三章 第九話 シーン1〜2
1
損傷を受けたエルギアが、海中をゆっくりと進んで行く。目指すは人魚の国。泡のドーム。まだそれが存在していればだが。
なんとエルギアのモニターに、その泡のドームが映し出された。作戦を立てたのはガルグだが、成功したとは驚きだ。
「守り切ったか。信じられねーな」
作戦成功率は三割か、それ以下だとガルグは踏んでいた。
無論、奇跡と言うほどではないが中々に僥倖な結果である。
「ガルグ様ー!」
「エミリーか。お前も元気そうで何よりだ」
そこでとろとろと進むエルギアを、一機の海機兵が向かえに来た。声からするとおそらくエミリーだ。
「そうですけど! そうじゃないんですー!」
そのエミリーは涙声で言った。
「どうした? ドームは無事みたいだが」
「とにかく来てください! 今すぐに!」
そして彼女の機兵がエルギアを、掴むと高速で引っ張って行く。
だがガルグももうふらふらで、抵抗して離れる余裕も無い。それに相手があのエミリーならば、おそらく危険は無いだろう。
そんな訳でボロボロのエルギアは海の中を引かれ、進んで行った。
2
ガルグ達の乗り込んだエルギアがエミリーに連れてこられた先は──御神体のある広場であった。だが目的は御神体ではなく、その護りを担っていたレイだ。
「こいつはまた……酷くやられたな」
到着したガルグの眼前には、血塗れのレイが横たわっていた。まだ辛うじて息はあるようだが、この瞬間死んでも不思議は無い。
リリエのメルフィリアは無事なので、レイだけ相当無茶したのだろう。
「ガルグ様。申し訳ありません。私では守り切れませんでした」
そのリリエがガルグに声を掛けた。
だが彼女に非が有るわけではない。作戦を立てたのはガルグなのだ。
「ガルグ様! 何とかしてください!」
エミリーがガルグへと請うて来る。だが例えそれが無かったとしても、ガルグは彼女を助けただろう。
ガルグはエルギアをレイの元へと、なるべく急いで歩かせた。するとより状況が理解出来る。
見れば見るほど酷い傷である。果たしてこれをガルグに治せるか。
「生憎俺は医者じゃないんだがな。ティア。体構造をスキャンしろ。こっちで受けた傷を修復する」
「魔法で生命力を高めては?」
「それでどうにか成るならそうしてる。魔獣の体組織は特別だ。頑丈な分、傷も治りづらい。その上このデカさに、深い傷だ。それも同時にやるから早くしろ」
「わかりました。今すぐ始めます」
ガルグが言うとティアがスキャンした。
幸い木っ端微塵ではないので、失われた場所も類推できる。
「よし。次はルナ。お前も補佐をしろ。お前は木属性もあるだろう」
「お父様。私は魔剣ですの」
「鉄くずにしてやっても良いんだが?」
「そう言うお父様も素敵ですの」
ルナは言ったが協力するらしい。
後は魔法を発動するだけだ。
「ティア。まず魔力融合をやるぞ」
「はい。わかりました、ご主人様」
「「魔力融合」」
魔力融合で、エルギアの魔力を増大させて──
「ガルグ流・竜体、蘇生治療」
杖から魔法の力を放つ。すると虹色の光に包まれ、レイの体が徐々に治っていく。と、言っても本当に徐々にだが。
「ち。これでまだ魔力が足りないか」
「ですが、ご主人様。これ以上は」
「エルギアが壊れるっつーんだろ」
ティアに指摘されガルグはキレた。
ガルグとてそんな事は知っている。だが一応この竜は盟友だ。
その盟友がゆっくり目を開けた。傷が多少は癒えたからなのか。最後の力を振り絞ったのか。少し意識が覚醒したらしい。
『ああガルグ。戻って来たのですね。人魚達は皆、無事ですか?』
「悪いが今お前で手一杯だ。それを調べてる暇はねえ」
『では人魚を優先してください』
「断る。つーか怪我人は黙れ」
ガルグはレイに言われてまたキレた。
レイレリア本人もおそらくは、傷の深さを知っているのだろう。だが助けようとしているのだから、せめて大人しくしてほしい物だ。
などとガルグが考えて居た時──巨大な貝が急に蓋を開けた。御神体を守っている貝だ。ガルグは何もしていないはずだが、姿を見せて魔力を解き放つ。
「御神体も力を貸すらしい。まったく、お前は愛されてるな」
エルギアは左手からそれを得て、より治療の魔法を強化する。しかし問題はそのエルギアだ。
「ご主人様。言いたくありませんが」
「構わん。壊れるまで酷使する」
「わかりました。出来るだけ補佐します」
「は。それでこそ俺の精霊だ」
ガルグは言って魔法を行使する。
極限まで増大した魔力がエルギアの中を駆け巡り、機体各部の回路やモニターが耐えられず弾け、火花を散らす。
そして──巨大な魔力の光が爆発して視界を遮った。
感想評価お待ちしております。




