表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第一章『回帰』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/194

第九話 シーン1〜2



 夕陽で赤くなった野営地に、多くの人間が集まっていた。皆、鎧を纏った兵隊だ。会話したりカードを楽しんだり、思い思いの時を過ごしている。

 その端でヘイザーは腕を組み、副官の男と会話していた。ヘイザーの方は指揮官らしく、金属の鎧をその身に纏う。

 そのヘイザーが副官へと聞いた。


「兵士の集結具合はどうか?」

「は。八割と言ったところです」


 すると副官は直ぐ返事をした。

 しかし質問はまだ続く。


「野営地ごとの差は?」

「ありますが。最低でも七割は越えました」

「鉄機兵は?」

「全機、配備済みです。メンテナンスも終了しています」


 副官は全てはきはき答えた。内容も特段問題は無い。


「では宴の準備を。士気を上げる。ただし、警戒は怠るな」


 ヘイザーは副官に向けて言った。


「は! ヘイザー様! 了解しました!」


 当然、副官はそれに応えて、敬礼をしてその場を後にする。

 そしてヘイザーは一人になると、溜息を一つ大きく吐いた。こんな大きな戦の指揮官を、任されるのは生まれて初めてだ。緊張するのも無理は無い。

 しかしヘイザーはそれよりも、一つ気になっていることがあった。


 ===============


 それはアズマがヘイザーに対して、指揮を執るよう伝えに来たときだ。

 用件をつらつらと言った後に、アズマは最後にこう言った。


「ヘイザー。お前はお前で考え、思うように成すべきことをしろ。それが兵達を預かる者の、最低限持つべき心得だ」


 それだけ言うとアズマは背を向けて「ではな」とその場を立ち去った。


 ===============


 しかしヘイザーはアズマの言葉に、違和感があるように感じていた。あの団長なら当然のことを、後付けしたりはしないはず──


「団長が私に託した物を、この戦いで必ず見つけ出す」


 ヘイザーは思いを込めて告げると、夕焼け空を一人睨み付けた。



 翌日。昼になるより少し前。

 鉄機兵と兵士達は既に、その全てが配置についていた。歩兵は鉄機兵を中心に、少しだけ離れて左右に並ぶ。上から見ると点と四角形が、規則正しく並んでいるようだ。

 その彼等は今ヘイザーの、鶴の一声を待っている。

 ヘイザーもまた野営地ではあるが、譲り受けた鉄機兵の中だ。そこから全軍へと指示を出し、また副官からの連絡を聞く。


「頃合いだ。全軍、攻撃開始! エルフの森を焼き払え!」


 そのヘイザーが遂に命令した。

 すると鐘がガンガン打ち鳴らされ、同時に兵士達が声をあげる。そして炎の魔法が群れを成し、エルフの森へと降り注ぐ。

 しかし──火の手は上がらなかった。エルフの森に生える木々の一部。そこから魔法障壁が現れ、炎の魔法を防ぎきったのだ。撃ち方止めの声が響くまで、その状況は変化しなかった。


「ヘイザー様! 効果ありません!」

「慌てるな。エルフも対策はする。木が燃えぬなら、斬れば良いだけだ」


 もっともヘイザーは慌てていない。むしろ冷静に考えている。


「では部隊を突撃させますか?」

「ああ。ただし第二、第九部隊。その二つだけまず突撃させよ。残りは敵襲に備えて待機」


 ヘイザーは新たに命を下した。部隊は第一から十まであり、それぞれ鉄機兵が二体ずつ。エルフの森を取り囲むように、一から順に配置されている。

 つまり第二と第九の部隊は、端からそれぞれ二番目にあたる。


「は! 第二、第九部隊の者! 敵地に乗り込み木々をなぎ倒せ!」


 その命令によって兵士達が、叫び声を上げて突っ込んで行く。

 無論、配備された鉄機兵もだ。ズガン、ズガン、と足音響かせ、エルフの森へと一気に攻め入る。

 だがしかしこれも想定内だ。エルフの側にも。そしてヘイザーも。

 罠は当然のように発動し、歩兵達を次々吹き飛ばす。

 だが予想外の出来事もあった。


「歩兵部隊! 俺達が先に行く!」


 鉄機兵の操縦者が叫んだ。

 罠は対人間用の魔法で、小さい威力の物が大半だ。ならば鉄機兵によって踏みつけ、あるいは魔法で薙ぎ払えば良い──と、考えたがそれは甘かった。


「く! 木から棘が! 避け切れん!」


 操縦者の言葉の通り木々から、棘が次々と突き出した。それは巨大でその上に鋭く、鉄機兵に集中して伸びる。鉄機兵も避け、剣で防ぐが、全てを凌ぎきれるわけもない。

 実際、それは鉄機兵の腕の付け根をグサリと貫いた。


「第九部隊、二番機小破! 両部隊、損耗率増加中!」


 副官がヘイザーに向けて告げる。


「エルフ側の被害は?」

「木が数本! それと木の罠は発動すれば、二度は使えない模様です!」


 今のところまだ互いに様子見。被害は大した事も無い。副官からの報告もそれを、非常に正確に裏付けている。

 ここで押し込むか。それとも退くか。それが一番の問題だ。


「一度部隊を元の位置に下げ、兵達に息を整えさせよ」


 ヘイザーは即座に指示を下した。


「よろしいので?」

「ああ勿論だ。それと負傷兵、破損した鉄機兵は後退だ。急がせよ」

「了解! 第二、第九部隊……一度初期の位置へと後退せよ!」


 ヘイザーの指示を元に副官が、兵士達に向かって指示を出す。

 その騒がしさを聞きながら、ヘイザーは静かに考えて居た。

 おかしい。いくら持久戦とは言え、あまりに反撃や追撃がない。普通なら遠距離からの魔法や、伏兵からの奇襲があるはずだ。


「エルフ兵や木機兵の姿は?」


 そこでヘイザーは副官に聞いた。


「いえ……。報告はありません。奇襲の可能性も高いかと」


 すると副官は自分の意見も、含めヘイザーに報告を上げる。

 その報告を聞いたヘイザーは、確信に近い物を得た。

 この戦には何か裏がある。


「兵達は暫しその場で待機。休息と回復を図らせろ」

「は。ですが、少々危険では?」

「問題無い。警戒していればな」


 ヘイザーは脳をフル回転させ、副官に指示を追加した。


感想設定変更しました。ログインしなくても書けるはずです。

感想レビュー評価お待ちしてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ