三章 第八話 シーン3〜4
3
ガルグのエルギアと巨大魔獣は、海中での死闘を演じていた。
魔獣の鎧の一部には、半球状の水晶が着けられ──そこから水の渦が次々と、エルギアに向けて発射されてくる。
ガルグはそれを避けて、切り払い、防ぎながら魔獣を斬り付ける。エルギアの武器は杖から伸びた、闇属性の魔力の大剣だ。これなら接近せずとも斬れるし、攻撃に隙を作ることも無い。
巨大な蛇と虹色のオーラを、纏った機兵が舞い踊る。
しかしガルグは蛇魔獣と違い、まともな知能を持っている。
「ち。化け物め」
「お父様もですの」
「ちゃちゃを入れるな。だがこれで……」
ガルグは巨大魔獣の首元の、鎧を集中して破壊した。まるで首輪のようにリング状に、巨大魔獣は傷を受けている。
「ティア。一撃で奴をぶった切る。一瞬だけ出力を上げてくれ」
「わかりました。息を合わせます」
ガルグはティアの返事を受け止めて、エルギアの軌道に変化をつけた。
一度巨大魔獣の顔の前に、躍り出て巨大魔獣へと向かう。だがガルグの狙いは顔ではない。
「これでお前の顔も見納めだ」
エルギアはその頭を通り過ぎ、魔力の剣を巨大化し──
「死刑執行・回転斬首」
回転しながら首を斬り裂いた。鎧を剥いだ部分を確実に、一撃の下に斬り捨てる。巨大魔獣の首を切り落とし、化け物の息の根を止めるのだ。
実際巨大魔獣の胴体は、頭と完全に切り分けられた。
「は。どうだ」
しかしその瞬間に、ガルグの心にも隙が生まれた。
「が!?」
エルギアの背中方向から、巨大魔獣の尻尾が打ち付けた。尻尾と言えば聞こえは良いのだが、化け物サイズのソレである。例えるならエルギアがハエであり、尻尾はハエ叩きのような物だ。
だが頭を落とされた生き物が、そう長くは動けるはずもない。ガルグ達は戦いに勝利した。少なくともこの場所の死闘には。
「最後の最後で抜かったか。ティア。機体の損傷状況は?」
「背部ユニット中破。使用不能。更にエルギア機体内部にも、多くの損傷が生じています」
「無理をしすぎたな。仕事はしたが」
どうやらガルグはここまでらしい。
「ティア。魔力融合を解除する。後はエルギアを修復しながら、えっちらおっちら帰投する。ま、帰る場所が残ってればだが」
ガルグは、言って溜息をついた。
4
巨大魔獣が首を斬られた頃。激戦はまだ継続されていた。
人魚の国の、泡のドームの外。魔獣の死体と壊れた機兵が既にいくつも浮かぶ地獄絵図。そんな中でマユはミュレを操り、まだ戦いを継続させていた。
ドームに体当たりをする魔獣に、ミュレは果敢にも突っ込んでいく。
「貴方は──絶対に通さない!」
周囲の傀儡機兵は全滅し、魔獣とミュレは一対一である。経験からはミュレの方が不利だ。
しかし指をくわえてみているなど、マユには到底無理だった。
武器の三叉槍を突き刺すために、魔獣の側面から接近する。だが一歩、ミュレが遅かった。
「しま……!」
泡のドームが一部破られ、魔獣と周囲の水が落ちていく。ミュレも当然そこに吸い込まれた。
ドームの壁は直ぐ回復するが、ミュレは水中に戻れない。海機兵が空を飛べない以上、ドームの上への復帰は無理だ。
「なら、せめて貴方だけでも潰す!」
マユは落下するミュレを操って、先に落ちた蛇魔獣を狙った。落下に伴う速度を使い、三叉槍で蛇魔獣を穿つ。
だがその分速度は落ちないまま、ミュレは街の地面に激突した。
幸い魔獣は倒せたが、内部のマユも衝撃を受けた。そもそも既に限界近くまで戦い続けた後である。既に精神は限界で、その上何処か怪我もしたらしい。マユの右の視界が赤くなり、血が出たことをマユに伝えている。
「私、まだ、戦わなくちゃ……」
それでもマユは努力したのだが、その精神は闇に吸い込まれた。
感想評価お待ちしております。




