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装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第三章『青と赤』

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三章 第五話 シーン1〜2



 人魚の国の御神体。巨大な真珠の見下ろす前で、ガルグは二人のティアを見た。服装も含めて全く同じ。ティアが向き合って立っている。

 まるでティアが複製されたようだ。横に居るマユも驚いて、その不思議な景色を眺めている。

 ティアにいったい何が起きたのか。それは聞いてみなければ分からない。


「ティア。無事か?」


 そこでガルグは聞いた。


「ご主人様。問題ありません」


 すると一人のティアが返事をする。表情が変わらない点を含め、本人の言うとおり無事らしい。

 だが問題はもう一人のティアだ。


 ガルグから見て左に居るティアは、返事をせずに周囲を見渡した。


「貴方エルフ? いえ、このオーラ。ハーフエルフ!? 実在したなんて!」


 そしてガルグの方に目を向けると、驚いた様子でガルグに言った。

 こちらのティアは明らかにおかしい。もっと言えばティアなのかも怪しい。


「そう言うお前は何者だ?」

「貴方に答える義理はありません……!」


 その偽ティアは返答を拒否すると、ガルグの前から逃げ出した。

 いや逃げ出そうとして転けた。体が上手く動かせないらしい。ガルグが彼女に近づくと、彼女はガルグを仰ぎ見た。ティアとは思えないキツい視線で。

 偽ティアはガルグを敵視している。


「安心しろ。危害は加えない。俺はただ話を聞きたいだけだ」

「誇り高きレイランドの騎士は、いかなる尋問にも屈しません!」


 取り付く島も無いとはこの事か。だが彼女の発した言葉から、ガルグは何が起きたか気が付いた。


「お前もしかしてアズマの孫か? レイランドならとっくに滅びたぞ」


 ガルグは彼女に向かって言った。

 前にガルグがした予測によれば、ティアは死者の魂で創られた。その死者とはエルフに殺された──アズマの孫の可能性が高い。

 つまり今回の現象は、魂が分離したと言う事か。

 しかし一方のティアは元のまま。偽ティアはどこか動きが鈍い。


「馴れ馴れしくしないで! ハーフエルフ! 貴方の嘘は騎士には通じない!」


 ガルグはその偽ティアに罵倒され、どうしたものかと頭を抱えた。



 もう何度目か分からないのだが、ガルグ達は神殿にやってきた。ティアにいったい何が起きたのか、レイレリアに問い糾すためである。

 尚、偽ティアも何とか説得しこの神殿へと連れてきた。まだガルグを警戒しているが、あそこに置きっ放しよりはマシだ。それに彼女自身も薄々は、異変に気づいて居るらしい。


「おいレイレリア。これを説明しろ」


 と、言うワケでガルグは問い糾す。


「因みに右の無表情がティア。左の目つき悪いのがセシリア。御神体に行ったらこうなった」


 一応状況の説明付きだ。必要無いかも知れないが。


『無事上手く行ったようですね』


 実際、レイはそれを聞いて言った。

 だがガルグは堪ったものではない。


「何が上手く行っただ。ぶっ殺すぞ」

『落ち着いて。お話ししますから』


 するとレイが解説し始めた。


『ティアがこの世に生まれ落ちたとき、最初は赤子のような物でした。自意識や感情は殆ど無く、有るのは与えられた使命だけ。しかし貴方と共に過ごす内、彼女にも感情が生まれました』


 レイによると今現在のティアは『感情豊か』と言うことらしい。ガルグにはとてもそうは見えないが。


『それに伴い無意識下に眠る、セシリアが邪魔になってきたのです。そこで御神体は魂を分け、二人の違う精霊としました。この処置はむしろティアを守るもの。彼女達に危険はありません』


 レイはすらすらとガルグに言った。

 彼女がガルグ達に嘘をつく。そんな必要は無いはずだ。それに話の筋は通っている。一応はと言う注釈付きだが。

 しかしガルグにはまだ疑問がある。


「そもそもその御神体とはなんだ?」


 ガルグはレイに質問を重ねた。ティアを生み出したのは大聖樹だ。それを何故御神体が分けるのか。


『人魚の国に於ける御神体。それはエルフ・コロニーの大聖樹。二つは形が違っても、本質的に同じ存在です』


 レイはその疑問にも回答した。


『大地や海の下にはこの星の、強大な魔力が流れています。その吹き出す場所がアウル・スポット。大聖樹や御神体がそれです』

「つまり同じ星の意思ってことか?」

『確実とは言えませんが、そうです』


 確かにエルフと人魚とは、生態的に似ている面もある。エルフの多くは聖樹から生まれ、人魚は御神体から生まれ出る。

 ──と、そこでセシリアがキレだした。


「もう良い。どうせ理解出来ません。それより私はどうなるんですか?」


 事情を知らないセシリアにとって、今の話はちんぷんかんぷんだ。それより祖国に帰りたい。その気持ちはガルグも理解出来る。


『貴方が望むのなら、直ぐにでも。ガルグが地上に送り届けます』

「なんでも俺任せだな。まあ良いが。俺もアズマに聞きたい事がある」


 ガルグはレイに敢えて同意した。

 もしセシリアがアズマの孫ならば、彼がそれを証明するだろう。今はそれが最優先事項だ。アズマはクーダーに居るはずなので、海を進めば半日かからない。


「つーわけでお前ら、さっさと行くぞ」


 ガルグは言って直ぐに歩き出した。


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