三章 第三話 シーン3〜4
3
舞台は戻って人魚の神殿。
再び大きさの戻ったレイが、ガルグに敵の詳細を話した。
「なるほど。あの魔獣の背後には、ウミトカゲ共が居るわけか」
ガルグは腕を組んでレイに言った。
するとティアがガルグに聞いてくる。
「申し訳ありません。ご主人様。ウミトカゲとはいったいなんですか?」
「あー割かし珍しい手合いだし、お前は知らなくても無理ないか。奴らは海の底に生息する、一応は人型の生物だ。まあ名前通りトカゲみたいだが。分類的には魔族と魔物、その中間に位置する奴らだな」
と言う訳でガルグは解説した。だがガルグ自身疑義が有る。
「しかし奴らにアレが作れるか? こう言っちゃなんだが、猿レベルだぞ」
『ええ。ですから更にその背後には、何者かが居ると思っています』
「なるほど。そいつが奴らを使い、魔獣に鎧を装備したわけか」
『あくまでも私の推測ですが。おそらく間違いないでしょう』
「つまりその黒幕が問題だな」
ガルグは得心して言った。
何者かがウミトカゲに技術を、融通してやったと言う事だ。しかも知能の低いその種族に。
「誰にせよまた手間のかかることを……」
問題は黒幕の意図である。そもそもあの鎧はなんなのか。
『ガルグ。貴方は機兵の技術がどこから来たか知っているのですか?』
「まあ俺なりに仮説は立てている」
ガルグはレイに問われそう返した。つまり知らないと言うことだ。
より正確に表現するのなら発祥を知る者は誰も居ない。不思議に思えるかも知れないが、歴史上では良く見られる事だ。
それにガルグはその起源について、一応仮説は立てている。
「一つはエルダー起源説。エルダーは絶滅した種族だが、遺跡は各地に残ってるからな。何処かの地域で研究が進み、再現された可能性はある」
『エルダー。古き賢論種』
「その文明は栄華を極めたが、ある時期に滅び姿を消した。今や地下に埋まっている遺跡が、ちょいちょい残っているくらいだな」
ガルグは二つの説を提示した。
「もう一つは巨人体起源説。これは機兵が巨人の肉体を再現したものだと言う説だな。そもそも機兵の構造からして、人型というのは特徴的だ。あの蛇魔獣は別として、どこに行っても二足歩行だしな」
どちらも可能性の高い説だ。だが同時に確証も得られない。
しかしそれよりも気になることは、何故レイがそれを聞いたかだ。
「で、それが奴と何か関係が?」
『私はこの時代のうねりには、何か裏があると感じています。機兵技術はその中心であり、重要なファクターと言えるでしょう』
レイが、ガルグを見つめて言った。
「奴らをぶっ殺して調べれば、その大元に少し近づけると?」
『ええ。私はそう、考えています』
これでようやく考えがわかった。ガルグもその意見には賛成だ。
それにどのみち人魚を守るには、あの魔獣を倒す必要が有る。
「具体的に俺はどうすればいい?」
『まず機兵の製造所へと向かい、機兵を改良して来てください。あの魔獣に対抗するためには、応急改造では足りません』
「至れり尽くせりだな。有り難いが」
『残りの話はまた明日。私も少し疲れましたから』
レイは体を沈めながら言った。儀式で魔力を消費したからか、少々お疲れムードのようだ。
ガルグはそれを見るとただ無言で、レイに背を向けて立ち去った。
4
ガルグはレイに指示を受けた通り、二度目の製造所にやって来た。監視役のマユと、ティアも一緒だ。どうやらマユはガルグが行くところ、どこへでも着いて来るつもりらしい。とは言え案内役として、役に立っている面もある。
と、そんなガルグ達一行に、走り寄ってきた人魚が一人。ゆるふわな髪をリボンで結んだ、可愛らしい人魚の少女である。
「ガルグ様! ようこそおいでませ! メカとロボと浪漫の殿堂へ!」
「エミリー。相変わらずのテンションね。でもこの男に様は要らないわ」
やたらハイテンションのその人魚に、マユが進み出て対処した。彼女が言った後半の部分はまさにガルグが言いたかったことだ。エミリーと言う人魚には悪いが、尊敬される謂われなどは無い。
「で、そのガルグはなにやってるわけ?」
「ようやくまともな感性の奴に、出会えて感動してるんだ」
ガルグは一瞬じーんとなった。まあ最近おかしかっただけだが。こう言う不遜な態度こそ、ガルグが慣れ親しんだ物である。
「でもレイ様と盟約の……もがが!?」
「それより設計図を持ってきて。地上に出る前に頼んだ奴よ」
マユがエミリーの口を塞いだが、ガルグは敢えて無視することにした。それが平穏な生活のためだ。
と、言う訳で執務室に入り、エミリーが取り出した紙を見た。
机に広げられたそれを見て、ガルグもそれが何か理解する。
「こいつはエルギアの設計図だな。それも各部に改良が見られる」
「そうです! さすがガルグ様! これこそエルギア・マークツー、水中対応改修型です!」
ガルグが言うとエミリーが答えた。どうやら設計図を書いたのは、他ならぬエミリーのようである。脳味噌に蟹味噌を詰め込んだ、ハイテンション人魚ではないらしい。
「なるほど。小型の操作ユニットで各方向に旋回するワケか」
「さすがガルグ様! その通りです! ある程度の推進も出来ますが、メインは格闘と旋回ですね。ただガルグ様は人魚じゃないので、ある程度修練が必要かと」
「その点は一応覚悟してるが、後でもパーツ調整は出来るか?」
「エルギアの性質を考えると、おそらくは可能だと思います。ただ大きな改修ともなると、取り出さなければ駄目かもですけど」
ガルグとエミリーとは意外にも、会話がガッチリと噛み合っていた。さすがに鍛冶師とエンジニアである。お互いメカには知識があるのだ。
「はー。ガルグ様最高ですよー。もっと色々語り合いたいです」
コレさえ無ければ最高なのだが。とは言え高望みという物か。実際彼女は優秀だ。ガルグも安心して任せられる。
「生憎今は急いでいるんでな。このパーツ、今すぐ埋め込めるか?」
「はい! 少々お待ちくださいね!」
ガルグが言うとエミリーは、トテテテと何処かに走って行った。
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