二章 第九話 シーン3〜4
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ガルグがどれだけ後悔しようと、決して時が戻る事はない。それどころか事態は刻々と、大戦争に向けて進んで行く。
城に作られた会議室の中。ガルグとアズマとリリエとエルリア、そしてヘイザーの実物が居た。
ここに揃ったメンバーの全てが、共和国連合の重鎮だ。アズマ以外はそうは見えないが、戦乱の時代故に仕方ない。若い力が必要なのである。ガルグが若いのは見た目だけだが。
「よし。じゃあ会議を始めるぞ。議題はゼイガスとの決戦だ」
ガルグは彼等に向かって言った。
そして、まずは現状の確認だ。その担当はヘイザー王である。
「ヘイザー。各国との連携は? 戦力はどの程度集まった?」
「協定は無事に纏まった。しかし借りられる機兵は数機だ。元々機兵の製造技術は共和国が一番進んでいる。よって現在使える戦力は、レグスに今居る三十機強だ」
ヘイザーがガルグに聞かれ、答えた。彼によると機兵の戦力は、ほぼ共和国機だけらしい。
そこで次の出番はアズマである。
「ま、背後を突かれないだけマシか。次に敵の本拠地だが、アズマ」
ガルグはアズマに本拠地を聞いた。
するとアズマが広げられた地図の、一点に金属のピンを刺す。
「お前の魔法で計った距離と、方角から本拠地はこの場所だ」
レグスの首都から東南東。そこは湾がある海沿いの、クーダーと言う港町だった。
「湾岸都市クーダー。その領主は、エグラ・クーダーブラッドのはずだ。まあ状況から判断すると、既に殺されたか囚われている」
「戦力は?」
「それは不明だが、近くの都市がいくつか潰された」
「つまり機兵も歩兵も屍か」
「いや。加えて正規の軍もある。レグスを焼いた部隊がいるはずだ」
アズマはその後も次々と、ガルグからの質問へと答えた。
敵の本拠地は分かったものの、敵の戦力は未だに不明。しかしそれでも決戦は不可避だ。
「あー頭が痛いがやるしかない。一撃離脱を繰り返されたら、こっちは打つ手が無いからな。レグスと共和国だけ守れても、それ以外から切り崩されちまう」
ガルグは皆に向かって言った。しかし理由はそれ以外にも有る。
「それにゼイガスの思想がヤバイ。なんやかんや言ってもこの辺りに、一番多い種族は人間だ。共感する奴らが増えてくると内側からやられる危険もある」
つまり早期決着が望ましい。まあ戦争など大体そうだが。
となると次はどう攻略するか。クーダーをどうやって落とすかだ。
「それでガルグ。奴らをどう攻める?」
「簡単だな。機兵を全て出して、真っ正面から奴らを叩く」
ガルグはアズマの問へと答えた。
しかしアズマは不満があるらしい。と、言うより少々呆れている。
「それは策とは言わないはずだが?」
「まあそう言わずに、話を聞けよ」
ガルグは腕組みして語り出した。
「まず地形の面から考えると、クーダーの周辺は真っ平らだ。機兵サイズの巨大な物体が隠れて近づく道は無い。まして海からは論外だ。エルギアや守護機兵ならともかく、鉄機兵は水に浮かないからな」
まず地形的な理由の説明。
「次にチマチマやらない理由だが、やられた機兵が敵に奪われる。もちろん随伴歩兵も無しだ。死んでゾンビ化したら面倒だろ?」
そして機兵のみで突っ込む理由。
「コールの魔法で逃げられるのは機兵二体がおそらく限界だ。手下共を全滅させちまえば、ゼイガスは事実上壊滅する。可能なら魔剣も破壊したいが、勢力を潰す事が肝要だ」
最後にクーダーに攻め入る理由。
「ガルグ王。もしも全滅したら?」
そこでヘイザーがガルグに聞いた。しかしそれは愚問という物だ。
「今やらなくても全滅するな。仮に共和国に引きこもっても、周りが全部取られて詰んじまう」
いつも簡単に勝てれば良いが、現実とは上手く行かない物だ。
選択肢が祈るか戦うか、二択しか選べないときもある。
「まあそれでも負けちまった場合は、ヘイザー。お前が何とかしやがれ」
「まったく。君は、いつもそうなのか?」
「いや。いつもは命を狙われてる。王になったのは初めてだ」
ガルグは聞かれてさらっと言った。
常に迫害されていたガルグは、基本的に一匹狼だ。国どころか人を率いたことも、仲間を持ったことも殆どない。
しかし今回は話が別だ。
「これでも一応ここは保たせたい。また狙われたくないからな」
ガルグは冗談めかして言った。
4
潮風香る港町。湾岸都市クーダー。その街には、大きな傷跡が刻まれていた。ゼイガスがこの街を奪う際に、強大な武力を用いたためだ。
その武力──つまり機兵の群が、今街の外側に並んでいた。
「我が指導者。配備は完了です。いつでも敵軍を迎え撃てます」
その様子を見ていたマドレイに、コールが早歩きで来て行った。
しかしそのコールは自信なさげだ。それは戦力の問題よりも、この配備に対する疑義にある。
「共和国連合は来るでしょうか?」
コールはマドレイに向かって聞いた。
確かに本拠地の場所はバレたが、このクーダーの護りは薄くない。竜の口に飛び込むような真似を、果たして選ぶ王が居るものか。
「我が信用できんか?」
「そのような……」
「ふ。来るさ。奴は、必ず来る」
だがしかしマドレイは断言した。
薄く張った雲の間を縫って、僅かに夕日が落ちるのが見える。もうすぐ日が沈んで夜が来る。そしてその夜が明けた時、殺し合うとマドレイは知っていた。
九話終。
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