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装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第三章『青と赤』

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三章 第一話 シーン1〜2



 海と言えば釣り。釣りである。輝く水面に釣り針を落とし、お魚とのファイトを楽しむのだ。幸いこの日は快晴で、バケーションには持って来いである。

 そう。ガルグは今クーダー港で、ルルと一緒に釣りにふけっていた。たまには生き抜きでもしなければ、国王などやってはいられない。いや元々やりたくはないのだが。とにかくガルグはルルとティア、二人を引き連れ釣りにやってきた。

 なお護衛にはニノが着いているが、近くの機兵で待機中。エルギアも横に立たせているので、一応護りも整ってはいる。

 と、言う訳でとにかく釣りである。


「いやー。今日は大漁だ」


 ガルグが言うとルルが返事した。猫なのでもちろん返事はにゃーだ。

 今日はガルグとしては珍しく、既に魚がたくさん釣れていた。氷を敷き詰めた籠の中には、既に何匹も魚が寝ている。まさに大漁と言うに相応しいガルグとしても素晴らしい釣果だ。

 しかしここでまた、問題が起きた。二度あることは三度ある──人間が作り出した格言だ。


「行くぞ!」


 ガルグは二人を抱えて、エルギアの中に飛び込んだ。そして直ぐさま一歩後退させ、続いてニノに連絡を入れる。


「おいニノ! 何か来る! 後退しろ!」

「隊長は?」

「俺はもう間に合わん!」


 ガルグは通信でニノへと言った。

 その刹那、水飛沫が立ち上がり、機兵らしき物体が現れる。それは海中から上に飛び出し、港の床へと着地した。白と水色の綺麗な機兵だ。後、特徴的な部分と言えば、背中に棒が二本生えている。

挿絵(By みてみん)

 だがこの機兵は本命ではない。その後に続くモノがある。

 機兵が出て来たその直後、それは海の中から現れた。超弩級に巨大な蛇の首。金属で出来た肌を持ち、機兵を呑み込める程に巨大だ。


「そこの機兵! 今すぐ逃げなさい!」


 すると目の前の機兵から、ガルグに対して女が言った。

 また女かと思う暇も無く、その首がエルギアに突撃する。だが言われずともガルグは避けた。エルギアはサイドにステップを踏み、闘牛士のように華麗に躱す。よって首はそのまま突っ込んで、石造りの港を削り取った。


「鉄の魔獣……。いや、これは鎧か?」


 それを見て、ガルグは呟いた。

 魔獣とはルル等と同じように、強大な力を持つ存在だ。だが通常人間の世界には姿を現すことはない。無論例外はあるのだが、この場合原因は明白だ。

 しかしなんにせよガルグには、魔獣を見逃せないワケがある。


「そいつの出所を教えて貰う!」


 ガルグは言うとエルギアを跳ばせて、首を戻した魔獣に飛びついた。

 そしてその喉元に剣を刺し、更に魔法で機体を固定する。


「蛇竜根!」


 エルギアの右手から、蔓が伸びて魔獣に絡みつく。

 だが魔獣はそれにも怯まずに、海の中深くへと逃げ始めた。逃げ去るつもりか、引き込むつもりか。なんにせよその速度は凄まじく、みるみるうちに陸が遠ざかる。

 よってガルグはそれを止めるため、更なる魔法を行使した。


「雷光焼流撃! 痺れやがれ!」


 エルギアの刺した剣から、雷が放たれて魔獣を焼く。痺れろと言ったのはガルグだが、魔獣でなければ丸焦げだろう。

 とは言え魔獣も大したもので、体から水流を吹き出した。それも魔法で作った水流だ。


「海の魔法か! ち。これ以上は……」


 そこで選択を迫られた。

 このまま魔獣に繋がっていれば、エルギアはダメージを受けるだろう。だがその前に勝てる見込みもある。

 一方魔獣を離れれば、機体へのダメージは避けられる。が、魔獣は海に生きるタイプだ。海中で離れれば不利になる。

 しかしエルギアは魔獣を離れた。


「蛇竜根・解除」


 ガルグが言うと、魔法の蔓が切れて引っ込んだ。

 その瞬間エルギアは流されて、回転しながら海を舞う。

 一方魔獣はその隙に、海の彼方へと逃げ去った。傷から真っ赤な血を垂れ流し、体を僅かに傾かせながら。

 痛み分け。と言った所だろう。

 しかしガルグには問題があった。


「さて。どうやって帰るかな」


 敵を取り逃してしまった以上、ガルグも港に戻るべきだろう。だが手段も方角も分からない。


「ティア。どっちがクーダーかわかるか?」


 そこでガルグはティアに聞いてみた。

 だがティアは別の事を返事する。


「ご主人様。機兵が来ています。数は六機」

「味方か?」

「わかりません」

「なら敵だな」


 ガルグは身構えた。ガルグの経験上グレーとは、大抵深海よりも真っ黒だ。

 しかし例外もあるらしい。


「さっきの機兵ね。大丈夫? もうサーペントは居ないけど……」


 ガルグに話しかけた女の声。それは先ほど港に居た奴だ。


「お前らのせいで酷い目にあった」

「言いがかりね。だけど認めるわ。港が壊れたのは事実だし」


 ガルグが言うと女が返事した。

 どうやら機兵は彼女達、謎の勢力に所属する物だ。そしてその勢力はガルグには、危害を加える気は無いらしい。


「お詫びと言ってはなんだけど、あなた方を招待致します」

「何処にだ? 地獄なら遠慮するが」

「『人魚の国』と言ったら、信じる?」


 ガルグが女に皮肉を言うと、彼女はクスリと笑って言った。

 それを聞いてガルグは眉をひそめ、腕を組んで背をシートに預けた。



 エルギアが機兵達に連れられて、辿り着いたのは海の底の街。全くもって信じられないが──恐ろしく巨大な半球状の、ドームが海の底に存在する。その周囲には謎の光源が、フワフワと浮かんでおり美しい。

 そしてそのドームの中に入ると、エルギアは急に地面に落ちた。と、言うのもこのドームの中には普通に空気があるらしい。


「あまり人魚の街っぽくはないな」


 ガルグは周りを見渡して言った。

 確かに海草や珊瑚のような変わった植生は見受けられるが、街は普通に石造りであって、人魚もここでは足がある。

 人魚は海中では下半身が鱗のある尻尾に変わるのだが、空気中では二足歩行なのだ。人魚は珍しい種族であるが、ガルグもそれ位は知っている。


「悪かったわね。ぽくなくて。それより早く機兵を降りなさい。街の人達が怯えてるじゃない」


 そんな考えを巡らしていると、さっきの女がガルグに言った。


「そうは見えないが。降りてやる」


 ガルグは彼女に急かされて、エルギアの操縦席から降りた。すると人魚の機兵の一つから同じく人魚の女が降りる。

 おそらく話をしていた彼女だ。彼女は一見普通の少女で髪の毛はゆるふわのショートヘア。強いて人魚らしさを上げるなら、珊瑚製のアクセサリーだろうか。

 などと考えている暇も無く、ガルグは人魚に囲まれた。てっきり襲われるかと思いきや、ただ興味があるだけのようである。まるで珍獣のお披露目会だ。

 因みに人魚は女だけなので、ガルグの耳を高音が突き刺す。


「マユ様! この御方人間ですか?」

「違うわよ。こいつはハーフエルフ」


 一人の人魚に質問されて、機兵から降りた女が言った。彼女の名前はマユと言うらしい。


「へー。これがハーフエルフなんですか。握手して貰っても良いですか?」


 なんとも、軽すぎるノリである。

 ガルグはさすがに困惑を極め、マユに聞いてみることにした。


「おいこらマユ。なんだこの人だかり」

「この国は閉鎖的な場所だから、外から来た人が珍しいのよ。因みにここでは差別も無いわ。人魚以外は皆同じだし。それに貴方はお客様だしね」


 確かに、招かれた身ではあるが歓待を受けるいわれなどは無い。仮にあったとしても鬱陶しい。

 だがここでラッキーな事が起きた。興味の対象が、変わったのだ。


「わあ! なんですかこの生き物は!」

「猫のルルだ。俺の友達だな」


 ガルグは言って猫のルルを見た。まあ本当のところは魔獣だが。


「この子。さわってもいいですか!?」


 人魚がルルにジワリとにじり寄る。

 しかしルルは露骨に嫌そうだ。魔獣かどうかに関わらず、猫は人見知りする物である。


「どうぞ」


 しかしガルグは裏切った。ルルには悪いが状況を、打開するには打って付けである。ある意味で人魚への生け贄だが。

 人魚達にもみくちゃにされながら耳をぺたんと寝かせ、嫌がるルル。ガルグはその騒動を利用して、マユとティアと一緒に脱出した。


「女はホント猫が好きだよな……」

「それより今のうちに急ぎましょ。レイ様はきっとお待ちかねだから」


 三人は喧噪を逃れつつ、目的地に向かって歩き出す。


「ルル。ウザくても怪我はさせるなよ」


 その途中、ガルグは一応言った。


三章今日から開始です。

感想評価お待ちしております。


追記:挿絵を追加しました。弟作です。挿絵の感想もお待ちしてます。

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