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装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第一章『回帰』

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第一話 シーン5


 大聖樹はエルフの母なる樹。普通のエルフを生み出す聖樹も、森を形成する巨大樹達も、全ては大聖樹の子供である。この木から徐々に森は広がって、やがてエルフのコロニーを作った。

 その前に今ガルグは立っている。ハーフエルフでこの場所に来たのはおそらくガルグが初めてだろう。

 そのガルグはなぜこの場所に来たか──


「で、俺に何をさせる気だ? こんな辺鄙な場所まで連れてきて」


 ガルグはエルリアへと問い糾す。


「お兄様。あれをご覧ください」


 しかしエルリアは答えることなく、大聖樹の根元を指し示した。

 そこに在ったのは巨大な鉄塊。壊された鉄機兵の残骸だ。四肢の内半分が失われ、コクピットにも穴が開いている。


「鉄機兵の残骸、だなアレは。こんなとこまで侵入されたのか?」

「いいえ。あれは運び入れました」


 エルリアによるとその残骸は、わざわざこの場所に置かれたらしい。

 ガルグはその元に歩いて行った。自然と足が向いたと言って良い。


「お兄様。現在このコロニーは、人間の国と戦っています」


 すると背後からエルリアが言った。

 だがガルグは驚くことはない。


「常識だな。レイランド王国だ」

「さすがお兄様。博識ですね」

「闇商から聞いた。噂でな。森を焼いて畑にするんだろ」

「さあ。そこまでは私にも……。ですが人間はこの鉄機兵で、既に聖樹を三本焼きました」

「大損害だな。どうでもいいが」


 ガルグは投げ遣り気味に言い放つ。

 戦争のことを知ってはいたし、その上にガルグはハーフエルフだ。エルフにも人間にも嫌われてどちらにも入れて貰えない。

 しかしそれでも今この場所に居る。ガルグは自分で溜息を吐いた。


「御託は良い。用件を言いやがれ」


 そしてまたエルリアへと問い糾す。今度は少しだけ語気を強めて。

 するとエルリアも観念したのか説明を止めてガルグに言った。


「では残骸と大聖樹の前へ。そこで出来るだけ意識を鎮め、大聖樹に祈ってみてください」

「祈り? 俺が? このデカブツに?」


 ガルグは直ぐさま文句を言った。

 エルフが崇拝する大聖樹に、祈るなど馬鹿のすることだ。とは言えいったい何が起こるのか、興味が無いと言えば嘘になる。

 その場所に行くだけなら良いだろう。ガルグはそう考えゆっくりと、エルリアが示した所に歩いた。

 目の前には残骸と大聖樹。残骸はともかく、大聖樹だ。エルフが崇拝してやまないもの。ガルグが嫌いなエルフがだ。


「できるもんなら叩き折りてえな」


 言ったガルグの脳裏には過去の──嫌な記憶が次々蘇る。エルフに殺されかけたこともある。殺害したこと、恨まれたことも。コロニーを離れ旅をしていても、その刻印は消えることは無い。平穏とは無縁の生活だ。

 そう考えたその時だった。大聖樹が強く輝いたのは。


「!?」


 驚くガルグの眼前で、大聖樹の根が天に伸び上がる。大地を突き破って宙に出て、鉄機兵の残骸を包み込む。まるで球状の根で出来た繭だ。

 それは数秒の間現れて、今度はほぐれて大地に消えた。

 そして──残骸の在った場所には新しい人型が立っていた。

挿絵(By みてみん)


「機兵か? 残骸を利用した……」


 ガルグにはそれが機兵に見えた。

 左腕と右足は鉄機兵。それと胸部や頭部の一部もだ。それ以外は木と何かの甲殻。歪で巨大な人型兵器。

 しかし本当に驚くべきは──その後に起きた出来事だった。

 青い粒子がそれから溢れ出し、集まり輝く光を作る。熱の無い、むしろ冷たい光。それは輝きを増して行き、限界で遂に弾け煌めいた。

 そして、その中から現れた。長い銀髪の少女が一人。


「は。面白くなってきやがった」


 ガルグは出て来たその姿を見て、ようやくニヤリと笑みを得た。


第一話 終 です。

一つの区切りでもあったりしますし、感想評価等、頂けるととても嬉しいです。


追記:弟が描いてくれたので挿絵追加しました。こちらへの感想評価もお待ちしております。

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