二章 第七話 シーン1〜2
1
崖沿いに現れた機兵の群。黒いオーラを纏う鉄機兵。ガルグはその姿を捉えると、直ぐに友軍に指示を出す。
「全機遠距離攻撃を開始。接近される前に数を減らせ」
ガルグは言うと直ぐに通信を、レグスの街のニノにつなぎ替えた。魔法で操作する方式なので特に何かをしたわけではないが。
「ニノ。聞こえるか?」
「はい。なんでしょう?」
「今から街の住民全員を騎士団の連中で調査しろ。オーラの闇属性が強い奴。それも極端に強い住民を、全員捕獲するか殺傷しろ」
そしてガルグはニノに指示を出した。到底まともとは思えぬ指示を。
「正気ですか?」
「ああ。正気も正気だ」
しかしガルグにもワケがある。
「敵に屍使いが居るらしい。反撃にくれぐれも気をつけろよ」
「了解。仲間にも伝えます」
ニノもその指示を理解したらしく、声色を変えて返事した。
しかし会話をしている間にも、敵機は続々と近づいてくる。魔法を使った反撃は無いが、共和国軍に走り寄る。前衛の機兵が破壊されても、その残骸の上を踏み越えて。
このまま敵の接近を許せば武器を使った格闘戦になる。そうなれば数が物を言い、共和国軍は不利になる。
「やはり屍か。アズマ。前に出る」
「応。その言葉、待ちかねていたわ」
そこでガルグとアズマは前に出た。エルギアとドラーゼンが地を蹴って、近づいてくる敵を斬り倒す。敵は残り十五機ほどであるが、援護があれば倒せる数である。
その激しく戦う様子を見て、リリエがぽつりと呟いた。
「これが戦場。これが殺し合い」
彼女のメルフィリスは指示通り、友軍の後方で待機中だ。
そしてエルギアが切り込んだので、今二機の距離は少し開いている。それが敵の真の狙いであった。
「夜を支配する底知れぬ闇よ、我が敵に祝福を与えたまへ」
切り立った崖のその上で、隠れた機兵が魔法を使う。詠唱付きの強力な魔法だ。
当然ガルグも直ぐそれに気付く。
「ち! 間に合え!」
敵とガルグの魔法。その二つが同時に放たれる。
「ダーク・スフィア!」
「飛・光障壁!」
敵の魔法は黒い球体で、メルフィリスに真っ直ぐと飛翔する。
一方、ガルグの魔法は障壁。ただし移動する障壁だ。それはメルフィリスの前で止まって、敵の攻撃を防ぐ盾となる。
「光障壁!」
そして、その直後、リリエも魔法障壁を使った。これで障壁は二重となった。
だが敵の魔法も大したもので、障壁に当たっても弾けない。魔法の火花を散らしつつ、ガルグの放った障壁を砕く。
とは言え力は削り取っていた。リリエの魔法の障壁に当たり、敵の闇の魔法が砕け散る。
「訓練しといてホントに良かった。しかしアリス。お前ぼーっとするな!」
「ふぁーい。お父様ごめんなさーい!」
ガルグが怒ると、アリスが謝る。
しかし怒られて当然だ。ガルグの魔法が間に合わなければ、リリエは最悪死んでいた。
「ふふ。作戦は失敗か」
一方、そんなやり取りを知らずか、敵がガルグ達へと声をかけた。
「誰だお前?」
「これは失礼した。我はゼイガスの指導者マドレイ。これは闇機兵シュリーゼルである」
敵は岩陰から出て来て言った。
次いでその横にコールの乗り込む、鉄機兵バーデルグも現れる。仇を見たリリエが憤るが、今はマドレイの方が重要だ。頭を潰せば戦争は終わる。
しかしガルグはマドレイへと聞いた。
「お前、本当にマドレイか?」
「どう言う意味だ? ガルグ・ブレッドマン」
「良いから答えろ」
「その通り。我がマドレイだ。問題があるか?」
マドレイがガルグへと答えるが、どうにもガルグは信用出来ない。
とは言え話をしている間に雑魚はアズマ達が全て倒した。
「じゃ、マドレイ。後はお前らだけだ」
「そうだな。ではここは退くとしよう」
だが向こうには例の魔法がある。コールのバーデルグが撤退に、使用した火の属性の魔法だ。
「では失礼して。指導者マドレイ」
後ろを向いたシュリーゼルの背から、コールのバーデルグが抱きしめる。またあの魔法でいずこかへ、シュリーゼルごと逃げるつもりだろう。
「何度も同じ手を! 蛇竜根!」
ガルグはエルギアの左腕から、根を伸ばしバーデルグに巻き付ける。しかし魔法の炎は強力だ。
「悪いねガルグ君。サヨウナラ」
コールが魔法を発動し、シュリーゼルとバーデルグは飛んだ。その炎で根は途中で焼かれ、切れてエルギアの元へと戻る。一部はまだ巻き付いているものの、これでは引き留めるのは不可能だ。
そしてガルグは彼等が消えた後、アズマに向かってぽつりと聞いた。
「どう思うアズマ?」
「なにがだガルグよ」
「いや良い。それなら、たぶんダイジョブだ」
会話が成立していない。だがガルグは勝手に納得した。
そして戦闘は終了し、後には残骸だけが残された。
2
強烈な衝撃波を生みながら、高速で帰還したマドレイ達。コールの魔法の効力が切れて、バーデルグが手荒く着地する。速度が一気に百からゼロへ。その衝撃が体を軋ませる。
しかしマドレイはそんなことよりも、ある事に気付きコールに言った。
「やられたなコール」
「は? なにがでしょう」
コールは気が付いていないようだが、ガルグの罠に二人は嵌められた。
「バーデルグに絡んだツタを見ろ」
「これは……魔力が放たれている?」
「本拠地を知るためのビーコンだ。奴め本当にやりおるわ」
マドレイはニヤリと笑って言った。
「コール。お前の移動魔法に、使用する魔力は膨大だ。それ故、一度の戦闘で一度。だからこそ撤退に用いている」
「それに気付いてこの罠を張ったと?」
「そうだ。奴も器用な真似をする。さすがはイム・フェルムと言うところか」
マドレイは本当に楽しそうだ。しかし、コールは青ざめていた。
「申し訳ありません我が指導者! 私ともあろう者が、失態を!」
そしてコールが慌てて謝罪した。
「構わん。この場所がバレたところで、来るなら迎え撃つだけの話だ」
マドレイは言うと闇機兵──シュリーゼルを街へと歩かせた。
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