第九話 シーン3〜4
3
その頃、首都レイランドの近く──一層険しい山の上。首都から見えないよう慎重に、機兵がローブを纏い這っていた。ローブは魔力の放射を押さえ、敵から気付かれにくくしてくれる。エルフの森からこの地まで、夜通し隠れて辿り着いたのだ。
その機兵達は全部で六機。
先頭は、ガルグの駆るエルギア。それに続くサシャとニノのククロア。獣人カクの骨機兵ダンダ。最後にエルリアとミアが操る、新型守護機兵がそれに続く。
エルリアの方は盾と杖を持つ、美しい機兵フレーリア。
ミアの方はランスを携えた、その姉妹機の機兵アリアール。
もっとも今はローブで覆われて、全く区別などは付かないが。
そんな中先頭のエルギアを、停止させてガルグは指示を出した。
「ここまでだな。全機停止しろ」
すると着いてきていた機兵達も、一斉にその動きを停止する。
「これ以上は奴らに気付かれる。奇襲を仕掛けるならここからだ」
そしてガルグは説明を始めた。首都を襲うその作戦を。
「全機合図でローブを取り外し、まず山の斜面を一気に降りる。サシャ以外は好きに降りても良いが、サシャ機は俺の後ろについてこい」
「了解です隊長! 頑張ります!」
「転けても起こす暇が無いからな」
「だ、大丈夫です。たぶん、ですけど」
ガルグに名指しされて、サシャは言った。
しかしサシャが仮に転ばなくても、他に問題が一つある。
「あのーお兄様よろしいでしょうか?」
エルリアがおずおずと問うてきた。
「ここからだとまだ首都に遠すぎて、辿り着く前にバレちゃいますけど……」
彼女の指摘は的確だ。現在居る山から首都までは、まだ一キロに近い距離がある。山を下りる時間も含めると、辿り着くには一分必要だ。
しかしそれはガルグもわかっていた。
「そうだな。だから無警戒なんだ。おかげでここまで近づけただろ?」
ガルグは言って説明を続けた。
「山から下りたら俺とカクを盾にして、城壁に走って近づく。これは障壁を破壊するためだ。相手は敵がエルフだと思って障壁を張ってくるからな。破壊するには属性を考え、俺とカクが一番の適任だ」
「ふん。後れを取るなよハーフエルフ」
すると今度はカクが答えてくる。誰も黙って聞く気が無いらしい。
「お前もな。じゃあ続けるぞ」
ガルグは躱し更に説明する。
「敵魔法の迎撃はエルリアと、ミア。可能な範囲で構わない」
「はい! お兄様!」
「了解だ」
ガルグが言うと二人は返事した。
これで大体説明は終わった。
「城壁の中に入ったら後は、臨機応変に対処する。キングを倒せば終了だ。全員覚悟は出来てるな?」
ガルグが言うと皆それぞれに、気合いの入った言葉で答えた。
「にゃ〜」
その中にルルもいた。
ルルは猫でガルグのフレンドだ。よってエルギアのコクピットに居る。
「お兄様。今ルルちゃんの声が……」
「そりゃするだろ。連れてきたからな」
ガルグは困惑するエルリアに、言うとエルギアを──立ち上がらせた。
「さあ。パーティーの始まりだ」
そしてガルグは全員に告げた。
4
所は変わって、城壁の上。巡回途中の兵士が二人。雑談の花を開かせながら、呑気にだらだらと、歩いていた。
「あーあ。俺も行きたかったなあ」
「まだ言ってんのか情けない」
若い兵士と中年の兵士。
「正直言うと俺はホッとしたぜ。あんなデカいのと戦えるかよ」
中年の方が投げやりに言った。
「情けないのはどっちだっつーの」
それに若輩の兵士が答える。見解の差は経験の違いか。それとも単に二人の性格か。
まあそんなことはどうでも良いが。どっちにしろ直ぐに知ることになる。
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山の上に立つ機兵が六機。敵はそれにまだ気付いていない。
「全機、ローブを捨てて駆け下りろ! これより王国に奇襲をかける!」
ガルグはそれを確かめて指示した。
すると一斉にローブを脱ぎ捨て、六機の機兵が動き出す。ガルグのエルギアも、無論同じだ。山肌を蹴って空中へ。そして次の山肌へと落ちる。それを次々と繰り返し。一気に高度を下げていく。
「きゃあああ!」
後ろから悲鳴もするが、それを確かめる暇は無い。
六機の機兵は次々と、平たい草原へと降り立った。ここからは多少起伏もあるが、機兵なら城壁までは走れる。
もたもたしている暇は無い。
「よし行くぞ。てめえらついてこい!」
「私も前に出るぞ! 後に続け!」
エルギアとカクのダンダが駆け出し、その後に残り四機が続く。
するとその直後、首都レイランドの前に魔法の壁が現れた。それを破壊するためのこの布陣。障壁は巨大かつ長大だが、全てを破壊する必要は無い。
「は。障壁を張って来やがった。おいカク。わかってんだろな?」
「当然だ! 貴様こそしくじるな!」
ガルグが聞くとカクが返事をした。
そして二人の機兵は障壁に、走り込みながら魔法を放つ。
「くらえ」
「行くぞ!」
「「双炎拳!」」
エルギアの鉄の左腕。ダンダの骨で出来た右の拳。それらが同時に炎を纏い、巨大障壁に突き刺さる。
すると割れるような音と同時に、障壁が壊れ穴が開く。
「突入する。全機遅れるな」
そしてガルグが喋るのが早いか、六機の機兵は穴へと入った。
後は首都へと突入するだけだ。エルギアとダンダを前衛にして、城壁まで一直線に走る。
飛んでくる敵兵からの魔法は──
「「風花衝撃波!」」
撃ち落とす。
エルリアの機兵フレーリア。ミアの操る機兵アリアール。二機が放った風と花の波動。それが掻き消して敵を薙ぎ払う。
そして遂に六機は城壁へ。
「吹き飛びやがれ」
エルギアの蹴りで石積みのそれは、瓦解した。
その壊れた城壁の横の上。二人の兵士が逃げるのが見えた。
「全機。いよいよ大詰めだ。民間人は出来るだけ殺るなよ?」
ガルグは二人を見ながら言った。
第九話終。
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