三章 第一話 シーン3〜4
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一方、ここは港町。クーダーに作られた会議室。二度の戦争を経験しても、残っていた石造りの部屋だ。
その場所に集まった面々は、焦った様子で話し合っていた。実際居るのはアズマとニノだが、リリエとヘイザーも参加している。リリエはレグスにある王城から、ヘイザーはツリーランドから。立体映像魔法で参加だ。
因みにこの会議を仕切るのは、ツリーランド王ヘイザーである。
「では一度、状況をまとめよう」
ヘイザーは他の三人に言った。
「ガルグ王は魔獣と海に消え、通信魔法にも応答は無し。つまり通信圏外に出たか、通信できる状態にないかだ。落ちてからまだ一刻ではあるが、仮に死んでいれば大問題だ」
ガルグはレグスの王であり、共和国連合の重鎮だ。それが死んだとなれば急速に、気味の悪い政治が動き出す。
「すみません。私が着いていながら」
「何度も言うが君のせいではない。ガルグ自ら飛び込んだのだろう?」
「はい。ですが、止めるべきでした」
ニノは握りしめた左拳を、胸元に当ててヘイザーに言った。
だが今は悔いている暇は無い。
「それより私は手がかりが欲しい。ガルグは何か言っていなかったか?」
「隊長は魔獣が身につけていた鎧が気になるようでした。魔獣にその出所を教えろと。エルギアが落ちたのはその後です」
「鎧?」
「金属製の鎧です。魔獣の肌かとも思いましたが、隊長はそれを鎧だと」
ニノがヘイザーに詳細を語る。
にわかに信じがたい状況だが、ニノは仮にもガルグの部下である。
「それならば、問題はないだろう」
その話を聞いてアズマが言った。
「奴はああ見えて慎重だ。勝算も無しに戦いはすまい」
「私もアズマ様に賛成です」
その意見にリリエも同調する。
しかしガルグが生きていたとして、行方不明の事実は変わらない。
「良いでしょう。お二人が言うのなら。ですが対処は必要だ」
ヘイザーは言って地図を見た。
「現在クーダーより東にある、帝国が勢力を増している。その名もギルダトール聖帝国。彼等は新興国家ではあるが瞬く間に国家を拡大した」
「ふ。機兵を用いた結果だな。ゼイガスにも言えるが良い時代だ」
その説明を受け、アズマが返す。
今までこの世界の戦争は、兵力が物を言っていた。もちろん武具なども影響するが、それは限定的な範囲でだ。
だが機兵はその概念を変えた。機兵の性能とその操縦者。そして数が戦争で物を言う。革命が起きたとも言えるだろう。
「そのギルダトール帝国が、共和国連合の脅威になる。我々がゼイガスを倒したのでクーダー周辺はレグス領地だ。まだ帝国と接してはいないが、このままではいずれそうなるでしょう」
「その前に体制を整えると?」
「そうです。機兵の増産に、拠点の防衛力強化。周辺国との交渉もある」
「大変だなヘイザー。頑張れよ?」
「なんでそこで他人事なんですか。騎士団長もやってくださいよ……」
ヘイザーはガックリとして言った。実際、問題山積だ。こんなときにガルグが消えてしまい、ヘイザーとしては悲しみしかない。
「もしもガルグ王が帰って来たら、直ぐこの私に連絡を。小言を言わなくては気が済まない」
ヘイザーは真剣にそう言った。
4
「はっくしゅん!」
ガルグはクシャミした。
ここは海底にある人魚の国。そこにある神殿の目の前だ。神殿は白い石で作られた、優美で巨大な物である。ガルグは人魚のマユに連れられて、ティアと共にこの場所にやってきた。まるでお伽噺の中のように。
「誰かが俺の噂をしているな」
「じゃあ良い噂じゃなさそうね」
「確かに。それは間違いないが」
ガルグはマユに言われ、言い返した。
どうもマユは皮肉屋であるらしい。ガルグとある意味気が合いそうだ。だがそれもガルグがこれから入る、神殿の中で待つモノによるが。
「それより行くぞ。俺も暇じゃない」
「そう? ならこっちよ。着いてきて」
ガルグは先を行くマユに続いて、神殿の中へと入っていった。
神殿は中も壮大で、精緻な装飾で飾られている。柱一本とて手抜かりは無い。その上──窓はステンドグラスで、色とりどりの光で満ちている。
「凄いな」
「いいえ。これからよ」
しかしマユがガルグに対し言った。
ガルグもそれは神殿の中央、大広間に辿り着いて気が付く。
「こいつはさすがの俺も驚いた」
ガルグはその目の前に現れた──竜を見て、さすがに身構えた。
それは作り物などでなく、間違い無く本物のドラゴンだ。白くふさふさの毛を生やし、背中に翼を持つ巨大な竜。それが美しい床の中心に、犬に似た格好で座っている。
『こんにちは。貴方がガルグですね? 私は白竜レイレリア。皆は私をレイと呼んでいます』
そのドラゴンが自己紹介をした。しかしどう見てもあの口で、人の言葉を話せるわけはない。おそらく魔力による会話だろう。声は女なのでおそらく雌だ。
「ご丁寧にどうも。そのレイが、この小さなハーフに何の用だ?」
『急なお招きをお許しください。ですが貴方も知っているのでは?』
ガルグが聞くとレイは返事した。
『世界は変革期に入りました。私や貴方だけではありません。悠久の時を生きる者達も、その変化を感じているはずです』
レイの口調は非情に静かだが、その言葉は強い力を孕む。それに的を射た内容だ。
「その理由をお前は知ってるか?」
『貴方が協力してくださるなら、私も貴方に協力します』
「つまり取引か。面白い」
『いいえ。これは竜の盟約です』
「違いがわからん。興味もないが。まあ良い。取り合えず言ってみろ」
ガルグはレイレリアに対し、言った。
海底に作られた人魚の都市。その中で待ち受ける白き竜。確かに変革は訪れている。ただし良い意味でないことは、ガルグも経験から知っていた。
一話終。
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追記:挿絵追加しました




