズマの顔を直接見るだけだ。


「まさかここまでの事が可能とは」


 そのアズマは眉をひそめて言った。

 彼はエミリーが距離を取るほどに、負のオーラをその身に纏っている。

 だがガルグからすればそれで良い。それこそが求めていた反応だ。


「さて、ここからが本題だ」


 ガルグはニヤリと笑って言った。



 クーダーの港より遥か東。帝国と呼ばれる国家があった。急速に勢力を拡大したその名もギルダトール聖帝国。新興国家故に謎が多く、内情を知る者は多くない。

 ここはその帝国の玉座の間。多くの国がそうであるように、王の偉大さを讃える場所だ。そのため天井は遥かに高く、紋章が刻まれた旗が並ぶ。

 しかしこの場には一つだけ、大切な物が欠けていた。それは王が座す玉座その物だ。それがあるべき場所に椅子は無く、代わりに剣が宙に吊ってある。機兵が振るうのも不可能なほど、巨大で幅広な諸刃の剣。その刃には青色の魔力が、輝きがなら線を成している。

挿絵(By みてみん)

 その玉座の間の巨剣の前に、二人が向かい合って立っていた。

 一人は金髪で美形の男。歳は人間を基準にすると、二十代前半と言う所か。

 もう一人は桃色の髪をした、ポニーテールの可愛い女の子。

 二人の共通点はと言えば、剣を持っていることだけだ。


「ゼオとリーネは?」

「見ればわかるでしょ。たぶんここに来る気も無いんじゃない?」


 男に聞かれ少女は返事した。


「彼等には自覚が足りないようだ。マリー。君も不満があるのでは?」

「ま、それが個性って物だから。ラファ。私達だってそうでしょう?」


 男の名前はラファと言い、少女の名はマリーであった。

 しかしそれよりも問題は、二人が人ではないと言う事だ。


「状況を考えて貰おうか。彼方には父上が居る上に、ルナまでも手なずけているらしい」

「それがホントなら一大事だけど、ルナお姉様が人に着くかしら」


 マリーは右手を腰に当て、斜に構えながらラファへと返す。

 ルナがお姉様だと言う事は、二人は聖剣だと言う事だ。それ故に聖帝国なのである。


「僕もにわかには信じられないが、帝剣の導きは正確だ。事実傀儡を多数補足した」


 ラファは言って巨大な剣を見た。

 宙に吊されたそれは今もって、青い魔力を放ち続けている。それは線となり幾何学的に、柄から切っ先に流れ落ちていく。


「まあそうね。帝剣が言うのなら」


 マリーもそれを見上げて同意した。


四章アップロード開始です。

感想評価お待ちしております。三章までの物でも良いですよ。

ご批判も含めお気軽にどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ