表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第三章『青と赤』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/194

三章 第三話 シーン5〜6



 人魚の国からはかなり離れた、水面に近い海の中。揺れる美しい光のベールに、機兵の装甲が照らされている。海中で向かい合う二機の機兵。一機はガルグのエルギアで、もう一機はマユの機兵のミュレだ。

 ガルグとマユがこの場所に来たのは、無論決闘をするためではない。


「エミリー。データは取れてるな?」

「はい。ティア様からばっちりと!」


 ガルグは通信魔法を使って、エミリーに大事な質問をした。

 これからガルグはエルギアで、訓練とデータ取りをするわけだ。


「ならさっさと始めるぞ。おいマユ」

「私は貴方の手下じゃないの。気軽に命令しないでくれない?」

「確かに。しかし俺の性分だ。気にするなとは言わんが、気にするな」


 思えばガルグが指示を出すなどと、随分と出世したものである。とは言えガルグが偉そうなのは、今に始まったことではないが。

 取り合えず訓練はすべきだろう。無論マユの指導を受けてである。


「で、具体的にどうすればいい?」

「そうね。じゃあその場で旋回して。取り合えず好きな方向でいいわ」

「了解。まずは慣らし運転か」


 と、言うワケでガルグは指示通りエルギアを色々旋回させた。エミリーの付けた装置を用い、海水をコントロールする。言うほど簡単な物でも無いが、エルギアは右に左に回る。どうやら調子は悪くないらしい。

 しかしこれはまだ序の口だ。


「オーケー。じゃあ次は元に戻って、精密動作の訓練をするわ。上下左右にそれぞれ九十度、旋回して止めて直ぐに戻すの。出来るだけ正確にお願いね」

「理に適ってるな。了解だ」


 ガルグはマユの指示を遂行する。とは言え完全には難しい。何も支えの無い海の中では、停止するだけでも難しいのだ。しかしそれが素早く出来なければ、戦闘には耐えられないだろう。


 ===============


 それからもマユの指示を受け、ガルグは訓練し続けた。移動しながらの旋回に、高速移動からの急停止。

 ガルグも不慣れなりに頑張ると、何とか形になってきた。まあ夕方までかかってしまい、海の中も赤くなってはいるが。


「残念だけど筋は良さそうね」

「何が残念なのかわからないが、確かにこれなら闘れそうだ。一応お前にも感謝してやる」

「一応じゃなくちゃんとしなさいよ」


 ガルグとマユは皮肉を言い合った。だが仲が悪いと言う事はない。二人はどうにも馬が合う。理由は何故だか不明だが。

 そんな二人の元に三度目の──蛇魔獣サーペントが現れる。


「ご主人様。魔力体、接近」

「例の魔獣か?」

「おそらくはそうかと」


 ガルグの横に浮かぶティアが言った。

 この二人が揃って海に居ると高確率で奴が来るらしい。とは言え今は対応策がある。


「腕試しの相手に丁度良いな」

「そうね。今ならやれるかも。誰かさんが邪魔さえしなければ」

「お前も最初は逃げてただろうが」


 いつかは殺らねばならない相手だ。なら今戦うのも悪くない。

 近くには守るべき拠点も無く、ここでなら自由に応戦できる。


「じゃあ待ちましょう。あの蛇が来るまで」


 マユがまだ敵影も見られない、海の中を見てガルグに言った。



 それは海中を悠々と、泳いでガルグ達に接近した。鎧を纏った魔獣サーペント。蛇のような体をうねらせて、視認できる距離まで接近する。

 だが今回は二機の機兵がある。エルギアとミュレが協力すれば、撃破することも可能なはずだ。

 などとガルグが考えて居ると、サーペントが魔法を繰り出した。

 まだかなり距離のある状態から、回転する水の波動を放つ。それは魔獣の口から吐き出され、躱した二機の横を通過する。


「先制パンチか。悪くない」

「言ってないでこっちも反撃よ」


 マユが言うと魔法を繰り出した。


「海閃刃!」


 機兵ミュレの装備は鋭い穂先の三叉槍である。ミュレがそれを敵に向かって振ると、その軌跡が光って飛んで行く。地上でエルフが使うのと同じ、斬撃波を飛ばして斬る魔法だ。

 だがそれはサーペントに躱された。とは言え、発想は悪くない。


「その魔法良いな。パクらせてもらう」


 ガルグは言うとエルギアを動かし、剣を胸の前へと構えさせた。しかし同じ魔法を撃つだけなら、結果も同じになるだろう。

 故にガルグは少し工夫した。


「ガルグ流・海閃刃乱れ打ち」


 エルギアの側に次々と、水の刃が現れ飛んでいく。ミュレの物よりも小ぶりだが、その分連射が利く魔法である。それを散らして敵に発射すれば、いくら速くとも回避不可能だ。

 事実それらはサーペントに当たり、鎧に傷を付け肌を切り裂く。しかし相手も腐っても魔獣だ。その程度で倒せるはずもない。


「へえ。やるじゃない」

「そう思ってるなら、さっさとトドメを刺してくれ。ただでさえ訓練で疲れてんだ」

「ん。了解。じゃあ凄いの行くわ」


 マユが言われて詠唱を始めた。


「海神の持つ嵐を呼ぶ槍よ、渦を巻きその支配力を示せ」


 すると海の魔力がミュレの槍に、集まり旋回し始める。その魔法を完成させるために、詠唱後も魔力を溜めて行く。

 そして、どうやら完成したらしい。


「いいわガルグ。奴の動きを止めて」

「簡単に言うな。たく。誘導する」


 ガルグはマユに言われて仕方なく、海水の刃を分散させた。わざと数を減らし動きを読んで、魔獣に反撃のチャンスを作る。

 すると案の定魔獣の口から、水の魔力の渦が放たれる。非常に危険な手段だが、確実に当たるのはここだけだ。


「大海を穿て! 海神槍!」


 ミュレの魔法とサーペントの魔法。二つが同時に放たれる。

 だがその威力の差は明かだ。渦を真っ正面から貫いて、ミュレの槍が魔獣の口に入る。そしてそのまま体内を破壊し、鎧を突き破って外に出る。

 いかに魔獣が強力と言えども、致命傷に十分なダメージだ。サーペントは血を吹き出しながら、その場で暴れ──そして停止する。

 ぷかりと浮かんだその体から、最早力は微塵も感じない。


「どう? ご要望通りでしょ」

「ああ。久しぶりに良い狩りが出来た」


 ガルグは機嫌の良いマユに言った。

 この戦いでガルグが得たものは、人魚の安寧には留まらない。


「じゃ、この死体を下まで運ぶぞ」


 これで魔獣の鎧を入手した。解析も対策も可能となる。

 ガルグは言うとエルギアを操り、サーペントの死体を掴ませた。


第三話終。

今回はちょっと長い話でしたね。

感想評価お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ