二章 第三話 シーン1〜2
1
戦いから一夜が明けたレグス。その街は既に鎮火され、炭化した家々を晒していた。エルフの機兵を中心に、夜通しで消火を行ったのだ。そのため今はテントを設営し多くのエルフが休憩している。
だがそのテントの傍らで、リリエラは街をただ眺めていた。彼女も眠ってはいないはずだが、そんな気分にもなれないのだろう。と、言うより心が止まっている。父親は死に、祖国は燃え尽きた。彼女には非情すぎる現実だ。
ガルグはそんな彼女を無視できず、やぶ蛇覚悟で近づいた。
「おい。お姫様。生きてるか?」
そしてリリエラに向かって聞いた。
だが彼女は反応を返さない。もっと強い刺激が必要だ。
「仕方ない。悪く思うなよ」
ガルグはそこで──デコピンをした。
するとようやく彼女は反応し、額に両手を宛がった。
「あ……ガルグ様。なんでしょう?」
そしてガルグへと返事を返す。が、その瞳はまだ死んだままだ。リリエラを再起動させるには、もう一押し必要なのだろう。
さて、ここからが問題である。優しい言葉をかけたとしても、リリエラの心には届かない。と、言うか心は止まったままだ。
よって体を動かすことにした。
「これからヘイザー達との会議だ。悪いがお前も付き合って貰う」
ガルグは彼女の腕をとり、強めの力で引っ張った。
ガルグも少しは休みたかったがもうこうなったら仕方ない。
「あの……一人で歩けます」
文句を言ったリリエラを無視して、ガルグは彼女を連れ去った。
2
そんなワケで会議用のテントへ。そこには既にアズマが待っていた。それにガルグとリリエラを加えて、テントに居るのは三人だ。
しかしまだ会議の参加者は居た。机の上に人形が二つ。
「よし、それじゃあ会議を始めるぞ。ヘイザー。エルリア。返事しろ」
ガルグは人形に向かって言った。
すると人形がカタカタと動き、ガルグに向かって返事を返す。
「ガルグだな。こちらは問題無い」男性の人形がヘイザーで。
「お兄様! ご無事でなによりです」女性の人形はエルリアだった。
これは通話用魔具であり、スピーカーとマイクを兼ねている。多少見た目に問題があってもハイテクは焼けたので仕方ない。
「じゃあまずアズマ。現状報告だ」
ガルグはアズマに対して言った。
するとアズマはさすがに軍人か。紙も読まずにすらすらと答える。
「良いだろう。まず被害状況だが、首都レグスはほぼ全焼だ。特に鉄機兵の製造所など軍事施設は全て破壊された。我らに気付いて破壊を選んだ。若いが頭の切れる指揮官だ」
アズマは素直にコールを褒めた。
それだけでもリリエラには辛い。が、ここからは更に辛くなる。
「次に、レグスの残存兵力。機兵は一機残らず全滅だ。騎士団の一部は脱出したが、その約三割が殺害されている。特に王族を連れた者達がピンポイントで狙われたようだな。これも賞賛に値する」
アズマが淡々と報告をした。
リリエラの方はそれを聞き、既に涙を瞳に溜めて居る。だがしかしこれが現実だ。逃れたくても逃れようがない。
しかも戦争はまだ続いている。
「さてガルグよ。我らはどう動く?」
「普通に考えれば撤退だ」
アズマに聞かれてガルグは言った。
「守る都市が丸焼けじゃ意味が無い。それに相手は魔剣持ちだしな」
前半は戦術的な話だ。だが後半は専門的である。
「あのーお兄様。よろしいでしょうか? その魔剣と言うのはなんでしょう?」
実際ガルグはエルリアに聞かれ、魔剣について話すことになった。
「魔剣は宝具に分類されるが、人類にとって危険な武器だ。かつて聖剣と共に生み出され、その数は合わせて十本になる」
「私も噂で聞いたことがある。伝説の刀工に生み出され、人の心を魅了するものだと」
アズマがその説明を補足した。
だがそのアズマがガルグに聞いた。
「しかしガルグ。貴様詳しいな? 持っているような物言いだ」
本当にさすが。アズマは鋭い。
「はあ。仕方ない。他では喋るなよ?」
ガルグは全てを諦めて、魔剣との因縁を語り出した。
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