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装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第二章『剣』

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二章 第一話 シーン3〜5



 旧レイランド王国王城はエルギアの木によって破壊された。そのため新たな王城は、現在取り急ぎ建築中だ。

 よって国王のヘイザーも、城が出来るまで仮住まい。アズマ・ロロドールの屋敷の中で執務や休息を行っていた。日の沈みかけた現在もそうだ。

 そこにガルグは颯爽と現れ、会議室の扉を蹴って開ける。もちろん車椅子の上に乗せた、リリエ嬢を一緒に連れた上で。

 すると本当に好都合。会議室の中にはヘイザーと、ついでに騎士団長アズマも居た。二人共机の地図を眺めて、なにやら話をしていたようだ。


「よ。お二人さん。元気にしてたか?」


 ガルグはその二人に話しかけた。

 するとそれぞれに反応を返す。アズマ、ヘイザーの順番で。


「ガルグか。この通り万全だ」

「それよりドアは蹴らないでほしいな」


 実際、元気もなにもないだろう。ヘイザーが王の座に就いてから、まだ一週間と言ったところだ。それにガルグは意見を求められ、たまに二人とは会っている。

 しかしガルグが入れたリリエを見て、二人は同時に驚いた。


「リリエラ姫!? 何故ガルグと共に!? レグス王国は無事なのですか!?」


 ヘイザーはリリエをリリエラと呼び、矢継ぎ早に質問を繰り出した。

 そう。リリエは彼女の愛称で、正式な名前はリリエラである。それに隣国レグス王国の、国王の一人娘──姫である。

 それは、ガルグも知っていた。


「やっぱりな。見た顔だと思った」


 ガルグはリリエラにしれっと言った。やはり狡猾で嘘つきである。


「申し訳ありませんガルグ様。送って頂いた上に嘘まで……」


 だがリリエラは律儀に謝った。

 しかし今はそんな場合では無い。


「それよりレグスはどうなってるのか、さっさと俺らに説明してくれ」

「ふ。確かに、私も聞きたいな」


 ガルグが言うとアズマが同意した。

 隣国が戦時中であることは、ヘイザー達も当然知っていた。だからこそ会議室に居て、地図と睨めっこしていたのだろう。

 それを聞くとリリエラは鞄から、一通の、封書を取り出した。


「これを。お父様がしたためた、ヘイザー王への書簡です」


 彼女はこの封書を届けるため、国を離れてここに来たのだろう。


「確かに。では直ぐに読ませて貰う」


 ヘイザーはそれを受け取ると、開いてその先から読み始めた。



 ガルグ達が話している頃。レグス王国の首都の外。紫色の機兵の足下で、紅茶を嗜む青年が一人。彼は草原に張られた陣地で、椅子に腰を掛けてくつろいでいた。

 パーマのかかった長髪の、兵士としても若く見える男。だが彼はコール・マークマン──部隊を預かる司令官だ。

 その彼の下に大きな声の、兵士が早歩きで現れる。


「司令官! コール司令官!」

「騒がしい。少し落ち着きたまえ」


 コールは髪をかき上げて言った。

 しかし兵士は未だに大声だ。どうやらそれが彼の性らしい。


「定時報告を、申し上げます! 作戦はつつがなく進行中!」

「ふむ当然だね。私の指揮だよ」


 コールは自信家らしく自惚れる。

 だが報告は終わっていなかった。


「ただ兵達が多少、焦れています。本当に攻めずともよろしいので?」


 兵士がコールに対して聞いた。


「現在我らの鉄機兵は十。対してレグスの鉄機兵は五。兵の練度でも技術レベルでも、敗北する要素はありませんが……」

「確かに、今攻めても勝てるだろう。しかしそれは後でも同じこと」


 するとコールは言って立ち上がる。


「問題はタイミングとやり方だ。私はその機を見ているのだよ」


 そしてコールは西の空を見て、星々の瞬きの下で言った。



 一方戻って会議室。ヘイザーが封書の中身を読んで、それを一行に話して聞かせた。


「以上がレグスの現状だ」

「要約すると首都は包囲され、機兵の数でも負けてると」


 それをガルグは解りやすく言った。

 だがそれだけでは不十分だろう。


「ふん。問題は敵の勢力だ。奴らは何処から湧いて出た?」


 アズマが話を補強した。

 敵勢力の正体が分かれば、対処の仕方も自然と見える。兵力。本拠地。思想。弱点。全てがその場所に紐付いている。


「それならたぶん俺が知ってるな」


 ガルグはその問いに対して言った。


「リリエラ。敵の紋章は確か、炎を纏った狼だったな?」

「はい。随分と凝った物でした」


 そしてリリエラに聞き、確信する。


「そりゃゼイガスだ」

「ゼイガス? 国か?」

「いや、国じゃない。今は知らないが」


 ヘイザーに問われ、ガルグは答えた。


「ゼイガスは思想集団だ。人天魔上主義を掲げてる、色んな意味でヤバイ奴らだな」


 ガルグは更に説明を続ける。


「その主義ってのは簡単に言うと『人間は天が作りし子供』。つまり全種族を支配する者。で、その中でも魔法の才で──上下を決めるって考え方だ。前者が人天。後者が魔上。合わせて人天魔上主義ってな」


 つまりはまず人間至上主義だ。ガルグ達にとっては悪夢である。


「機兵をそんなに出してくる以上、おそらく何処か国を乗っ取ったな」


 ガルグは腕を組んで考えた。そんな国が隣国を潰したら、ツリーランドはえらいことになる。

 すると同意見だったのか、それを聞いたヘイザー王が言った。


「それが事実なら我々としても、援軍を出さざるを得ないだろう」


 いかにも、苦々しい顔をして。

 ツリーランドは戦争を終えて、やっと平和を手に入れたばかりだ。そこにまた戦争が始まれば、国民は疲れ民意は離れる。


「こんな時のための共和国だな。エルリアに食料を確保させる。エルフは食べなくても死なねーし」


 ガルグはその意を汲み取った。


「すまん。機兵も出して貰えるか?」

「数は限られるが、俺も出る」


 そして特に不満も出ないまま、話はトントン拍子に進む。


「あの、ありがとうございます!」


 その様子を見てリリエラが言った。

 だがこれは全てこの国のため。感謝される謂われは全く無い。


「ふ。楽しい時代になったものだ」


 そして最後にアズマが締めた。


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