第八話 シーン3〜4
3
人間の王の邪悪な企み。その対策を立てるためガルグは、家にエルリアとミアを呼びつけた。それと部下のサシャとニノも一緒だ。更に元からティアと飼い猫の、ルルが居るので賑やかにも見える。
彼等の中央には机がありその上に、地図が広げられている。地図はこの周辺を描いたもので──北西方向にはエルフの森。南東にはレイランド王国が、多少雑な絵で乗っている。
それを見ながら既にメンバーは、あれこれと意見を言い合っていた。
「あーよし。全員揃ったな。各員言いたいこともあるだろう。が、話が終わるまで待ちやがれ」
その賑やかなるメンバーに、ガルグは強めの口調で言った。
「現在レイランドの騎士団は、このコロニーを攻める準備中だ。この攻撃は洒落にならん規模で、鉄機兵だけでも二十投入。歩兵の数は想像もつかん」
ガルグはレイランドの決断を、王が決めたその日には知っていた。その理由は大きく二つある。
「旅商人がこれのネタ元だ。が、状況から真実味がある。既に王国の鉄機兵達が、野営地に向けて移動を開始。まだそんなに数は増えていないが、数日の内には出揃うだろう。そうなったらいよいよ戦争だ」
ガルグは続けてメンバーに言った。
情報源と現在の状況。そのどちらからも確度は高いと。
しかしガルグはこんなときのために、既に作戦を考えていた。ガルグはその説明を開始する。
「そこでこっちもアクションを起こす。とりあえずまずは守りを固め……」
「ちょっと待てハーフ」
だがその途中、仮面の剣士ミアがそれを止めた。
「なんだミア?」
「姫の判断が先だ。それが筋というものだろう」
ミアの言い分ももっともだ。だが多くの場合、エルリアは──
「ミア。お兄様に、任せましょう」
ガルグに理解がある。驚く程。
それはそれでどうかと思うのだが、今はそれが非常にありがたい。
「それじゃあ話を続けるぞ。守りを固めておいて、その上で、王国の中枢を破壊する。メンバーはここに居る連中と、間に合えば追加もあるかもしれん」
ガルグは恐ろしい策を伝えた。
となれば当然、噛みついてくる。
「正気かハーフ? 大将自らが、動くなど愚行にも程がある」
案の定、ミアが反論してきた。
しかしガルグの策にはワケがある。
「この森を離れて戦えるのは、エルフの中では俺達だけだ。その上、今後増える予定も無い」
ガルグは皆に対して言った。
「しかも不味いことにウッドエルフは、聖樹から──生まれてくるわけだ。攻撃によって聖樹が焼ければ、その分生まれてくる数も減る。まあブラッドを増やす手もあるが、人道性には欠けるしな。つまり守りに回れば回るほど、こっちは徐々に不利になって行く」
すると部屋の空気が重くなった。どうやら反論は、無いらしい。
「じゃあ納得して貰った所で、これからすべきことを説明する」
ガルグは言って、説明を始めた。
4
結晶化した木々が立ち並ぶ、ここは聖域と呼ばれる場所だ。その中央にそびえる大聖樹──ガルグはその幹に、手で触れていた。ミアも少しだけ離れた場所で、ガルグと同じように触れている。
二人共やっていることは同じ。大聖樹から魔法をかけている。
エルフの森の木々はその全てが大聖樹にとって子供も同じ。そのため、大聖樹から森の木々全てに魔法がかけられる。ただしホーリーエルフ限定の、非常に疲れる作業であるが。
そんな訳で、仲の悪い二人がそろって魔法をかけていた。もっともミアによればミアの方は、ガルグを悪くは思っていないが。
「どうだミア? 魔法の進捗は?」
そこで──ガルグは聞いてみた。
「こちらはまだ二割終えたところだ」
するとミアは素直に返事した。
「そっちは?」
その上でそう返す。
「割合は俺も同じだな。本数で言えば五倍程度だが」
「ふん。相変わらず嫌味な男だ」
ミアはその返答を聞いて言った。
だがこれがガルグだ。だからこそ、戦争するには向いている。
「やつらも、上手くやってると良いが」
ガルグはそしてぽつりと呟いた。
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これは全てガルグの策である。
ガルグの家に集合した者に──ガルグは指示を一つずつ伝えた。
「まずエルリア。非戦闘員を、森の北西部へと避難させろ」
「はい。頑張りますねお兄様」
エルリア。彼女は住民の避難。
「俺とミアは大聖樹へと向かい、森の木々に魔法を設置する。対鉄機兵、対歩兵トラップ、及びタレットとして利用する」
「良いだろう。ハーフ。賢明だ」
ガルグとミア。特殊な罠の設置。
「サシャとニノは他の兵士と共に、出来るだけ罠を張ってくれ。地面に、人だけ引っかかるヤツ」
「「了解」」
サシャとニノ。対人地雷。
「最後に、ティアはここで待機しろ。それとルルのご飯も頼む」
「うけたまわりました。ご主人様」
ティアと、ついでに猫のルルは待機。
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そんなわけでガルグは大聖樹に、必死で魔法をかけている。エルフの森は非常に広大だ。当然、ぱぱっと終わるワケもない。
二人がそんなことをしていると──突然地面がぐらりと揺れた。それは一定のリズムで刻まれ、徐々に強く大きくなって行く。
「おいハーフ。この震動は……」
「心配するな。たぶん敵じゃない」
ガルグは、焦りだしたミアに言った。
しかし現れたその姿をみて、ミアは臨戦態勢に入る。
「なんだ!? あの骨のような機兵は! エルフの守護機兵ではないはずだ!」
現れたのはミアの言うとおり、白い骨で出来た機兵であった。その装甲には色とりどりの、巨大なビーズが埋め込まれている。
「ああ。アレは獣人用の機兵だ。間に合わないかと思ったが……」
一方、ガルグは落ち着いていた。
だがミアの驚きは更に続く。なにせ機兵の手の平の上に、死んだはずのエルフが居たからだ。
可愛らしい少女のようなエルフ──その名はラナ。エルフの長老で、ガルグの母親を殺した仇。
「遅くなって悪かったねガルグ。機兵の製造に手こずったのさ」
そのラナはガルグに向かって言った。死んでるどころかぴんぴんしている。。
「ラナ様!? ガルグが殺したのでは……」
「偽装したんだよ。見りゃわかるだろう」
ガルグは、鈍いミアへと言った。
「北東の山に住む獣人は、エルフには基本──友好的だ。とは言え援護を頼むには、知名度のあるメッセンジャーが要る。警戒心が強いんだよ奴ら。まあそれ自体は良いことなんだが」
つまり獣人に援軍を、頼むためラナを利用した。無論スパイが居ることも考え、ラナ以外のエルフを全て騙し。
そんなことを説明していると、機兵の、胸のハッチが開いた。
そして翼の生えた獣人が、フワリとガルグの前に降りてくる。
「私は獣人の、カク・カカクだ。貴様が例のハーフエルフだな。話に聞くより少々ひょろいが」
その獣人はカクと言うらしい。
「そう言うお前は猛禽系か。頭まで筋肉じゃないと良いが」
ガルグは即座に皮肉を返した。
カクは筋骨隆々の男で、背には茶色の羽が生えている。それはまるで飾り物のようだが、正真正銘体の一部だ。齢はおそらく二十代。若いが精悍な顔つきである。
「まあ良い。とにかく手駒は揃った。これでようやく五分に戦える」
ガルグはそのカクから離れると、再び魔法の作業に戻った。
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