三章 第二話 シーン3
「本当に生きていたとはな……」
立体映像化したヘイザーが、ガルグを見て目を丸くして言った。
ここはクーダーの会議室。現在は丁度ティータイムである。
「まあな。この通り絶好調だ。魚は魔獣に食われちまったが」
そんな訳でガルグは紅茶を飲み、カップをカチャリと置いて返事した。
共和国連合の重鎮が、この場所には多くが揃っている。ガルグとヘイザー。アズマとリリエ。なおエルフ勢は欠席だ。それとヘイザー、リリエは映像で、実体はそれぞれの祖国にある。
それと──監視役のマユである。他の全員は顔なじみだけに、彼女だけ明らかに浮いていた。
「それでガルグ王。彼女は誰だ?」
「ガルグ様。私も聞きたいです」
案の定ヘイザーが食いついて、リリエも次いでそれに乗っかった。
なんだかリリエは寂しそうである。なにを勘違いしているのやら。
とは言えガルグもどこまでを、話して良いのか正直悩んだ。人魚の国は今まで他種族と、距離を置くことで平和を得てきた。ガルグが話してしまったら、その安寧を崩すことになる。
「あー。どう説明したもんか……」
「このオーラ。この女人魚だな?」
ガルグが頭を悩ませていると、アズマがズバリと指摘した。
「アズマお前、人魚を知ってんのか?」
「ああ。修行の旅で一度だけ見た」
アズマは腕を組んで返事した。
相変わらず人間離れした、経験値と洞察力である。ともあれバレた以上、嘘をついて誤魔化すのは非常に難しい。
「おいマユ。誤魔化すのはたぶん無理だ」
「じゃあせめて国の場所だけは伏せて。それともし国に何か起こったら、貴方を簀巻きにして沈めるから」
「理不尽すぎだろ。冷酷人魚め」
ガルグはマユとヒソヒソ相談し、あらましを話すことにした。
エルギアが海に落ちた後、ガルグ達の身に何があったのか。人魚の国や白竜レイレリア。それに鎧を纏ったあの魔獣。
一方、ガルグもヘイザー達から帝国等々の話を聞いた。
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その情報交換が済んだ後、ヘイザーがガルグに向かって言った。
「しかし人魚の国に竜とはな。にわかには信じがたい内容だ」
だがなんと言われようと真実だ。脚色はあれど嘘は無い。
「信じられようが信じられまいが、実際俺は約束したからな。俺はまた海に戻らせてもらう」
ガルグは腕を組んで返事した。約束を守り海へと戻ると。
しかしその約束を果たすには、まず地上への対処が必要だ。
「つーわけで帝国の対策だが。ヘイザー。機兵の量産はどうだ?」
今度はガルグがヘイザーに聞いた。
戦略で最も重要なのは、軍事能力の拡充だ。戦うにせよ交渉するにせよ、弱者は強者に食われてしまう。相手が共和国と相反する、帝政の国ならば尚更に。
「正直、あまり芳しくないな」
だがヘイザーは渋い顔をした。
「ガルグ王。君も知っているだろう。鉄機兵をどうやって造るのか」
「まあな。大体が魔法だろ? 組み立ては手動かも知れないが」
「確かに鉄機兵の材料は、殆ど魔法で造られた物だ。だが一部には樹脂やレアメタル、天然の素材が使われている」
「なるほどな。それが足りないわけか」
「話が早くて助かるよ」
ヘイザーが言って溜息をついた。
「樹脂はエルフから提供があるが、レアメタルの入手が問題だ。今のところまだ足りてはいるが、これ以上増産を続けると……」
鉄機兵は今や戦の花だ。無論数だけが全てではないが、足りなければ護りも手薄になる。
だがガルグはそれを聞いて笑った。もちろん声は漏らさずにニヤリと。
「渡りに船ってのはこのことだな」
ガルグには金属の当てがあった。
「海底には資源が山ほどある。そいつを掘って持ってくれば良い」
「ちょっと! 勝手なこと言わないでよ!」
マユには文句が有るようであるが。
「レイに話をしてみる価値は有る。無論、交渉の結果次第だが」
「それでも……なんか納得いかない」
ガルグはマユを黙らせた。
まだ彼女はふくれているようだが、これが戦略という物だ。それにガルグが協力するのなら、見返りはあって然るべきである。
「つーワケで俺は一日休んで、もう一回人魚の国に戻る。連絡手段は考えて置くが、レグスは俺が戻るまでは持つか?」
「はい。ガルグ様。問題ありません。国民に無事が説明できれば、軽々に事は動かないでしょう。仮に反乱が起こっても、私がメルフィリスで潰しますし」
「それは問題無いとは言わないが……。まあ良い。リリエ、お前に任す」
幸いレグスも大丈夫らしい。
しかし既に問題は起きていた。この時はガルグを含めて誰も、そのことに気が付くことは無かった。
第二話終。
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