二章 第八話 シーン1〜2
1
戦いを終えて疲れた体が、ガルグに睡眠を促してくる。既に日は落ち月が天に昇り、夢の中の民を優しく照らす。
しかし、ガルグは眠ることはせず、城のバルコニーに腰掛けて居た。
「ガルグ様。眠れないのですか?」
するとそこにリリエが現れて、ガルグに優しく問いかけた。
だがその疑問はお互い様だ。
「そう言うお前はどうなんだ?」
「はい。実を言うと、少しだけ」
リリエの方は素直に返事した。
「初の実戦で震えが来たか。これは、先が思いやられるな」
「正直に言えば、その通りです」
リリエはいつでも正直だ。
「ガルグ様は怖くはないのですか?」
そのリリエがガルグに聞いてきた。
だがガルグには愚問と言う物だ。
「もう慣れちまった。末期だな」
ハーフエルフは迫害されてきた。殺し合いなど日常茶飯事だ。
しかしガルグは今星空の元、こうしてリリエと話をしている。そこでガルグは少し気まぐれに、リリエに語ってみることにした。
「どうせ暇なら話を聞いていけ。まあ嫌なら無理にとは言わないが」
「喜んで。お付き合い致します」
するとリリエは横に腰掛けた。
2
話の始まりはドワーフの里。それも四百年も前のことだ。ガルグはそこで仮面を身につけて、ハンマーで鉄を打っていた。仮面を着けると暑さは増すが、オーラを隠すためには仕方ない。ミアの仮面と同じ仕組みである。これは丁度ガルグがイム・フェルムと、偽名を名乗っていた時期だ。
ドワーフは気むずかしい種族だが、腕の良い者には敬意を払う。そんな訳でガルグはこの里に、居候して鍛冶屋をやっていた。里は人間の街からは遠く、身を隠すのには最適だ。それにドワーフは鍛冶師の種族で、設備や道具も揃えられている。
そんなワケで鍛冶屋のイム・フェルムに、その日変わった物が持ち込まれた。
「おいイム。人間が来てやがるぞ!」
身長の低い男が言った。彼もまたドワーフの一人である。
ドワーフは低身長の種族で、若い者は少年にも見える。しかし彼はおっさん顔であり、少年だと言うには無理があるが。
「人間が? またなんかの依頼か?」
取り合えず、ガルグは返事した。
するとドワーフが言葉を返す。
「そうみたいだが変な話でな。直接お前に見て欲しいんだと」
「わかったよ。これを打ち終えたら行く!」
そこでガルグは仕方なく言った。
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それから少し時が経った後。ガルグは金槌を担いだままで、外に出て人間を出迎えた。金槌はいざという時に、魔法を使うための触媒だ。
だがガルグの懸念は外れていた。
「これは! 高名なイム・フェルム様!」
ガルグを見た人間は喜んだ。
彼は鎧を着た男の騎士だ。その表情に嘘は見られない。
だがガルグは人間嫌いだった。だからこそ直ぐに話を進める。
「世辞は良い。それより用件は?」
「はい。これを見て欲しいのですが……」
ガルグが言うと騎士は懐から、小さな袋を取り出した。そしてその袋を逆さにすると、光り輝く欠片が現れる。
「これは……魔獣の核に似ているが」
ガルグはその欠片を見て言った。
魔獣は色々と種類が居るが、その一部に核を持つ者がある。しかしこれはその核とは微妙に、魔力の性質が異なっている。
「この欠片は巨人の核なのです」
「巨人?」
ガルグは騎士へと聞いた。巨人は神話等に登場する、伝説的な生命体である。とは言ってもどんな生き物なのか、実際に誰も見た者は居ない。
「実は治水工事の最中に、その骨が地中から出たのです」
だが騎士は硬い表情で、ガルグに向かって真実を告げた。
「で、これが巨人の核ってワケか。確かに危険な香りがするな」
「実は我が王の命令で、私はこれを持ってきたのです。この巨人の割れた核を使って、イム様に武器を造って欲しいと」
そして更に騎士が続けて言った。
「イム様もご存じと思いますが、我が国ラグゼは今苦境にある。竜に襲われているのです。奴らは人や家畜を奪い去り、むさぼり食う危険な存在だ」
ラグゼは里に近い王国で、ガルグもその事件は知っていた。
「なるほど。竜殺しを生み出せと」
つまりはそう言うことだろう。実際に騎士は頭を下げた。
「お願い致します。イム・フェルム様。竜を倒し殺した暁には、どんな報酬も払う所存です」
そして騎士はガルグに確約した。
しかしガルグはどんな報酬より、素材その物に興味があった。誰も見たこともない素材を得て、天下無双の武器を造り出す。なんとも浪漫に溢れた話だ。
「良いだろう。ただし条件がある。この核以外の素材もよこせ。それと巨人の骨も持って来い」
ガルグは──騎士に対して言った。それが後世に残る因縁に、繋がるとは露とも思わずに。
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全くないので寂しいす……。




