三章 第三話 シーン1〜2
1
ガルグが地上に戻った翌日。まだ太陽が真上に昇る前。ガルグはティアを連れてマユと共に、約束通り海底に戻った。因みにルルはアズマとお留守番。人魚達が軽くトラウマらしい。
とにかくガルグは神殿に入り、白竜レイレリアの前に居た。
「俺からの条件は提示した。レイレリア、次はお前の番だ」
ガルグはそのレイに向かって言った。
その条件は実に明確だ。レアメタルの探索、採掘許可。それと平和条約の締結だ。鎖国的な人魚の質を見て、それ以上は敢えては望まない。
『それでは私からも条件を。可能な限りこの人魚の国を、いえ人魚を護って欲しいのです』
「まあそんなこったろうと思ったよ」
一方レイの出した条件は、ガルグの予想した通りであった。
「あの魔獣──奴が原因か?」
『当然、それもありますが、時代は動き出しつつあるのです』
レイはガルグに聞かれ話しだした。
『機兵技術の急速な伝播。魔獣のこれまでにはない動き。貴方自身の存在も含めて、全て繋がっていると見ています』
「他は良いとして、なんでこの俺が?」
『貴方は故郷に舞い戻り、瞬く間に連合を打ち立てた。命を狙われるリスクも無視し、迫害したエルフを救済した』
レイがガルグに指摘した。
反論したいところではあるが、藪をつついて蛇を出したくない。
「よく調べてるな。ま、良いだろう。お前の条件、呑んでやる」
ガルグはレイの顔を見上げ言った。これでこの取引は成立だ。
『では早速儀式を始めましょう』
「具体的に俺はどうすれば良い?」
『なにもする必要はありません。儀式は竜の決意を示す物』
「じゃあなにも変わらないと言うことか?」
『いいえ。私はこの盟約で、より強い力を得る事になる。竜の力は心で変わる物。それ以上言いようがないのですが』
「ま、俺に何も起こらないのなら、俺としては特に言うこともない」
『それでは儀式を始めます』
レイレリアが言うと空気の中の、魔力が一気に濃密になった。そして神殿が暗くなり、宙に緑の文字が舞い始める。人間でもエルフの物でもない、丸っぽい独特の文字である。
「これは、エルダーの古代文字だな?」
ガルグは一応、文字を知っていた。
しかしレイはガルグには答えない。儀式に集中しているのだろう。文字は時と共にその数を増し、そして急にレイへと集束する。
これは儀式のクライマックスだ。最後に魔力の風が放たれて、ガルグ達の服や髪を揺らした。だがガルグはピクリとも動かない。それがこの儀式への敬意である。
やがて神殿に光が満ちて、儀式が終了したことを告げる。
するとガルグの目の前に居たのは、猫並みに小型化したレイだった。しかもなんだか可愛くなっている。
「おいこら。ちっちゃくなってんぞ?」
『これは共に歩むための姿。いつでも元の姿に戻れます』
言ってレイは元のサイズに戻る。
『それでは、改めて話しましょう。我が盟友、ガルグ・ブレッドマン』
そしてレイがガルグに対し言った。
2
その頃。海の奥深く。妖しい光に照らされた、蛇の魔獣が動きを止めていた。しかし寝ていると言うワケではない。魔獣は鎧を纏う最中だ。
もちろん魔獣に腕が無い以上、それをするのは蛇魔獣ではない。全身に鱗のある人型の、生き物が鎧を張り付けていた。一応人型ではある物の、爬虫類を思わせる生物だ。それが二匹、金属の板を持ち、器用に魔獣へと張り付けていく。
その姿を魔獣は目で追うが、彼等は気にせずに鎧を着ける。
この二つの種族は明らかに、協力関係にあるようだった。
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