三章 第九話 シーン3〜4
3
ガルグは、夢の中に居た。
激しく叩きつける雨の中。ガルグの後ろに転がる死体。人間の騎士達の死体である。
もちろん正当防衛であるが、そんなことはどうでも良いことだ。
「明晰夢か。まったく、嫌になる」
夢の中でガルグは呟くと、木にもたれ掛かり傷を治療した。ガルグの体に着けられた傷を。
明晰夢とは夢が夢なのだと自覚することの出来る、夢である。そのためストーリーの中でなら、文句を言うくらいの事は出来る。
「人の傷なんて治療するからだ」
ガルグは力を抜いて呟いた。人の怪我を治そうとする度に、ガルグは毎度こんな夢を見る。
自分は他人を癒やせても、他人は自分を癒やさないのだと。ガルグ自身に自覚させるためだ。
そうやって人を信じないことが、ガルグにとって生きる術だった。
4
体は鉛よりも重く沈み、頭もそれ以外も酷く痛む。だがどうやら生きてはいるらしい。
ガルグが目を開けると視界には、美しい泡のドームが見えた。ガルグは仰向けになっているので、どうやら今屋外にいるらしい。だが肌に触れるふかふか具合は、布団やベッドのソレである。もし屋外にベッドを設置して、寝かせたとしたら意味がわからない。
しかし実際にそうだった。ガルグが何かの気配を感じ、右を向くとレイレリアが見えた。猫のように丸まってはいるが、呼吸はしているので生きている。その横には御神体もあるので、どうやら治療してそのままらしい。
なお左にはティアとルナが居るが、敢えてそちらを見るのは止めておく。
レイレリアの治療を行って、どれだけの時が経ったのか。ガルグには想像もつかないが、気絶してここに寝かされたらしい。
と、ガルグが目を覚ました事に──レイレリアも目を開けて気が付いた。
『あらガルグ。おはようございます』
「お前も、元気そうで何よりだ」
ガルグは早速皮肉を言った。しかし情報は必要だ。
「あれから、具体的にどうなった?」
『魔獣部隊は全て倒しました。私もこの通り、生きています。ただ、犠牲は出てしまいましたが』
「それが戦争だ。エルギアは?」
『エミリーが引き摺っていきました。損傷が酷かったようですから』
「無茶させたからな。仕方ない」
ガルグはレイに聞いて納得した。ここに寝かされた理由は謎だが、それはまあ、どうでも良いだろう。
そしてガルグは泡のドームを見て、再び静かに目を閉じた。
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