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装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第一章『回帰』

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第十話 シーン1〜2



 ガルグ達が城壁に辿り着き、今まさに攻め入るというその頃。エルフの森の奥深く。そこではホーリーエルフのラナが、エルフ兵達の指揮を執っていた。

 いつでも動けるよう屋外で、陣を張り情報をやり取りする。


「ラナ様!」


 そこに一人のエルフが、早歩きで報告を持ってきた。鎧を着たエルフの男性だ。


「どうしたね? なにか……あったのかい?」


 しかしラナはあくまで冷静だ。年の功とでも言うべきか。


「は! 人間がこちらの罠を、徐々にですが解除し始めました!」

「そうかい。上手く行きすぎてるね」


 ラナは兵士の報告を聞いて、軋む椅子に背をゆるりともたれた。


「は? それは良いことなのですか?」

「敵がこちらの手に乗りすぎなのさ。時間稼ぎと気付かないのかね?」


 そしてラナは兵士に返答した。

 すると兵士の顔色が変わる。みるみると青くなっていく。


「まさか姫様達が襲われて!?」

「いいや。それはおそらくないだろう。もしそうなら今頃喜んで、こちらに情報をながしているさ。今のお前みたいにするためにね」


 だがラナは言って微笑んだ。


「みんな今はやるべきことをおやり。あの子達を信じようじゃないか」


 そして、ガラにも無いことを言った。



 一方──またそれと同じ頃。人間側の指揮官ヘイザーはドラークの中で、微笑んでいた。

 副官からの報告を受け取り、ようやく全てを理解したからだ。


「報告します! ヘイザー指揮官!」


 その副官は大慌てで言った。


「首都が……首都が攻撃されました!」


 彼が驚愕するのも無理は無い。

 しかし、ヘイザーは今笑っていた。

 アズマが首都に残ったのは何故か。本当の敵は誰なのか。そう考えれば簡単だ。答は自ずと見えてくる。


「我々は攻撃を続行する。兵力の損耗を避けながら」


 そしてヘイザーは指示をした。

 だが副官は受け入れる気が無い。


「馬鹿な! 今すぐ撤退を! でなければせめて、犠牲を出しても……!」


 ヘイザーの指示に反論し──


「くどい。作戦に変更は無い」

「ならば! 全軍聞け! 現在……!」


 勝手に情報を明かそうとした。これは立派な反逆罪である。


「ふん!」


 よってヘイザーのドラークは、副官の居る小屋を切り払う。鉄機兵の大剣で薙がれれば、鉄製の小屋ですら一撃だ。


「悪いが団長の邪魔は許さん」


 そしてヘイザーは兵士に向けて、代わりに自分の言葉を告げる。


「聞け! 誉れ有る戦士達! 臆病者は私が処断した! 逃げたい者は逃げても構わんが、死よりも重い罰を覚悟せよ!」


 全く心に無いことだ。ヘイザーは自嘲気味に苦笑した。

 これがエルフの引き留め作戦が成功している一因だった。もっとも今から引き返しても、首都に辿り着く頃には遅い。

 どちらが勝利を手にするにしても、決着は既に着いていた。


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