二章 第十一話 シーン1〜2
1
戦争終結から一日後。ガルグは首都レグスへと舞い戻り、ヘイザーと差しで話し合っていた。戦争はたとえ終結しても、人々に深い爪痕を残す。二人は城の会議室の中で、その対応を検討中だった。
「ヘイザー。追加の物資は出せるか?」
「正直これ以上は難しいな。そもそも建国戦争に続き、このゼイガスとの戦争だ。民衆の不満も溜まっているし、森で採れる食料は限られる」
ガルグに聞かれてヘイザーは言った。
「それにあのゼイガスの思想だが、貴族に同調者がでたようでね。所詮は不満のはけ口だろうが、あまり放置しては反乱になる」
「まったく。ゼイガスも余計なことを」
ガルグは頭が痛かった。ゼイガスのような差別の思想は、後が怖いと知っているからだ。一度広まって有名になれば、人集めの口実に使われる。
しかしそれならばなおのこと、戦争の事後処理は重要だ。
「クーダーに置いたアズマがキレるぞ」
ガルグはヘイザーに皮肉を言った。
今クーダーに残った戦力を、纏めているのはあのアズマである。ゼイガスの捕縛。現状の調査。民衆の保護に復興の準備。問題はまさに山積だ。その対応を任せられるのは、アズマを置いて他に居ないだろう。
「う。それを言わないでくれないか? 最近私も胃が痛いんだ」
ヘイザーも立場はガルグと同じ。真面目な王とはこんな物である。常に問題に直面し、色々な場所が痛くなる。
それに加えガルグには大量に、やらねばならないことがある。
「まあとにかくヘイザー。任せたぞ」
と、言う訳でガルグは逃げ去った。
「あ、こら! まてガルグ! 薄情者!」
その背に向かってヘイザーが言った。
2
続いてガルグが訪れたのは、レグス王城の客間であった。調度品が揃ってきた部屋には、既にエルフズが待っていた。即ち、エルリアとその護衛ミア。そして部下のサシャとニノのコンビだ。
ガルグがそこに現れた瞬間、エルリアが凄い勢いで言った。
「結婚してください! お兄様!」
「藪から棒に求婚をするな」
だがガルグは結婚する気は無い。
自由を愛するハーフのガルグが結婚するなど有り得ない。いや、もう結婚してしまったが、アレはあくまでも政略だ。
と、言う訳でガルグは断った。
「あのなあ。人間社会では、普通妹とは結婚しない。それと結婚は一対一だ」
色々それらしい理由をつけて、エルリアを上手く煙に巻く。
しかしそれでエルリアが引き下がる──そんなことが有るワケがない。
「でも王様は別だと聞きました。それにエルフは兄妹と言っても、親が同じワケではないですから。同じ木から生まれたエルフ達が結婚なんてざらにありますよ?」
エルリアはガルグに対して言った。
ガルグとてそんなことは知っている。ただやんわりと断りたいだけだ。だがその望みをニノが打ち砕く。
「確かに。エルフ的に考えれば、皆と結婚しても良いですね」
「ニノまでなにを言いだしてやがんだ?」
「エルフ社会での一般論です」
「どんな一般論だ。危険すぎる」
エルフの世界は摩訶不思議である。まあニノの性格を考えるとおちょくっているだけかも知れないが。
問題はここにサシャも居ることだ。
「じゃあ私も結婚できますね! 隊長! ふつつか者ですが……」
「断る! 俺は自由人なんだ。森で狩りをして暮らすんだ」
ガルグは全員に向かって言った。
まあミアは一人呆れているが。とにかくこの場所に居ては危険だ。
ガルグはエルフ達を置き去りに、再び走って逃げ去った。
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