第十話 シーン3〜4
3
そして首都に攻め入ったガルグ達。六機の機兵は列をなし、大通りを前へと進んでいく。目指すは小高い場所に在る、白く美しいレイランド城だ。
その機兵を見た人間が、蜘蛛の子を散らす様に逃げていく。丁度昼前と言うこともあり、街は賑わっている時間帯だ。
だがしかし──抗う者も居る。
城壁側から鉄機兵が出て、ガルグ達を後ろから追ってきた。どうやら建物の中に寝かして、メンテナンスでもしていたらしい。緊急事態と察したか、建物を破壊して立ち上がった。
周囲を観察していたティアが、直ぐに気付きガルグに報告する。
「ご主人様」
「知ってる。サシャ、ニノ、カク。ここは任せる。やばかったら言えよ?」
ガルグは言われるまでもなく、三人に向かって指示を飛ばした。
「「了解!」」
「ふん。誰に言っている」
すると──サシャ機ニノ機ダンダの三機が、足を止め、敵へと振り返る。
===============
一方ガルグ達は振り返らず、王城に向けて進軍していた。
しかし──
「親衛隊のお出ましか」
その視界に機兵が現れた。
広場に佇む鉄機兵。その数合わせて全部で四機。形は普段見る鉄機兵だが、装備が通常のものとは違う。変わった形状の盾を装備し、そこにはエンブレムが掘られている。
「止まれ! 不遜なエルフ共! ここから先は王の領域ぞ!」
その操縦者から声が届いた。
だがガルグ達に止まる気などない。
「阿呆の台詞だな。エルリアと、ミア──」
ガルグは二人に指示をした。
「中央の二機は俺が引き付ける。お前らは端の二体を潰せ」
「はいです! お兄様!」
「従ってやる!」
すると二人からのオーケーサイン。
ならばガルグはエルギアの速度を、上げ、同時に魔法を詠唱をする。
「荒れ狂う風。地を砕く雷。巡りて貫く槍となれ!」
力を増しながら迫るエルギア。その存在を無視などはできない。
親衛隊機は炎や稲妻や、鉄の魔法をエルギアへと放つ。
だがそれはガルグの思惑通り。
「ふん!」
ガルグのエルギアは跳躍し、高く大空に舞い上がる。その巨体が宙を舞うそれだけで、敵の目はエルギアに釘付けだ。
が、まだエルギアには魔法がある。敵を飛び越して僅かに背後へ。その瞬間をガルグは逃さない。
「飛翔・天神槍!」
エルギアが、輝く魔法の槍を地に放つ。その数は二本。中央の、鉄機兵二機に向かい飛んで行く。
その内一本は敵を貫き、地面まで抉り、大穴を空けた。
しかしもう一体は手練れらしい。
なんと瞬時に盾を引き上げて、その槍をギリギリで受け止めた。だがこの魔法は消えたりはしない。敵を貫くためにガリガリと、盾の上で火花を散らしている。
「オフセット・パージ!」
だが敵も、魔法を使い槍を破壊した。
これは盾を爆発させるもので、それによって魔法を防ぐらしい。
「やるな。だが……」
ガルグはエルギアを、着地させ敵に向かって言った。
「残念ながらお仲間は終わりだ」
エルギアが跳んだ瞬間に、全ての敵機が引き付けられた。
二人が敵機を倒すには、それだけの隙で十分だ。
「風花閃!」
まずはミアがそれをした。
彼女のアリアールは槍を構え、魔法の力で敵へと突撃。胸を確実に貫いた。
「行きますよ! 超・風花衝弾!」
一方、エルリアの方は酷い。
圧縮された風の魔法弾が、敵にぶつかり、弾けて吹き飛ばす。その威力は驚くべきもので、敵機はばらけながら宙を舞う。
そして、暫くして落下した。
「おいエルリア。被害は押さえろよ」
「すいません。私、加減が苦手で……」
ガルグに怒られて照れるエルリア。さすがは姫──と、言ったところか。見た目にそぐわぬ戦闘力だ。
さて、これで残る敵機は一機。可哀相だがこれが現実だ。
「つーわけで悪いな。親衛隊。出来るだけ足掻かずに、やられてくれ」
ガルグは敵機に向かって言った。
4
ガルグ達三人と親衛隊。彼等が戦闘していたその頃。残してきたサシャ達三人は、大変なことになっていた。
目の前には鉄機兵の残骸。調整中の機兵だけではなく、防衛部隊も少し居たらしい。三機だけで戦ったにしては、敵五機は十分な戦果だろう。
しかしその分三人の側も、かなりの被害を受けている。
「はあはあ……。ニノさん。カクさん。二人共、大丈夫……ですよね?」
サシャがニノとカクに向かって聞いた。
「なんとか生きてるけど、機体もう機体は」
「面目ない。獣人の生き恥だ」
すると二人はサシャに返事した。
二人の機体は既に中破して、地面に立てる状態にすらない。魔力も尽きかけへろへろで、もう戦う力は無いだろう。
サシャ機も辛うじて被害は無いが、魔力は相当落ちている。
しかし幸い敵は尽きたのか、周囲は驚く程静かだった。
そう──三人は考えていた。
しかし次の瞬間小屋が壊れ、もう一機の機兵が現れる。
「まだいたんですか!?」
サシャは驚くが、その機兵には足が足りなかった。
おそらく製造中の物だろう。しかし足が無く手だけでも、魔法を放つ事くらいは出来る。
サシャは慌ててニノとカクを庇い、機兵をその前へと歩かせた。
そして魔法が飛んでくる瞬間──
「水障壁!」
障壁を張った。
だがサシャの魔力は既に限界。反撃する余裕は全くない。サシャの障壁に容赦無く、火炎放射の魔法が吹きつける。
幸い相手も作りかけなので、それ以外なにも出来ないらしい。しかしサシャが力尽きてしまえば、三人まとめてサヨウナラだろう。
「サシャ! 早く、そこをどきなさい!」
そこでニノはサシャに向かって言った。
確かにサシャが攻撃を躱せば、サシャ機はおそらく無事で済む。ただしその場合ニノ機とダンダは、炎に晒され大破するだろう。
合理性のある判断か。サシャを思っての、ことなのだろうか。それはニノにも全然わからない。
「うぬぬぬぬ。大丈夫、です!」
だが何にせよサシャは逃げなかった。
そこでニノは次の手段に移る。
「獣人! 機兵はここで乗り捨てる!」
「やむを得ん。友を救うためならば」
ニノが言うと、カクもそれに応えた。
二人の考えは一致している。機兵を捨てればおそらくは、人間の兵士に殺られるだろう。だがこのままでは全員が死ぬ。それだけは避けるべきなのだ。
しかし──そこで思わぬ声がした。
「おーい。ヤバイならさっさと言えよ」
それはガルグの声だった。
===============
親衛隊機と親衛隊兵。その全てを打ち倒した後で、ようやくガルグも気が付いた。サシャ達の置かれている状況に。
「ニノ、カク。そのままそこで待機。サシャはもう少しだけ耐えてくれ」
そこで直ぐ三人に指示をした。
「はい! 隊長、頑張ります!」
サシャがそれに応え、返事を返す。
だが他の二人は不満のようだ。
「隊長。それはいかがなものかと」
「そうだハーフ。役割を思い出せ!」
ニノとカクが立て続けに言った。
しかしガルグにはお笑いぐさだ。
「は。お前ら、俺を舐めるなよ? 切り札の切り時くらいはわかる」
そう言うと、ガルグはエルギアの──操縦席のハッチを開けた。
それだけでも頭がおかしいが、ガルグは更なる行動に移る。
「よーし、ルル。奴らを頼んだぞ」
ガルグは猫のルルを抱えると──
「どりゃあ!」
操縦席から投げた。
同時にルルもガルグの腕を蹴り、斜め方向に飛んでいく。
「お兄様!?」
エルリアが驚くが、次の瞬間にはもっと驚く。
ルルは空中で巨大化し、瞬く間にその姿を変えた。そして影に見えるほどの速度で、サシャ達の元に駆けつける。
そのサイズは機兵に匹敵し、その魔力は機兵を上回る。
「ええ!? ルルちゃん魔物なんですか!?」
と、エルリアが驚いて言った。
しかしそれは失礼な発言だ。
「魔獣だ魔獣。魔物じゃなくて。それ言うとあいつ滅茶苦茶怒るぞ?」
ガルグはエルリアに向かって言った。
魔物と魔獣は似ているが──根本的に別の存在だ。魔物は徒党を組み、人を憎み、魔族に従い国すら作る。
それに比べ魔獣は秘境の地で、その多くが孤高の道を歩む。生物的な成り立ちだけ見ても、全く関係のない存在だ。
そんなことを言っている間にも、ルルは瞬く間に敵に接近。半分だけの機兵を踏みつけて、闇魔力のビームを浴びせかけた。
その力強さに為す術も無く、鉄機兵は無惨に砕け散る
そしてルルは巨大な声で吠えた。
「わあ。ルルちゃんすごいですぅ……」
それを見たサシャは安心したのか、操縦席で気絶した。
第一話シーン5に挿絵追加。
あわせて感想評価お待ちしてます。




