二章 第四話 シーン3〜4
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夜の城は思うよりも不気味だ。まだ調度品は少ないものの、レグス王城もそれは変わらない。
広い廊下と木で作られた像。それらがガルグの魔法に照らされ、怪しげに踊る影を造り出す。ガルグの左手に浮かぶ炎が今は唯一の照明だ。
リリエはそう言うのが苦手らしい。
「ガルグ様。あの、一体どこへ!?」
リリエがガルグの間近で言った。彼女はガルグの腕に抱きついて、絶対に離すまいと身を寄せる。
一方ガルグは元暗殺者。闇はガルグのホームグラウンドだ。
「だから様は、まあ良いそれよりもだ。腕を放せ。なんにも居ねえから」
「無理です!」
「お前、お姫様だよな? いったい今までどうしてたんだ?」
「前のお城は明るかったですし! たくさんメイドも居たんですっ!」
余裕のガルグにリリエが返した。
リリエは思ったより箱入りだ。フォローするガルグも大変である。
だが幸いにもガルグとリリエは、ようやく目的地に辿り着いた。
「ここだ。おいお姫様。目を開けろ」
ガルグは止まってリリエに言った。
「ここは? あの、なにもありませんが」
だがリリエが言うとおり何も無い。一見するとただの地下室で、レンガ造りの古ぼけた部屋だ。
しかしガルグは秘密を知っていた。ガルグは特になにも無い床に、右手をかざして魔法を放つ。
「見てろ。ガルグ流・仕掛け崩し」
するとにわかに床が動き出し、下へと続く階段が出て来た。
「この部屋は地下にあるからな。敵の攻撃を凌いだらしい。で、この先に隠し部屋があって、お宝ざっくざくって寸法だ。ま、ハズレってこともあり得るが」
ガルグはリリエに説明をした。
つまりガルグはお宝を求めて、こっそりここに来たと言う訳だ。
「あの、私も行かなきゃダメですか?」
「いいや。この場所に残っても良い」
「やっぱり行きます! 行かせてください!」
ガルグは聞いて怪しく微笑んだ。これは一人で寝なかった罰だ。元々ガルグは彼女が寝てから、一人で調べに来るつもりだった。
とは言え彼女も一応姫だ。仕掛けがあったら役に立つだろう。
そんな訳でガルグはリリエを連れ、階段をゆっくりと降りていった。
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そして暫くぐるぐると降りると、扉を抜けて広い部屋に出た。天井も高くここならば、機兵も普通に動けそうである。
だがしかしそこに宝は無かった。その部屋はがらんどう。家具も無い。
あるのはガルグ達が来たドアと、その先の壁に設置されたドア。それと部屋を取り巻く照明だ。壁に設置された魔法のランプ
「お?」
そのランプに光が灯った。
おかげで部屋は一気に照らされて、まるで真昼のように明るくなる。
そして同時にドアが閉められた。ガルグ達が入ってきたドアだ。
「なるほどな。仕掛け部屋ってワケか」
ガルグはその様子を見て言った。
狩人で暗殺者のガルグだが、盗賊をやっていたこともある。そのガルグの経験からすると、この部屋は仕掛け部屋だった。
だがガルグは直ぐ考えを変える。
「と思ったが、どうやら罠らしい」
ガルグは言うと、リリエを抱きしめた。
「え? ガルグ様?」
「下からだ。備えろ」
ガルグは既に、敵に気付いていた。
それは床を突き破って現れ、巨大な人型の物体になる。土の色の岩で出来た人型。その体は機兵より小さいが、それでもガルグの三倍は近い。
「ロックゴーレムか。珍しいものを」
ガルグはその巨人を見て言った。
ロックゴーレムはその名の通り、岩で出来た人型のゴーレムだ。大抵それは目的に合わせて魔法使いによって造られる。この場合なにが目的なのか、考えるまでもないだろう。
事実、ゴーレムは巨体を弾ませガルグ達の方へと向かってきた。
「ガルグ様!?」
「黙ってろ。舌噛むぞ」
それに対しガルグは立ち向かう。
リリエを抱えたまま跳躍し、ゴーレムの頭を踏んで後ろへ。
一方ゴーレムは急に止まれず壁に突っ込んで大穴を開ける。
ガルグはその隙を逃さなかった。
「圧水連弾! 砕け散れ!」
ガルグの放った水の弾。それが次々とゴーレムに当たり、弾けて、その巨体を砕いていく。
そしてガルグが着地した瞬間、ロックゴーレムは崩れて消えた。
しかしトラップと言う物は、次々襲いかかってくる物だ。
「お? 今度は天井か。芸がある」
ガルグは天井を見上げていった。
するとその直後天井が、轟音を立てて動き出す。もちろん下へ。潰すためである。
「ガルグ様早く逃げないと……!」
最早、リリエは涙目だ。
しかしガルグには慣れっこだった。
「まあ落ち着け。焦ったら負けだ」
ガルグは言って魔法を使用した。
「土を食らい大地を支え止めよ、木柱生成かける四」
しゃがんで地面に手を着いて、詠唱の後に魔法を放つ。
すると地面から大量の木が、伸びてきて天井を支え止める。ただの木ではなく魔法の大樹だ。そう簡単には壊れない。
「これで当分は持つ。ほら行くぞ」
ガルグは言うと扉をスルーして、横の壁を破壊しながら言った。
4
いくつもの罠をくぐり抜け、仕掛けを何個か解除して、ガルグ達は通路を歩いていた。しかしリリエはもう限界なのか、足を止めてガルグに言ってくる。
「あの……ガルグ様少しだけ。少しだけで良いので休憩を……」
「却下だ。眠る時間がなくなる」
しかし、ガルグはリリエに返した。
とは言えリリエを置いても行けぬ。そこでガルグはリリエに近寄って、彼女の体を抱き上げた。
「あ……あの! ガルグ様!?」
「黙ってろ。このまま置いてくぞ?」
ガルグは恥ずかしがるリリエを持ち、暗い通路を先に進んでいく。
すると際だったデザインの、扉が二人の前に現れた。
「見ろ。ゴールだ」
ガルグは言いながら、リリエを下ろし扉に歩み寄る。
紺色の板に黄金の装飾。山を象った紋章が彫られ、その下に文章が書かれている。
「これは……」
「ドワーフ語だ。読んでみるか」
ガルグは言って文字を読み出した。
「あー。これをもし読む者があれば、今すぐここから引き返せ。この先には宝も希望も無い。あるのは恐怖と絶望だけだ。最後にこの文章が永遠に、読まれないことを山へと祈る」
これが全文の直訳だ。だが引き返せと言われても、引き返す者など居るワケがない。
「ふん!」
ガルグは扉を蹴破った。
「あの、ガルグ様!?」
「ほら行くぞ」
そしてガルグは扉を踏みつけて、その先へとゆっくり進んで行く。
すると──
「こいつは驚いた」
ガルグもさすがに驚いた。
その広い部屋にあったのは、鎖で封印された結晶だ。部屋の方々から伸びる鎖が結晶を宙へと吊り上げている。
しかし本当の問題は、その結晶に閉じ込められていた。
「あれは?」
「俺が造った聖剣だ」
ガルグはその剣を見上げて言った。
結晶の中に封じ込められた、細く美しい諸刃の剣。
「こんな所に埋められてるとはな。僥倖と言うか。出来すぎと言うか」
その美しさと裏腹に、ガルグには企みが感じられた。
第四話終。
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