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装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第三章『青と赤』

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三章 第九話 シーン1〜2



 損傷を受けたエルギアが、海中をゆっくりと進んで行く。目指すは人魚の国。泡のドーム。まだそれが存在していればだが。

 なんとエルギアのモニターに、その泡のドームが映し出された。作戦を立てたのはガルグだが、成功したとは驚きだ。


「守り切ったか。信じられねーな」


 作戦成功率は三割か、それ以下だとガルグは踏んでいた。

 無論、奇跡と言うほどではないが中々に僥倖な結果である。


「ガルグ様ー!」

「エミリーか。お前も元気そうで何よりだ」


 そこでとろとろと進むエルギアを、一機の海機兵が向かえに来た。声からするとおそらくエミリーだ。


「そうですけど! そうじゃないんですー!」


 そのエミリーは涙声で言った。


「どうした? ドームは無事みたいだが」

「とにかく来てください! 今すぐに!」


 そして彼女の機兵がエルギアを、掴むと高速で引っ張って行く。

 だがガルグももうふらふらで、抵抗して離れる余裕も無い。それに相手があのエミリーならば、おそらく危険は無いだろう。

 そんな訳でボロボロのエルギアは海の中を引かれ、進んで行った。



 ガルグ達の乗り込んだエルギアがエミリーに連れてこられた先は──御神体のある広場であった。だが目的は御神体ではなく、その護りを担っていたレイだ。


「こいつはまた……酷くやられたな」


 到着したガルグの眼前には、血塗れのレイが横たわっていた。まだ辛うじて息はあるようだが、この瞬間死んでも不思議は無い。

 リリエのメルフィリアは無事なので、レイだけ相当無茶したのだろう。


「ガルグ様。申し訳ありません。私では守り切れませんでした」


 そのリリエがガルグに声を掛けた。

 だが彼女に非が有るわけではない。作戦を立てたのはガルグなのだ。


「ガルグ様! 何とかしてください!」


 エミリーがガルグへと請うて来る。だが例えそれが無かったとしても、ガルグは彼女を助けただろう。

 ガルグはエルギアをレイの元へと、なるべく急いで歩かせた。するとより状況が理解出来る。

 見れば見るほど酷い傷である。果たしてこれをガルグに治せるか。


「生憎俺は医者じゃないんだがな。ティア。体構造をスキャンしろ。こっちで受けた傷を修復する」

「魔法で生命力を高めては?」

「それでどうにか成るならそうしてる。魔獣の体組織は特別だ。頑丈な分、傷も治りづらい。その上このデカさに、深い傷だ。それも同時にやるから早くしろ」

「わかりました。今すぐ始めます」


 ガルグが言うとティアがスキャンした。

 幸い木っ端微塵ではないので、失われた場所も類推できる。


「よし。次はルナ。お前も補佐をしろ。お前は木属性もあるだろう」

「お父様。私は魔剣ですの」

「鉄くずにしてやっても良いんだが?」

「そう言うお父様も素敵ですの」


 ルナは言ったが協力するらしい。

 後は魔法を発動するだけだ。


「ティア。まず魔力融合をやるぞ」

「はい。わかりました、ご主人様」

「「魔力融合」」


 魔力融合で、エルギアの魔力を増大させて──


「ガルグ流・竜体、蘇生治療」


 杖から魔法の力を放つ。すると虹色の光に包まれ、レイの体が徐々に治っていく。と、言っても本当に徐々にだが。


「ち。これでまだ魔力が足りないか」

「ですが、ご主人様。これ以上は」

「エルギアが壊れるっつーんだろ」


 ティアに指摘されガルグはキレた。

 ガルグとてそんな事は知っている。だが一応この竜は盟友だ。

 その盟友がゆっくり目を開けた。傷が多少は癒えたからなのか。最後の力を振り絞ったのか。少し意識が覚醒したらしい。


『ああガルグ。戻って来たのですね。人魚達は皆、無事ですか?』

「悪いが今お前で手一杯だ。それを調べてる暇はねえ」

『では人魚を優先してください』

「断る。つーか怪我人は黙れ」


 ガルグはレイに言われてまたキレた。

 レイレリア本人もおそらくは、傷の深さを知っているのだろう。だが助けようとしているのだから、せめて大人しくしてほしい物だ。

 などとガルグが考えて居た時──巨大な貝が急に蓋を開けた。御神体を守っている貝だ。ガルグは何もしていないはずだが、姿を見せて魔力を解き放つ。


「御神体も力を貸すらしい。まったく、お前は愛されてるな」


 エルギアは左手からそれを得て、より治療の魔法を強化する。しかし問題はそのエルギアだ。


「ご主人様。言いたくありませんが」

「構わん。壊れるまで酷使する」

「わかりました。出来るだけ補佐します」

「は。それでこそ俺の精霊だ」


 ガルグは言って魔法を行使する。

 極限まで増大した魔力がエルギアの中を駆け巡り、機体各部の回路やモニターが耐えられず弾け、火花を散らす。

 そして──巨大な魔力の光が爆発して視界を遮った。


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